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次韻

 次韻は最も典型的な詩人の交流の作法です。その例を見ることにしましょう。

  日月回旋六十春,  日月 回旋 六十の春,
  瀟洒平仄百千吟。   瀟洒なり平仄 百千の吟。
  古律旧格擾青絲,   古律 旧格 青絲を擾し,
  新韻又恋白髪人。   新韻又恋う 白髪の人。

これは中国の新韻を主唱する重陽の七絶です。謹厳な古律・旧格は黒髪を乱すばかりです。「新韻又恋白髪人」は新韻を主唱することをいっているのですが、いい年をして又新しい女を恋するような魅力に富んだ合句です。これに中山逍雀が次韻しています。

  論詩捻句是青春,  詩を論じ句を捻るは 是れ青春,
  白髪紅妝幾千吟。    白髪 紅妝 幾千吟。
  新韻新詩適時勢,    新韻 新詩 時勢に適い,
  扶桑禹域両騒人。    扶桑と禹域 両騒人。

  詩論を戦わすのは青春の頃、白髪の今はどんどん詠めばいい。扶桑は日本、禹域は中国のこと。一方重陽の方も、第3講で紹介した中山逍雀の排律『緑陰試筆』に次韻しています。

  晨風巻簾外, 晨風 簾外に巻き,
    紅雨化香塵。 紅雨 香塵と化す。
  閉門謝客久, 門を閉し 客を謝して久しく,
    著書鍵声頻。 書を著すに 鍵声 頻りなり。
  時光奪分秒, 時光 分秒を奪い,
    創業仍須勤。 創業 須く勤に仍う。
  笨鳥先飛早, 笨鳥 先に飛ぶは早く,
    無意苦争春。 無意 苦みて春を争う。
  巧演黄粱夢, 巧みに演ず 黄粱の夢,
    世事日日新。 世事 日日新たなり。

   「書を著すに鍵声頻り」というのは、パソコンで本を書いているのを表しています。つぎに小畑旭翠が高槻に住む楠野自安の『西安安定門』に次韻した例を挙げてみます。

原玉は「城壁高環城闕開,正西直向玉関隈。盛時応見絲綢路,汗馬紫駝天半来。」です。

  紅柳帯沙紅未開,  紅柳沙を帯びて紅未だ開かず,
  白楊迎客緑州隈。     白楊客を迎う 緑州の隈。
  望東吟破陽關曲,     東を望んで吟は破る 陽關の曲,
  亦話西陲入夢来。     亦話す西陲 夢に入りて来る。

注:次韻には、作者に対して次韻するものと、作品に対して次韻するものの二種類あります。