漢詩詞創作講座初心者14 文化交流漢詩詞結社葛飾吟社 TopPage
次韻
次韻は最も典型的な詩人の交流の作法です。その例を見ることにしましょう。
日月回旋六十春, 日月 回旋 六十の春,
瀟洒平仄百千吟。 瀟洒なり平仄 百千の吟。
古律旧格擾青絲, 古律 旧格 青絲を擾し,
新韻又恋白髪人。 新韻又恋う 白髪の人。
これは中国の新韻を主唱する重陽の七絶です。謹厳な古律・旧格は黒髪を乱すばかりです。「新韻又恋白髪人」は新韻を主唱することをいっているのですが、いい年をして又新しい女を恋するような魅力に富んだ合句です。これに中山逍雀が次韻しています。
論詩捻句是青春, 詩を論じ句を捻るは 是れ青春,
白髪紅妝幾千吟。 白髪 紅妝 幾千吟。
新韻新詩適時勢, 新韻 新詩 時勢に適い,
扶桑禹域両騒人。 扶桑と禹域 両騒人。
詩論を戦わすのは青春の頃、白髪の今はどんどん詠めばいい。扶桑は日本、禹域は中国のこと。一方重陽の方も、第3講で紹介した中山逍雀の排律『緑陰試筆』に次韻しています。
晨風巻簾外, 晨風 簾外に巻き,
紅雨化香塵。 紅雨 香塵と化す。
閉門謝客久, 門を閉し 客を謝して久しく,
著書鍵声頻。 書を著すに 鍵声 頻りなり。
時光奪分秒, 時光 分秒を奪い,
創業仍須勤。 創業 須く勤に仍う。
笨鳥先飛早, 笨鳥 先に飛ぶは早く,
無意苦争春。 無意 苦みて春を争う。
巧演黄粱夢, 巧みに演ず 黄粱の夢,
世事日日新。 世事 日日新たなり。
「書を著すに鍵声頻り」というのは、パソコンで本を書いているのを表しています。つぎに小畑旭翠が高槻に住む楠野自安の『西安安定門』に次韻した例を挙げてみます。
原玉は「城壁高環城闕開,正西直向玉関隈。盛時応見絲綢路,汗馬紫駝天半来。」です。
紅柳帯沙紅未開, 紅柳沙を帯びて紅未だ開かず,
白楊迎客緑州隈。 白楊客を迎う 緑州の隈。
望東吟破陽關曲,
東を望んで吟は破る 陽關の曲,
亦話西陲入夢来。
亦話す西陲 夢に入りて来る。
注:次韻には、作者に対して次韻するものと、作品に対して次韻するものの二種類あります。