漢詩詞同人誌16年4-6　文化交流漢詩詞結社葛飾吟社

四月号

詩

　　　　　春偶成　　　　　東京　田村星舟
　　　閑余心酔早梅花，可賞風情雪或霞。
　　　何処関関聴近遠，遊人緩歩樹横斜。

　　　　　行水郷“柳川”
　　　半天渺渺飛孤鳥，一水溶溶映機場。
　　　那弄筆哉舟上興，棹郎屈膝過橋梁。

　　　　　思“伊拉克”支援
　　　二更電視映廃墟，黎氓平穏是何如。
　　　支援不偏悪乎在，白髪唯希水繞渠。

　　　　　吟詠　　　　　　埼玉　芋川冬扇
　　　三伏炎雲去，求詩撫一弦。
　　　江村人不見，頃刻静聞蝉。

　　　　　頌寿
　　　鶴髪高堂上，花顔盛徳隆。
　　　佳人千金子，夢暖歳時豊。

　　　　　新年書懐
　　　万事平安信，春風百慮忘。
　　　三元吾欲老，瑞気五雲長。

　　　　　夏日閑詠
　　　終日涼風足，南軒燕子飛。
　　　生来遊士意，酌酒不知餞。

　　　　　消夏雑詩
　　　日午微風起，如秋雀満田。
　　　奇雲吹急雨，忘暑枕書眠。

　　　　　吟詠
　　　修修春風動，深情午酔詩。
　　　狂吟人若問，寂寂笑吾痴。

　　　　　余寒星天即事 東京　斎　游子
　　　漢漢寒天絶寸埃，爛然星斗賦無才。
　　　訝看一點流蛍火，暗裏飛機疑似催。

　　　　　寄奇術結社之新年会
　　　操将奇術技縦横，主客互頻揚喝声。
　　　忽悟善人公演處，緊張溢出可憐生。

　　　　　二月偶成
　　　東都方二月，感慨落吟辺。
　　　鴬語未聞信，梅花已競妍。
　　　三寒侵北?，四暖到南檐。
　　　依旧天時運，愴神人世遷。
　　　密懐亡友意，遙想墓門烟。
　　　曳杖里祠下，鳴銅投賽銭。

註：鳴銅是揺鳴郷社祠前之銅鈴，把垂紐揺也。

   聞島倉千代子六十六歳之歌唱有感
克耐波瀾日夜勤，含羞声調甚堪聞。
莫忘處世老来計，傾倒精魂止五分。

　　　　　早春即興
二月春光放眼明，微風暖気惹詩情。
赤拳操柁東郊路，○著俚歌輪転軽。

註：操柁是把自行車之柁也。亨是鼻子発出声音也。
註：春立つや素手にハンドル鼻に歌。
○BG2663 heng1 口亨

　　　　　啓蟄偶成二首
　　　　　一
　　　雨沾庭院望冥濛，乾土欲膏宜蟄虫。
　　　坐愛新晴夕陽裏，不図幼蝶舞微風。

　　　　　二
　　　筋凍骨鳴心不寛，痩身無頼怯衣寒。
　　　孰言啓蟄春猶浅，虫臂屈奇虫語酸。

　　　　　寄春期国会
　　　実実虚虚改革疎，議員宰相竟何如。
　　　甲論乙駁春風陣，知是虫蛇蠢動初。

　　　　　春飆偶成
　　　天飆咆哮捲春塵，眩著雙瞳使悩神。
　　　恰似西安煙景巷，雲雲湧出往来人。

　　　　　再訪新加坡有感　轆轤体五首一組  　千葉　小畑旭翠
　　　蕉風椰雨緑波新，連歳有余千萬民。
　　　生意興隆邦未老，貧困撲減跡已陳。
　　　一天雲彩涼波動，百里道途花色�堰B
　　　共喜文明無国界，南溟世態自成春。

　　　添得高歌同酔春，蕉風椰雨緑波新。
　　　繁華如夢難帰去，留客市声欲愛賓。
　　　経済於今看世変，同時群彦広成隣。
　　　高楼雲漲傾盆雨，殷殷雷声電閃銀。

　　　炎威洗却月鎔銀，行客開襟魚水親。
　　　十字七芒紅輝燦，蕉風椰雨緑波新。
　　　往還幾度君知否，黙数鴻痕独酌人。
　　　莫言浮雲追影事，青衫豪気積年塵。

　　　海色蒼茫浪洗塵，新加坡上水雲巡。
　　　東西要衝飛機多，南北通商海貢頻。
　　　葉落花開金蕾健，蕉風椰雨緑波新。
　　　富貴堪羨何由得，独立高懐勢絶倫。

　　　干戈無跡太平民，不説腥風殺戮真。
　　　未忘伏屍千載恨，猶余枯骨一傷神。
　　　蛮行宿怨無民問，血債碑文絆此身。
　　　永世平和雲樹念，蕉風椰雨緑波新。

　　　　　風雨秋深　　　　　　千葉　陳興
　　　雲連天地復清涼，秋雨秋風秋夢長。
　　　頭上灯低想窓燭，心中事瑣念遊章。
　　　千山揺樹壯比海，四岸飛濤寒過霜。
　　　大雁胸懐本坦蕩，不知何故到他郷？

　　　　　孤吟
　　　未必開窓便有星，幾回吟詠到天明。
　　　新篇初就高歌起，春草秋虫不解聴。

　　　　　布谷
　　　朝来諦布谷，戸外春到処。
　　　昨夜欲深眠，夢郷似未入。

註：布谷＝郭公鳥

　　　示友人
昔在山中住，未知天外天。
山中緑不尽，天外水無邊。

　　　農村生活
稲倒日正午，信依田外餐。
碗中何所剰，更映万重山。

　　　　　千葉棄雨
悩傘雨時斜意酋，春宵風里似深秋。
到家不覚闘室簡，棄尽帰途風雨愁。

　　　　　轆轤体・曙杉五首一組　　　千葉　今田莵庵
　　　曙杉化石見回生，錘形衝天伸巨茎。
　　　世識已亡太古営，果残呼想遠紀程。
　　　樹骸累累厳寒地，舟骨皚皚結氷瀛。
　　　幾百萬年疇昔影，苦難探検夥出牲。

　　　日本労人地殻精，曙杉化石見回生。
　　　探求北極同群跡，発見樹皮埋土瓊。
　　　労掘京都泥沼底，潜潮西海磧層棚。
　　　小條落葉相似性，詳述論文四海呈。

　　　四川渓谷水流盈，神木亭亭呼客情。
　　　重慶翰林避戦火，曙杉化石見回生。
　　　所員訪問為標本，所見求聞輸北京。
　　　活木何存繁鬱鬱，全球学界豁然驚。

　　　地質学灯深照井，新生代紀第三程。
　　　漸漸空宙飛禽殖，遅遅山間哺乳萌。
　　　人類雄姿雖未誕，曙杉化石見回生。
　　　問君創世天神業？進化新論呼論争。

　　　輸苗美国殖苗成，多国応求又度瀛。
　　　玉域瞻望高木槊，天皇頗愛旭光名。
　　　神驚奇跡今蘇此，世界公園挙手迎。
　　　朝夕宅辺看数樹，曙杉化石見回生。

註：曙杉是Metasequoia。新生代第三紀(数百萬年前)之巨大杉科樹木、現代已消滅。痕跡多被見亜細亜化石中。其性類似Sequoia杉存美国加利福尼州是即世界最大最高樹木。以此日本三木博士曾命名Metasequoia(meta即意「後」希臘語原)。然所日中戦争時、重慶政府傘下営林局員偶発見巨大杉樹現存于四川省、更照三木論文、確認正同一種新生代Metasequoia。其苗木移送対美国、于此命名Dawn Metasequoia、伝播日本時此名訳為曙杉。

　　　　　轆轤体・雅加多男声合唱団江南行（現代韻）五首一組
　　　男声合唱踏江南，元是印尼同勤縁。
　　　炎熱沈陽流緩気，和音成楽共郷餐。
　　　一夫続業居無錫，九合応招組旅班。
　　　上海機場欣再会，車中已発里謡端。

　　　高速車中笑語寛，男声合唱踏江南。
　　　杭州忽立西湖畔，芳酒共迎美食盤。
　　　即興民謡和整整，休風郷客趣綿綿。
　　　白堤已暮蘇堤照，一刻千金光彩残。

　　　南京芽緑紫金山，共登孫文墳墓壇。
　　　史蹟孝陵撫獣像，男声合唱踏江南。
　　　和音不拒飛来鳥，随律幽啼早醒蝉。
　　　妓境秦淮垂柳葉，烏衣巷上不来燕。

　　　二十四橋游航船，痩西湖上謡纏綿。
　　　小亭待遇乾隆釣，壮碑揮毫毛氏穿。
　　　彼岸游人鳴喝采，男声合唱踏江南。
　　　揚州萬古無双地，天下三分制両川。

　　　長江欲渡登江船，航路茫茫東方烟。
　　　往昔鑑真斎孤舶，指倭仏典負双肩。
　　　蘇州側耳清和響，餐館来房服務員。
　　　夜泊楓橋新緑動，男声合唱踏江南。

　　　　　倣大沼枕山先生江戸名勝詩百景再訪了
　　　枕山夙弄詠東京，百景江都何遅耕。
　　　新政人寰崩美徳，墨堤花朶折為牲。
　　　往時礼節求回復，経国官民念琢瓊。
　　　再訪先人游歴跡，洗心側耳聴天聲。

　　　　　禽流感 　　　
　　　鶏鶉鵞鶩飼軒渠，使復春鴬輸雁書。
　　　舵工馴鵜放?水，叩舷寄舳巧為漁。
　　　梅妻見鶴吟懐紙，棄稿欣詩忘録舒。
　　　流感何来殲檻鳥，民愚餌食縋畦蔬。

註：梅妻見鶴＝宋代詩人林逋好梅及鶴生涯不娶，人呼謂「梅妻鶴子」。詠詩後破詩不残稿。拾之人有傳今三百余首。

　　　　　大阪七洋会両女参加有感
　　　城南一夕集傾瓢，容色猶留旧二喬。
　　　大阪茫々如昨日，七洋朋友盡情宵。
註：二喬＝三国時代喬家有二箇美女。

　　　　　我登上了花粉症戯台
　　　当今眸子感痒催，眼疾迎春登戯台。
　　　聞説誘因盈體甕，忽然炎症接花開。

　　　　　鶴頭格・神戸道治氏勤務玩具工厰于香港島
　　　神驚高層衝天街，戸廠高層玩具埋。
　　　道蘊微片膨品価，治資産業使欣皆。

　　　　　鶴頭格・励寄神戸瑠美子女史詠漢詩
　　　神情欲学詠漢詩，戸側双聯得読時。
　　　瑠玉不磨光不放，美宵香港寸心馳。

　　　　　日比谷公園梅花　　千葉　高橋香雪
　　　早梅紅白帯軽煙，懸鈴樹木二月天。
　　　鶴型噴泉弾跳舞，公園散策兩三聯。

　　　　　世界遺産紀行20首録３　東京　池田耕堂
　　　　　小便小僧　　古体
　　　官庁広場是何人，市民旅客兩為隣。
　　　小僧銅像向誰語，尽日來参一世珍。
　　　急迫難事最上策，童子散尿葬戦塵。
　　　全球婦女周知事，自豪小鶏実絶倫。

注：小鶏；子供のおちんちん

　　　　　大雁塔　中国西安
　　　多年竹帛古都天，初夏市街新緑鮮。
　　　旧跡残碑談故事，先賢覇業記雄編。
　　　登臨昨昔俗塵隔，再訪期難情緒牽。
　　　曲江院裏遼遠地，層塔萬丈到星躔。

　　　　　金字塔　ｴｼﾞﾌﾟﾄ ｷﾞｻﾞﾋﾟﾗﾐｯﾄﾞ
　　　幾多遺構傍江邊，上古繁栄顕眼前。
　　　巨大石堆連廣野，荘厳神殿峙晴天。
　　　昔人遺業方強大，文化開花眞壮堅。
　　　盛衰栄枯五千歳，国王権勢不知年。



　　　　　富士山 横浜　山田鈍耕
　　　早春五湖湖浮煙，巡覧山裾眺望鮮。
　　　只恨俗塵和白髪，麗姿富岳蕩塵縁。

　　　　　頌辞　吉田良治君　
　　　吉祥家運不忘先，
　　　田園豊熟子孫賢。
　　　良妻修医芳姿好，
　　　治績無彊萬古傳。



　　　　　掃墓賞櫻花　　　東京　石倉鮟鱇
　　　倩女幽魂撫頭頂，醉翁陰鬼吐春霞。
　　　櫻雲盛涌風輕處，墓地清明飛雪花。
（普韵一麻）

　　　　　人老梦醒
　　　青春纖手堪接吻，朱夏驕陽焦戀情。
　　　君去秋天紅葉舞，我留冬夜梦魂醒。
（普韵十七庚）

　　　　　花間踏狗糞
　　　人肥狗痩共春風，散歩櫻雲飛雪中。
　　　樗散行吟頻踏糞，山妻責過去年同。
（普韵十八東）

　　　　　佳人死盛春
　　　肺臓藏花開病身，阿嬌薄命死酣春。
　　　櫻雲吐雪天飛處，憔悴斷腸埋骨人。
（普韵十五痕）

　　　　　七絶・暮春多人死
　　　髑髏頭頂生芳草，墓地櫻雲流暮春。
　　　偶見月鈎垂碧落，又疑今夜釣誰人？
（普韵十五痕）

　　　　　夜行列車
　　　列車穿夜似昇龍，前吐火星飛雪中。
　　　昔日朱顔今醉臉，依窗白首思朦朧。
（普韵十八東）

　　　　　春　吟
　　　覓句尋勝景，賞櫻凝艷粧。詩魂傾酒盞，鶯語領春光。
　　　多知山氣好，一笑市人忙。尽日餐霞後，悠然送夕陽。



　　　　　雨中観桜　　　　川崎　萩原艸禾
　　　浅紅朶朶漸将斎，雅客両三花雨堤。
　　　坐覚香雲如我懶，道傍嫋嫋一枝低。

　　　　　庭前桃花
　　　艶冶新条爛漫舒，檐頭灼灼傲茅廬。
　　　可怨花麗無結果，美女装妍世慮虚。



　　　　　早春登筑波山
　　下平一〇蒸韻平起　千葉　中山逍雀
　　　早春覓路路登登，筑波山頭履薄冰。
　　　空谷煙深流水涸，幽林露落夕嵐凝。
　　　暗雲掩日群峰淡，霏雪舞風清冷増。
　　　遠隔塵寰雄峻地，厳寒莫奈興難乗。

筑波山頭 ﾂｸﾊﾞｻﾝﾄｳ 茨城県にあり
空谷 ｸｳｺｸ 人気の無い谷
幽林 ﾕｳﾘﾝ 静かな林 俗の入り込まない林
夕嵐 0229 0307 夕方の山風
霏雪 1079 雪の飛び散るさま　細かな雪
塵寰 0221 ｼﾞﾝｶﾝ 俗世間
雄峻 1070 ﾕｳｼｭﾝ 聳え立つ山
莫奈 1233 0247 ｲｶﾝﾄﾓｽﾙﾅｼ 否定 設問
空前絶後 獨一無二 超越古今的意思
空谷足音 比喩難得的人物或言論
☆空空洞洞 空洞的様子 空頭支票 不能駒兌現的支票 也比喩不実在的空話

　　　　　探梅　詠物　　　　　　上平一一眞韻平起
　　　渓梅一樹竹成鄰，郁郁飄香獨占春。
　　　氷雪融時蘇痩骨，暖暄彌日啓紅唇。
　　　此臨碧水清標格，也對黄鶯好主賓。
　　　已在東君懇催促，素粧依約見精神。

暖暄 0468 ﾀﾞﾝｾﾝ 暖かな春の日差し
清標格 0592 0530 ｾｲﾋｮｳｶｸ 清い姿
主賓 0030 ｼｭﾋﾝ 主人と客人 正客 ☆ 梅と鴬
東君 0501 ﾄｳｸﾝ 太陽 春の神
素粧 0907 ｿｼﾖｳ 化粧し美しく飾る
素妝 依約 0072 ｲﾔｸ 頼り付く ほのか 似ている
氷雪 氷や雪
紅唇 紅い唇 ☆ 形容梅花
郁郁 1012 ｲｸｲｸ 芳しい 文化の高い 論語 郁郁呼文哉
痩骨 0684 ｿｳｺﾂ 老い耄れ 老人 余分な肉が取れて逞しく見える ☆ 形容梅樹

　　　　　偕楽園探梅　　　　　上平一〇灰韻仄起
　　　二月梅園春欲囘，詩翁覓句侭徘徊。
　　　溪邊潅木緑衣未，路畔疎楊青眼開。
　　　慈雨降霑三徑去，恵風吹煦一林來。
　　　暗香浮動媚人好，黄鳥嬌喉囀早梅。

疎楊 ｿﾖｳ 疎らな柳
青眼開 ｾｲｶﾞﾝﾋﾗｸ 青い芽を吹く
暗香 ｱﾝｺｳ ほのかに香る香り
嬌喉 0263 ｷｮｳｺｳ 艶かしい喉 声
詩翁 詩の好きな翁
媚 こびる へつらう
偕楽園　ｶｲﾗｸｴﾝ茨城県水戸市近郊 梅林丘陵
三徑 0013 ｻﾝｹｲ 隠者の住まいの庭園 松菊竹を植えた
☆ 晋陶潜帰去来辞 ☆ 人の通行希なる に依り、閑かな小径を比喩したもの

詞

　　春雨賦　　　　千葉　陳 興
　　雨哉，華胥未入。晨兮，布谷悄啼。床前孤檠浅照，天涯独念清渓。春雨何故不息而綿綿，秋夢他朝又醒競依依。
　　長空雲濃，今思沈重也，大雁途遥，曾嘆孤単乎？春雨兮，久待君帰，故郷兮，復起誰思？



　　醉春風・賞櫻花吟句　　　東京　石倉鮟鱇
　　淺酌人恬淡，嘆賞櫻芳艷。乗風飛雪舞繽紛，点，点，点。還聽流鶯，碧天清哢，自添情感。
　　白首將披胆，醺然試口占。聳肩搖吻醉春光，唸，唸，唸。天用我才能，擬唐尚古，放歌無厭。

　　一枝春・賞櫻花吟句
　　花底傾觴，賞櫻雲、香雪乗風芳艷。人無盛譽，解綬獨佯沖淡。傾杯望眺，醉佳景、四圍山險。聽碧落、鶯語玲瓏，百囀巧添情感。
　　悠然蕩脣口占，鼓吟腸、乗興笑揮詩劍。餐霞養浩，兩斷俗寰遺憾。吟誇七歩，得麗藻擬唐華贍，天欲暮、目送歸鴉，夕陽吐焔。

　　六郷令・賞櫻花吟句
　　櫻雲盛涌，樗散坐恬淡，仰天嘆賞飛雪，似蝶舞芳艷。傾盞佯忘物我，眺望中峰險。笑聽鶯占，餐霞養浩，乗興雄然抜詩劍。
　　兩斷老殘幽悶，覓句誇經驗。先探雅韵玲瓏，平仄添情感。天用吾才鼓舌，尽日吟無厭。擬唐人唸，聳肩目送，斜日燒雲耀如焔。

　　蝶戀歌・賞櫻花吟句
　　仰看酣春櫻冷艷，香雪乗風、飛散添情感。傾盞游魂醉恬淡，閑聽黄鳥吟無厭。
　　試鼓詩腸還露胆，冩景舒情、搖吻忘塵念。天用吾才抜詩劍，斷愁裁句誇華贍。

　　魚游春水・賞櫻花吟句
　　山櫻春粧艷，香雪乗風飛点点。抱壺花底，傾盞暫佯恬憺。回顧半生無盛功，空老人間思黯惨。偶聽鶯啼，巧添情感。
　　乗興當排俗念，試鼓詩腸將露胆。諧調平仄玲瓏，聳肩口占。善哉天用我才健，吟句擬唐誇宏贍。笑對斜暉，燒雲如焔。

　　解佩令・賞櫻花吟句
　　風人嘆賞，山櫻粧点，吐香雪、翻袖芳艷。花底傾觴，淺醉處、遙望山險。聽鶯声、巧添情感。
　　餐霞養浩，聳肩披胆，鼓詩腸、搖脣無厭。天用吾才，弄清韵、舒情華贍。送斜陽、暮天如焔。


　　生査子・賞櫻花吟句
　　櫻雲山麓流，香雪蒼穹閃。花底抱壺人，搖吻吟無厭。
　　擬唐平仄佳，探韵風情淡。樗散列詩豪，陪酒妻呵欠。

新短詩

　　　　　曄歌五首　東京　門馬清明
　　　背時宜，詩債成山。坐草茵。

　　　酔吟時，詩味津津。對月人。

　　　句未成，歳茲暮矣。亦已塵。

　　　揮酔筆，月落花塵。涙痕新。

　　　明窗下，友到勧醇。性憤真。

　　　　　坤歌五首
　　　叩君門，使泣鬼神。有詩人。

　　　会一堂，遊子心頭。獨向津。

　　　自弾琴，獨坐花茵。三十春。

　　　詩詞友，養拙沽巾。性保純。

　　　柴門閉，不知俗塵。守一貧。

　　　　　曄歌　　　　千葉　高橋香雪
　　　紅梅煙。懸鈴二月，兩三聯。

　　　　　坤歌
　　　白軽煙。懸鈴二月，噴泉天。

　　　　　偲歌
　　　紅白軽煙，懸鈴二月，噴泉跳舞，兩三聯。

　　　　　瀛歌
　　　兩三聯。懸鈴二月，泉舞天。公園散策，早梅煙。



　　　　　曄歌・立長城　　　　東京　石倉鮟鱇
　　　立長城，千里渺然，游子情。

　　　　　曄歌・晩初晴
　　　晩初晴。峰月清澄，旅有情。

　　　　　漢俳・老狗垂死
　　　警犬叫声愁，倩女幽魂撫老頭。春夜月如鈎。

　　　　　漢俳・春　情
　　　花貌喜鶯啼。青春纖手堪接吻，君笑使人迷。

　　　　　漢俳習作用普通話韻十五痕120首録10（抄）
　　　傾盞夜連晨。笑看白髪鏡中眞，朱顔醉裡醺。

　　　酒荒前世因。頻繁回憶旧時春，別君花界隣。

　　　醉坐翠苔茵，陶然瞻仰賞櫻雲。香雪舞花陰。

　　　雨霽鳥声新。抱壺花底醉醺醺，無語賞櫻雲。

　　　雨洗緑陰新。輕風嫋嫋繞山村，閑聽啼鳥頻。

　　　清濁浸詩魂。我愛酒家人對樽，樹蔭緑無塵。

　　　君是看書人。我搖脣吻抱芳樽，偏愛醉中吟。

　　　酒境好披襟。含笑傾杯抱酒樽，吟句不随人。

　　　秋夜酒孤斟。醉梦佳人彈素琴，明月入幽襟。

　　　秋夜与誰親。斷腸蛩語一傷神，明月轉迷人。



　　　　　曄歌５首　　　　東京　田村星舟
　　　梅信傳。兄弟三弦，爭爭響。

　　　桜花季。熟眠漸醒，樹精霊。

　　　鳥声頻。半里花堤，綺羅塵。

　　　復何嗟。夢幻泡影，独看花。

　　　処処春。行雲流水，一騒人。



　　　　　漢俳・俳句春雑吟五首　　千葉　今田莵庵
　　　伴娘一献偕。女将見顔似父告，牡蠣味殊佳。
　　　「パパ似ね」と云はれ娘と牡蠣を食ふ

　　　往還脚踏車。帰路東風労抗我，加力体傾斜。
　　　自転車の帰路はさからふ東風を蹴る

　　　春陽欲就眠。雲紫縁金燦飾褥，牀整待夢盡。
　　　金縁の雲に寝に行く春没日

　　　越窓爆裂声。路傍揚油豆腐店，一瞬響春烹。
　　　豆腐屋の油ピチリと春を揚ぐ

　　　宿雨濡花枝。繙書商隠詩情鬱，空似琴瑟時。
　　　李商隠の琴瑟あわれ花の雨

言論筆譚

《逍雀詩講》轆轤体　　　　　　　録 今田莵庵

　三月例会では「轆轤体」が採り上げられた。五言律詩または七言律詩を五首並べた連作で、ルールは冒頭の主題句が、首聯上句、首聯下句、頷聯、頸聯、結聯と、脚韻五箇所にずれて使われる。

　そういえばこの形式は以前、中国の詩誌で見たことがある。解説を受けてその構造が理解できた。五言で形状を示すと次の通りである。

漢詩講座　叙事法　轆轤對参照
　××××◎で示された部分が、主題句で、脚韻をとる句にずれて用いられ、冒頭へつながるから轆轤体といわれる。『梨雲』３５号には、中山先生の『春日閑窗』(五言)と、講義を聴いて急遽作った拙作『北国陽春』(七言)が載っているので参考にされたい。


　一言加えると、轆轤体の面白さには主題が繰り返して使われ、それが連作の進行に随って新たな詩興を生んで行くところにあるようだ。丁度ソナタやシンフォニーの主題が、展開部を経て再現され、新たな情趣を醸し出すのと似た効果がある。それを成功させるには、主題はスッキリした単純なものがいいようだ。

　モーツアルトの主題のような単純さを用いると成功すると思う。拙作の「北国陽春花満天」なんて、まるで北島三郎みたいだけれど、これくらい単純な方が後々の対句作りを練り上げるのに便利。兎に角面白く、作詩訓練にも役立つので、ぜひ試してみてください。


　　陳興さんの詩を回って 千葉　今田莵庵

　留学生の陳興さんは詩友を得たくてインターネットで葛飾吟社を探し当てた。そして彼が始めて葛飾吟社の五香本社に現れたのは昨年十二月二十七日だった。開口一番中山主宰が陳さんにいった言葉は、「若いのに詩なんて詠んでいては駄目だよ。早く一人前になって稼がなくちゃ。」だった。

　「折角詩会を見つけて来たのに、それではあまり可愛そうでしょう」と、早々に例会を打ち上げて、中山主宰、小畑旭翠先生、秋山北魚先生それに私と四人で陳さんを囲み、近くの焼き肉屋で歓迎の祝杯を挙げた。

　翌朝、早速陳興さんからメールが入ってきた。

　　十二月二十七日 十二月二十七日微雪
　　微雪訪葛飾吟社 葛飾吟社を訪う　　　　陳興
高談竹林里， 高談す　竹林の里、
倒酒挙還傾。 酒を倒して　挙げて還(また)傾く。
不管鉄道上， 鉄道に上りてからも、
電車来往頻。 電車　来往頻りなり。

　「不管」は通常「・・・にも関わらず」の意だが、吟社での楽しかった詩談と乾杯の昂奮が、電車に乗ってからも、電車の頻繁な往来のたびに思い返されたのだろうか。きっと好い酔い心地だったのだろう。

　『梨雲』一月号にはこの作品のほかに十首の詩が掲載された。読者は若い詩人の目を感じ楽しんで頂いたことと思う。

　　東京手機 東京の手機 陳興
誰借手機消寂寞， 誰か手機を借りて寂寞を消さんか、
天如有信月円時。 天に信有る如く　月円き時。
電車男女皆沈黙， 電車の男女　皆沈黙、
早有手機傳別思。 早や手機は別の思いを伝える有り。

　「手機」とは携帯電話のことであろう。私はこの詩が好きだ。東京という無機質な外国の大都会における寂寞を、携帯電話をかけて忘れようとする若者の心理。そして携帯に送られてくる情報の頼りなさみたいなものが「天に信有る如く」という句で実によく表現されていると思う。この信は「便り」のことである。

　私自身は携帯は使わないが、古来の封書や葉書に比べて、電子メールは便利であり即時性があるものの、しっかり相手の心情を捉えたどうか解らないもどかしさがあるのだろう。だから皆不安にかられ沈黙のまま送受信を繰り返す。最後の「別思」は「別の」と読むべきか、むしろ「別れの」と読むべきだろうか。

　陳さんは『梨雲』二月号にも三月号にも引き続いて投稿して呉れた。そして三月には新宿最後の東京例会にも出席して自己紹介して呉れた。陳さんの参加は『梨雲』にとってよい刺激になる筈だ。

　　千葉憶雨　　　千葉の雨に憶う 陳興
雨里憶懐久不開， 雨里　憶懐は久しく開かざれど、
可能因雨悶詩懐。 雨に因り　詩懐に悶えること能う可し。
雨平猶作雨時憶， 雨は平らぎて猶　雨時の憶いを作れば、
萬午奔従天上来。 万馬奔して　天上より来たる。

　それはその作詩法を見れば一目瞭然である。現代韻使用は勿論だが、普通日本の詩壇が喧しくいう絶句や律詩における同字重出禁止は意に介していない。

　漢民族の詩法で、禁止しているのは、同字重出ではなく同義重出で有る。この事は破音字関連とも解されるが、例示の作品では、「雨」の意味が皆異なっているから、援用の範疇に入るのであろうか？

　禁ずるのはそれが詩の膨らみと聲韵に害があるから言うのだろう。同字でも異義であり、膨らみに効果があるなら使う事にも一理ある。

　陳興さんは望郷の詩をよく詠む。三年も故国を離れているのは辛いことだ。詩作はその淋しさを埋める手段でもあるらしい。だが陳さんは詩に単なる慰めだけでなく、もっと大切な役割があると思っているらしいフシがある。

　　修理地球者　　　　地球を修理する者 陳興
同入高中二百人， 同(とも)に入りし高中　二百人、
至今多進大専門。 今に至り多くは進む　大専門。
我成修理地球者， 我は地球を修理する者と成り、
閑写詩詞郵出村。 閑に詩詞を写して　村に郵出す。

　郵you2 は郵便するという現代語で漢和辞典を引いても出てこない。漢詩も現代の詩だということがよく解る。言葉は古典的でも感覚は新しい牧水調または啄木調の詩もある。

　　布谷 　かっこう 　　　　陳興
朝来諦布谷， 朝来りて諦(つまびら)かにする郭公，
戸外春到処。 戸外は　春　到る処と。
昨夜欲深眠， 昨夜　深く眠らんと欲っし，
夢郷似未入。 夢郷　未だ入らざるに似たり。

　「諦」の字はつまびらかにするの意味で日本語の諦めるという意味は無い。無論陳さんも作詩は修行中だといっている。古典の掘り下げなど課題もあるようである。にも拘わらず陳さんからは学ぶところは多い。陳さんは更に学生詩人を連れて来るといっている。葛飾吟社会員は若返って交流し、大いに学びたいものである。

吟社の窗

▼東京例会のお茶の水移転が無事進むことを祈っています。東京医科歯科大学の敷地は旧東京高師・女高師の跡地です。隣の湯島聖堂には曾つて昌平校がありました。詩文とは有縁の地でした。会場になるレストランの「アルメイダ」という名称は、十六世紀半ば、日本に最初の西洋医学をもたらしたポルトガル医師の名前だそうです。

▼２月の貿易統計で対中貿易が出超になりました。対中国貿易というと輸入が注視されがちですが、中国工業の伸びとともに設備増設や部品調達が増えています。日本のメーカーにとって中国はいよいよ重要な市場となっています。経済面での両国の紐帯は強まる一方です。

▼そんな中、身近でこんな国際交流がありました。みずほ国際交流奨学財団は十数年にわたって、アジアからの留学生に奨学金を支援してきました。曾つて葛飾吟社で講演された周本淳先生の長女周先林さんもその一人です。この財団が３月１日から８日まで日本の学生１５名を北京・復旦・浙江の三大学に派遣し交流セミナーを行いました。曾つての奨学生が母国で教鞭を執っている関係で、中国側でも優れた学生が選ばれた。そこでこんな詩を詠みました。これが担当理事を通じて通訳の范明さん(関学大博士課程在学奨学生)に届きました。

十五青衿三学羈， 十五青衿　三学の羈(たび)，
北京復旦浙江維。 北京・復旦・浙江維(むす)ぶ。
長城蘇夢西湖又， 長城夢に蘇る　西湖も又，
朋友已知晤語誰？ 朋友已に知る　誰と語を晤(あわ)せん？

　范さんは驚いたらしく南京のご両親(いずれも南京理工大教授、父親は宇宙工学の権威らしい)へ転送、ご両親も大変喜ばれたとのメールが送られて来ました。これを知った日本側参加学生の中には葛飾吟社例会を覗いてみたいという人も出て来そうです。歓迎して上げて下さい。(莵)
「葛飾吟社」のご案内

所在地：松戸市常盤平5-14-25(〒270-2261)Fax:047-383-4430
ホームページ：http://www.kanshi.org/
交　通：新京成電鉄「五香」駅下車２分。松戸例会：第一土曜。
東京例会：第二土曜。（お茶の水東京医科歯科大内、アルメイダ）

◆葛飾吟社は詩詞の制作を通じて中国をはじめとする漢字文化圏との文化交流を行っています。主な実績は次の通りです。
1995年　南京の詩人で文学者の周本淳氏を迎えて講演会開催。1997年　日中国交正常化25周年記念行事として中日友好協会・中華詩詞学会の招聘を受け、北京協商会議場にて「中山栄造新短詩研討会」を共催。
2000年　シンガポールにて新声詩社と詩詞による交流会開催。
2000年　北京にて中華詩詞学会・中日歌俳研究中心と「迎接新世紀中日中日短詩交流会」を共催。
2001年　日中両国の短詩人によるアンソロジー『迎接新世紀中日短詩集』を編集刊行。日本33中国53合計86名のが参加。
2002年　日中国交正常化30周年記念行事として北京から林岫・鄭民欽両氏を招聘、俳文化誌「游星」と共同で講演会「華やかに発展する現代中国新短詩」を成城大学において開催。

◆会費は暦年毎に12,000円前納。または1-6月、7-12月に分割し、6,000円を前納。会員は中山主宰の作詩詞の指導が受けられます。
　会費は東京三菱銀行五香支店 普通預金0651648葛飾吟社代表中山栄造宛振込による。

◆2004年日程： 松戸五香　　　　　　お茶の水(アルメイダ)
5月 １日（土）　　　　　 ８日（土）
6月 ５日（土）　　　　 １２日（土）
7月 ３日（土）　　　　　１０日（土）
　時間は午後１時から初心者指導。２時から４時まで一般講義。

五月号

詩

　　　　英国紀行　　　　　　　　　　東京都　池田耕堂
　　尋沙翁生家
　　静寂街巷如中世，木造生家已幾年。
　　劇作多岐眞有趣，周辺歩歩憶名賢。

　　在女王宮殿閲衛兵交替
　　宮殿広場吹奏響，衛兵交替態厳然。
　　紅衣行進成何事，英国威光忽眼前。

　　　　遊“愛丁堡”
　　“蘇國”古都眞壮麗，厳然城塞聳岩山。
　　幾幾戦闘人安在，游客停車返照間。

　　　　巡遊湖水地方
　　清閑山水正蒼茫，素朴農村看牧羊。
　　多少文人愛湖畔？終生創作未歸郷。

　　　　訪“牛津”
　　学園都市緑陰遙，皇子青春修古寮。
　　幾幾学生街路歩，先賢偉業静無囂。

　　　　廃墟故城
　　“北蘇”湖畔望蒼茫，岩岬邊城四壁荒。
　　幾度攻防千古意，野花開遍石門傍。

　　　　驚巨石遺跡
　　“南不”草原千里平，聯環巨石鬼神驚。
　　昔人何為築工是？先史遺蹤樂客情。

　　　　“芭斯散策”
　　市街優雅列華堂，公苑浴池野草蒼。
　　古代“羅人”已去遠，卓冠文化一何長。

　　　　春日偶成　　　　　　 東京都　斎 游子
　　昨日寒兮今日暄，東風撫面百花薫。
　　忽思禍福無情相，一片春愁對暮雲。

　　　　三月偶成
　　野花相笑我忘余，百態春光興不疎。
　　冷雨繽紛霙混合，馳懐故国読詩書。
　　暖風駘蕩草萌動，刈髪南軒望太虚。
　　随處随縁拈句也，悠悠韵事惜居諸。

　　　　三寶寺池春色
　　春水満池春色優，花紅柳緑意悠悠。
　　可憐呷呷鴨鳬語，自在潜潜自在游。

　　　　又
　　嫩晴幽境帯軽煙，任興遶池春可憐。
　　柳眼含羞梳翠髪，桜花有艶作紅漣。

　　　　探春三寶池　思照姫悲話
　　幽境訪來翰墨縁，嫩晴春色静如禅。
　　汪汪池水浸蘆浄，呷呷鴨聲呼友圓。
　　柳眼含愁梳翠髪，桜花映日照黄泉。
　　恩讐一夢餘空砦，非命少姫眞可憐。

　　　　陽春即興
　　嫩晴無事趁東君，野老胸中春十分。
　　一陣香風午陽裏，飛花片片又紛紛。

　　　　柿葉萌生
　　柿葉長來春色饒，一朝一朝又一朝。
　　杞人久憂發芽滞，嫩緑輝輝正堪描。

　　　　訪國庁跡“勝興寺”唐門　　　東京都　田村星舟
　　川左唐門右，風清夏未深。
　　鳴蛙無月夜，忽破我頻心。

　　　　偶成
　　上山姑摘蕨，降谷婦捉魚。
　　不念人間事，天清意晏如。

　　　　旅游亜利曽那平原（ｱﾘｿﾞﾅ）
　　凄風弄曠野，雲塊半天飛。
　　魁偉仙人掌，荒寥帯落暉。

　　　　堂ヶ島天窓洞　　　　　　　　　神奈川県　萩原艸禾
　　危石嵩崖造化功，軽航転舵掠顔風。
　　忽驚跨海天然洞，頭上団団豁碧穹。

　　今年正月，與家族一起静県岡堂ヶ島旅行。奇岩累々白波迫近游客人。島由于怒濤被削岩石，有跨過那様的海的洞窟。游覧船前進向洞窟，仰視洞窟的頂棚藍的天空可以看見。

　　　　堂ヶ島三四郎島
　　茂松島影浴新陽，前浦小波水色光。
　　更賞沙洲潜底下，落潮徐現海中廊。

　　　　七言絶句　松戸春 　　　　　千葉県　高橋香雪
　　東郊探訪一天晴，梨花白白四半程。
　　少婦負兒農事急，鯉旗翻景午風軽。

　　　　手機
　　吾買手機興似童，霜頭難弁愧無工。
　　今宵有信來何処，孫女寄信指顧中。



　　　　　越後闘牛 　　神奈川県　山田鈍耕
　　角突煙塵響鈍音，堂堂勝敗見天心。
　　應看勢子挙聲喚，日日艱難低萬金。

　　　　賀婚
　　薫風五月緑陰繁，“高瀬井波”喜満軒。
　　淑女英才相敬愛，應知滾々起家門。

　　我的姪女出嫁了“高瀬伊沢”城市的世家。新郎聡明的人，我們一族全部感到高興。堅信看従這越發家運也昌盛的事。

山妻之嘆　千葉県　中山逍雀
　　萬紫千紅老，擔頭燕子鳴。
　　幽斎眠不得，芳塵画難成。
　　託酒閑敲句，耽吟豈欲名。
　　山妻心執主，白屋暮煙横。

　　　　海
　　萬頃潮風爽，天垂水接空。
　　亂雲如怨鬼，疎雨架文虹。
　　水歴遙然地，禽巡方寸蓬。
　　清漣和逆浪，碧緑古今同。

　　水変成雨降下大地。山岳・平野・酷暑・厳寒・富裕。貧困・和平・戦乱・覇業・徳政，人類社会全部的地降下，而且経験人和善的心、人醜悪的心。而且與小河大河，大海成。可是，住在由于海被隔開的地方的我們，不需直接自己的身体覚得世界的状況。但是，在眼前的状況上只是做喜怒哀楽。

　　　　寒窗獨酌
　　一夕青燈下，相思懐舊歓。
　　西風身作客，買酔嘆衣単。

　　　　晩春閑居
　　燕子簾前影，檐頭花作塵。
　　已知芳草暗，微雨餞徂春。

　　　　　七絶・伊拉克　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　美國領袖崇天主，日本忠臣派義兵。
　　人道支援瞞過謬，無辜尸首熱沙横。

　　　　　七絶・漢　俳　　　　　　　
　　朝朝暮暮人忙碌，歳歳年年詩短篇。
　　巧弄漢俳風韵好，春秋遣興不須錢。

　　　　　七絶・送櫻雲　　　　　　　
　　花散烏鳴人斷腸，惜春無語送斜陽。
　　只思昨梦櫻雲涌，紅友笑容招醉郷。



　　返詩陳興先生用同韻 　　　　 千葉県　今田莵庵
　　陳氏詠吟想国多、誰忘寂寞月円歌。
　　曾居我又椰蕉地、不託詩情情託何？
　　
　　 贈今翁 陳興先生原玉
　　葉公帰去一年多、晩輩陳興曾有歌。
　　詩使何曾寂漠詠、今翁又有論如何。
　　注：葉公、指湖北故詩人葉先生、陳興之忘年詩友

　　 訪篠田紘明先生于丸紅本社
　　皇宮柳緑濠為湾、名画離離飾壁間。
　　曾拝禮招群士宴、貴顔重見往年顔。

　　追悼坂田道太先生。　　先考曾学道太先生父君坂田道夫先生于熊本五高。後先考在勤成城高校教授頃、道太先生就学当校。

　　道太大臣廉潔人、議員生活又依仁。
　　党長選挙辞推薦、大学紛争修軼倫。
　　先考著書求乞序、門生流汗尽労神。
　　後聞不用資文職、朋友推敲共笑顰。

　　註：先考；＝亡父。著書＝謂亡父今田哲夫著「藪菰山」。
　　　　　朋友；謂坂田氏友人薄井恭一氏、元文藝春秋朱筆。

　　　　邪加多男声合唱団泊函嶺高原飯店
　　高原深夜響歌声、 曾勤印尼同好盟。
　　頭上桜花浸感興、 巣中禽鳥耽論評。
　　両員已逝知流転、 八婦随行温旧情。
　　払暁鴬吟挑昨夜、 吹煙函嶺岫巓晴。

　　註：邪加多；ジャカルタ。印尼＝インドネシア。
　　　　　　函嶺；箱根山。

　　　　芭蕉 　　　　　　千葉県　陳興
　　無泥息破土，有往事傷春。
　　夜下芭蕉雨，朝来疑涙痕。

　　　　十二月九日喜雪（２００２年）
　　前年曾下雪，去年競遅遅。
　　今又天地白，想与説相思。

　　 櫻林漫興
　　櫻林気象隔湖知，長使客心悲喜之。
　　花落花開此林事，遊人不必為傷思。

　　 落楓長掃詞
　　一夜落楓軽雨中，浅紅掃尽掃深紅。
　　城西早有掃葉婦，不只掃開新落楓。

　　贈今翁
　　葉公帰去一年多、晩輩陳興曾有歌。
　　詩使何曾寂漠詠、今翁又有論如何。

　　 注：葉公、指湖北故詩人葉先生、陳興之忘年詩友

　　 春題之一
　　春寒櫻忽満柴門、石道悠然走客魂、
　　故里花林稀未現、旅中愁水密難分、
　　独遊空負相如賦、苦詠長懐商隠云、
　　新恨旧情何処淡、漫天星象暗消痕、

　　　　春題之二
　　詩懐春暖共櫻開、半夜他郷寂漠回。
　　幸有紙間留此作、恨無酒里遣吾哀。
　　螳螂侵室愛書否？蝴蝶尋芳好色哉。
　　噴嚔近来如電閃、飛塵為我落花来。

　　 春題 之三
　　多情何奈夜深時、欲向佳人訴此痴、
　　海角我遙想天際、春林誰静対秋池、
　　青蛙幽谷水間影、白蛇古橋書里姿、
　　我本東南失意子、出村独旅為求知。




詞

　　　　十六字令春三首　　　　　　千葉県　高橋香雪
　　光。田園人耕日正長。梨花雪，蝶舞弄春芳。
　　遊。獨坐旗亭酒味柔。春将尽，暮色水悠々。
　　春。萬朶櫻花游客頻。朦朧月，夢醒隔花人。

　　　　　水調歌頭・燒伊拉克的戰火不到日本芳春　東京都　石倉鮟鱇
　　華首空思量，天道不殺人。自由民主欺瞞，又擧義軍侵。獨占最新兵器，蹂躙石油産地，砲火燬風琴。老幼白沙死，日本百花新。
　　梅香尽，櫻雲散，緑無塵。支援重建焦土，汗血涌仁心。專守家國防衛，萬里長征精鋭，何憶故郷春? 半月照荒外，清影一傷神。

　　　　西子妝・四時如醉
　　春日山行，賞櫻萬朶，吐雪皚皚芳艷。抱壺花底醉風光，聽流鶯、巧添情感。餐霞有驗，轉乗興、搖脣口占。聳双肩，得擬唐佳句，放歌華贍。
　　浮孤帆，盛夏垂綸，帶酒佯恬憺。任偸香餌送魚鱗，望夕陽、耀如紅焔。清秋痩減，人貪戀，嫦娥媚臉。耐嚴冬、淺酌温臍淡淡。

　　　　　東風第一枝・賞櫻花吟句　東京都　石倉鮟鱇
　　滿目櫻雲，乗風香雪，宛如舞蝶芳艷。抱壺花底醺然，望眺四圍山險。重年奉職，無功譽、老懷陰慘。但酒美、有效消憂，笑聽流鶯無厭。
　　乗興處，人當口占，探雅韵、試揮詩劍。聳肩兩斷春愁，冩景老誇經驗。諧調平仄，得佳吟、擬唐華贍。暫養精、目送歸鴉，灼爍夕陽如焔。

　　　　　雙雙燕・賞櫻花吟句
　　賞櫻萬朶，吐飛雪乗風，香粧濃点。花間傾盞，流目四圍山險，忘我暫佯恬淡。聽碧落、嚶鳴鶯占，關關相競春声，巧囀清添情感。
　　登覽，餐霞有驗，促試鼓吟腸，笑揮詩劍。聳肩兩斷，晩節愁懷陰慘。忽得佳吟華贍，蕩脣吻、高歌不厭。偸閑盡日游魂，目送夕陽如焔。

　　　　　念奴橋・賞櫻花吟句
　　櫻雲盛涌，吐任風香雪，天飛芳艷。花底抱壺樗散醉，望眺四圍山險。回憶官途，精勤無譽，喪志還遺憾。重杯欲解，老殘憂悶陰慘。
　　醇酒有效開顔，人聽鶯語，巧囀添情感。養浩醺然乗興處，騒客欲揮吟劍。兩斷春愁，諧調平仄，忽得詩華贍。聳肩相送，夕陽灼爍如焔。

　　　　　月華清・花底遇繆斯
　　滿目櫻雲，乗風香雪，抱壺樗散恬淡。花底醺然，望眺四圍山險。醉春光、養浩餐霞，探雅韵、聳肩口占。詩劍，斬年来鬱悶，老懷陰慘。
　　天用吾才富贍，得麗藻玲瓏，擬唐添感。唱和流鶯，覓句搖脣無厭。有人笑、回首驚看，倩女露、雪肌妖艷。斷吾吟陳腐，繆斯哈欠。

　　　望海潮・全球迎倭餐 　　　千葉県　今田莵庵
　　倭餐今勝、全球望試、健康不老強需。東女痩細、西人肥大、全球刮目和厨。常用活菜魚。海洋接山陸、材料盈厨。鎖国長留、山海試味不虞譽。
　　中餐夙拓歓愉。已知欧美国、厨子労隅。凍技革新、空輸進歩、魚介給業開途。倭食続伸居。鮨是全球恋、欧美皆娯。倭食侵潯香港、将入九州区。

一七七一令「鳥與魚」篠韵魚韵

鳥。
風翻、躯渺。
天山翔、長江遶。
彩色豁然、似娃窈窕。
夷境輸雁書、杜鵑啼昏暁。
鶏檻忽地蒙憂、流感何処震擾？
渡来拡疾疑猶残、回帰縫雲春又了。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
紫烟湖上垂絲翁、紅楓梢下載籃車。
故里難忘鱸膾、郷邨早採秋蔬。
舟去東海水、人凝直鈎漁。
飼鵜捕鯔、干鱶寧居。
雪忽近、鯉泳徐。
鳶下、何狙？
魚。
註：詞牌を天地にしたのは、今田莵庵先生の発案による。




新短詩

　　　　曄歌三首　　　　　　　　東京都　斎 游子
　　頑固漢，不辞路央。何國王？
　　童跟母，傍若無人。慵弄唇。
　　裁判論，宰相違憲。法曹健！

　　　　春色漢俳三首
　　一朝驟暖來，木蘭笑成白磁杯。可惜花易頽！
　　春風到半庭，菫花似星又似鈴。萬物如有霊。
　　無事春暖天，郊行百花隔午眠。却望柳眼煙。

　　　　曄歌五首　　　　　　　　　　東京都　田村星舟
　　水激凌。一鉢一衣，樹下僧。
　　向誰語。胡蝶不還，落照湾。
　　一庭幽。雨后蝸牛，不知愁。
　　風意暄。少年少女，花後村。
　　新樹林。?自行車，花一簪。

　　　　瀛歌二首　　　　　　　　　　千葉県　高橋香雪
　　五月天。緑陰公園，紅杜鵑。少女秋千，揺揺桾子。
　　億西安。電視放映，追舊歓。絹綢之道，“喜多郎”弾。

　　　　偲歌二首　　　　　　　　　　千葉県　秋山北魚
　　毎懐宿契，獨待君帰。春生胡蝶，未敢飛。
　　舊懐恋々，獨亦逢春。双眉愁影，怖染塵。

　　　　漢俳二首
　　好音還有無。空閨春夜五更過，孤月騒路衢。
　　春夢引愁長。不計離別経歳序，早梅依舊香。

　　曄歌五首　　　　　　　　　　千葉県　逍雀野叟
　　蒲公英、一陣春風、旅装束。
　　梅花香、停止通行、枝残雪。
　　一枝香、薄紅桃花、“節句雛”。
　　友來時、“染井吉野”、桜花道。
　　新月夜、薫捉迷臧、沈丁花。

　　　　偲歌二首
　　晩起晨酌、早晨洗澡、人寿保険、等一下。
　　喝酒喝酒、面紅耳赤、臉色蒼白、看帳単。

　　　　　漢俳・佯仙飲酒　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　茅舎若仙居。笑傾銀盞酌瀛海，白晝醉蓬壺。

　　　　　回文漢俳・雨添花
順讀　　佳興醉交情。霞彩映水鏡湖青，花添雨意迎。
倒讀　　迎意雨添花。青湖鏡水映彩霞，情交醉興佳。

　　　　　漢俳・秋　夕
　　無言望翠嵐。斷腸山暮寒蝉慘，風涼飛燕南。

　　　　　漢俳・春　晝
　　花飛留翠嵐。猶聽鶯語添情感，東風遶柳潭。

　　　　　漢俳・惜　春
　　花飛群緑淡。愁客惜春聽杜鵑，滴血傷情感。

　　　　　漢俳・春　傷
　　春暮似秋晴。花飛人老日西傾，晩節尚多情。

　　　　　漢俳・夜賞櫻花
　　仰賞夜櫻銀。擬唐吟句慰辛勤，聳肩花下春。

　　　　　漢俳・送春風暖
　　春夏半陰晴。風暖花飛三月尽，鳥語一天鳴。

　　　　　漢俳・送春閑情
　　風輕春逝時。眼前柳影依青閣，陽光泛緑池。

　　　　　漢俳・初夏閑情
　　翠嶺紫穹重。湖畔夕陽紅漠漠，鏡水碧溶溶。

　　　　　偲歌・學仙道
　　醉游大道，梦養長生。流霞無效，洗朝酲。
　　醉學玄妙，梦瞻太清。飛仙微笑，羽衣輕。
　　笑傾仙藥，梦受道書。鼾眠酒店，梦華胥。
　　梦逢羽客，笑賣仙書。讀學釀造，買金壺。
　　醉吸紫氣，笑對紅脣。巧弄甜言，勸酒頻。
　　花間閑梦，醉境道情。春吟養性，競鶯声。
　　梦尋玉洞，笑蹈雲壇，白頭羽化，醉顔丹。
　　瑤池紫氣，花貌紅脣。醉叟梦尋，仙府春。
　　醉尋丹洞，笑瞰紫烟。餐霞鼓翅，梦魂旋。
　　醉佯仙骨，嘲嗤世人。梦醒亡羊，爲酒貧。
　　梦飛碧落，笑入玄門。醉傾金液，對紅脣。
　　君騎白馬，我坐青牛。共遶瑤池，春解愁。
　　青牛方士，白馬眞人。醉翁垂死，巧招魂。

言論毫譚

　　三聯五七律（詩歌情報）　　　　　　中山逍雀
　“六句五七律”或曰“三聯五七律”或曰簡称“五七律”

　漢詩詞のテキストでは、恰も定型は固定していて、古来永遠不変の様に、決まり切った定型しか紹介されていない。しかし詩歌の定型などと謂うものは、誰がどう作ろうと他人の規制を受ける物事ではない。誰がどんな定型を作ろうと一向に差し支えないのである。ただ年月と民衆の淘汰に耐えられるか？それだけが定着するか否かの条件である。

　現在でも多くの人々によって、次々と新たな詩法が提唱され、新たな定型が創作発表されている。ただ此が定着するか否かは、民衆の淘汰に耐えられるか？だけの問題である。

　ここに新たな定型を紹介しよう。これは貴州省の萬裕屏先生に依って創作された定型で、名曰“六句五七律”或曰三聯五七律、簡称“五七律”と謂う名称が本人によって付けられている。

　新たな提案はそれ程珍しい事ではないが、編者としては、紹介するに当たり、日本人に馴染めるか？理解されるか？の問題がある。　此処に掲載した創作定型は、五言絶句の要素・七言絶句の要素・律詩の要素を持ち合わせ、律詩よりは安易で、絶句よりは質量が多く、五言と七言の組み合わせで、不安定さを内包し今までにない境地を作り出すことが出来るのではないか？と、興味を持ったので此処に掲載した。

１−毎句六句三聯，由二聯五言一聯七言或二聯七言一聯五言句組成。
２−相粘相對，第二聯對仗
３−偶句押平聲韵，首句可入韵可不入韵
４−孤平救、拗句救與傳統律詩相同，拗而不救的変体従寛
５−創新実行一歩位：不用舊聲舊韵，使用新聲新韵
註：不用舊聲舊韵，使用新聲新韵は、現代中国詩壇では常識である。

　　其句形和平仄格式共有六種

１−五五七格（平起入韵式）：
○○▲●◎，▲●●○◎。
▲●○○●，○○▲●◎。
▲●△○○●●，△○▲●●○◎。

春詠貴陽・花谿区
花谿四季春，勝景邇遐聞。
河水潔如玉，山光燦若金。
郷土風情添画色，八方霞客旅紛繧。

註：河水潔如玉，山光燦若金。の句が對仗と成っている。

２−五七五格（平起入韵式）：
○○▲●◎，▲●●○◎。
△○▲●○○●，▲●○○▲●◎。
△○○●●，▲●●○◎。

春詠貴陽・鳥當区
鳥當萬象春，歳歳報嘉聞。
高新科技区増效，無害果蔬民健身。
人勤天地改，血汗変金銀。

註：高新科技区増效，無害果蔬民健身。の句が對仗と成っている。

３−五七七格（平起入韵式）：
○○▲●◎，▲●●○◎。
△○▲●○○●，▲●○○▲●◎。
▲●△○○●●，△○▲●●○◎。

春詠貴陽・小河開発区
昔年草奔深，今日変園林。
奇石展館迎嘉客，藝術長墻沐瑞暾。
十載東風化甘潤，新城疊翠靠人勤。

註：奇石展館迎嘉客，藝術長墻沐瑞暾。の句が對仗と成っている。

４−七七五格（平起入韵式）：
△○▲●●○◎，▲●○○▲●◎。
▲●△○○●●，△○▲●●○◎。
▲●○○●，○○▲●◎。

災害謡・“鼠”害
倉傲乏管鼠囂張，打洞四隅身隠蔵。
侵産國家遭破壊，窃財百姓受災殃。
投下石和棒，通通消滅光。

註：倉傲乏管鼠囂張，打洞四隅身隠蔵。の二句と侵産國家遭破壊，窃財百姓受災殃。の二句が對仗と成っている。所謂章の對、隔句對で有る。

５−七五七格（仄起入韵式）
▲●△○●●◎，△○▲●●○◎。
▲●○○●，○○▲●◎。
▲●△○○●●，△○▲●●○◎。

災害謡・“鳩”害
紅色燈区嫖客迎，塗脂沫粉満身腥。
陪舞又陪酒，弄風兼弄情。
斎力盡将窩穴搗，勿容丑類夢中生。

註：陪舞又陪酒，弄風兼弄情。の句が對仗と成っている。

６−七五五格（平起不入韵式）
△○▲●○○●，▲●○○▲●◎。
△○○●●，▲●●○◎。
▲●○○●，○○▲●◎。

災害謡・SARS害
沙斯妖薜掀獨浪，席巻九州驚五洋。
防毒群閉戸，染疫衆遭殃。
斎打圍殲戦，瘟神一命亡。

註：防毒群閉戸，染疫衆遭殃。の句が對仗と成っている。

　三聯五七律は以下の特徴がある。
１−伝統詩歌の特色を所持し伝統の基礎の上に創新された。平仄、粘對、對仗、押韻は伝統律詩を継承している。
２−七字句組詩、平仄は同じで、抑揚頓挫、節奏明快、音楽感に富んでいる。

註：句の数は六句で有るが、これに起承転合が配されている。對仗を為す句は、二句で一つと数え、五句で起承転合を配すと考えて、概ね相違ない。



作品を読んで　　　　　　　　　　　　　中山逍雀
　最近の作品の中から目に止まったものについて書いてみた。

　　　　　游水郷“柳川”　　　東京都　田村星舟
　　半天渺渺飛孤鳥，一水溶溶映幾楊。
　　那弄筆箋舟上興，棹郎屈膝過橋梁。

　福岡県柳川市の城下の掘割を小舟で巡る観光はよく知られている。掘割の両側には人家が密集し、空の幅は狭い。半天とは言い得て妙である。掘割だから水の流れは僅かである。一水は溶溶として、幾本もの楊が水面に映る。起承で平穏無事な日常を叙し、転句で自分の有り様を叙し、船頭に仮借して、景を借りて情を写す。「屈膝」で、世相に対応せねばと結んでいるのである。

　　　　　夏日閑詠 埼玉県　芋川冬扇
　　終日涼風足，南軒燕子飛。
　　生来遊士意，酌酒不知饑。

　普段は忙しい過ごし方をしているのだろう。こんな生き方をして見たいものだと胸中に迸りを感じる。涼しさの中に気ままな日を過ごす。燕が古巣に帰ってくるように、周りも違うことなく私を見守ってくれる。それほどの大きなことを言っている訳ではない。ただのんびりとした時間と、少しの酒が有れば、それで私の心は饑えないという。生来遊士意，酌酒不知饑。簡単な言い回しの中に心の深奥に迫る鋭さがある。

　　　　　春飆偶成 東京都　斎　游子
　　天飆咆哮捲春塵，眩著雙瞳使悩神。
　　恰似西安煙景巷，雲雲湧出往来人。

　晴天続きも善し悪しで、砂埃を巻き上げる。目も開けていられない。その様子を中国西安の情景に置き換えたのは面白い発想だ。雲雲湧出往来人。人が溢れる様子を雲雲湧出と臨場感溢れる表現で描いた。

　この作品は、自己の思いを訴えると云う内容ではないが、読む人の眼前に情景を映し出す力がある。作者は俳句が堪能らしい。漢詩作家とはちょっと違った描写法が窺われる。

　　　　　再訪新加坡有感　轆轤体五首一組
　　　　　　　　　　　　　　　千葉県　田 旭翠
　　蕉風椰雨緑波新，連歳有余千萬民。
　　生意興隆邦未老，貧困撲減跡已陳。
　　一天雲彩涼波動，百里道途花色�堰B
　　共喜文明無国界，南溟世態自成春。

　轆轤体は五首一組だが、最初の一首を選んだ。作者はアジアを飛び回っている現役の会社役員である。これは中国人の作品と区別が付かない。起聯は実、頷聯は虚、頸聯を実、合聯を虚でまとめている。

　首句の蕉風椰雨緑波新，は景を叙し、緑波新で人民の活力を表現している。頷聯と頸聯は観光客には判らない。彼の地を踏みしめているからこそ書ける。詩眼は、文明無国界、の句である。中国人もこの句は良く使うが、その句が良く馴染むならば、それは疑いもなく自分の句となる。

　　　　　風雨秋深　　　　　　千葉県　陳 興
　　雲連天地復清涼，秋雨秋風秋夢長。
　　頭上灯低想窓燭，心中事瑣念遊章。
　　千山揺樹壯比海，四岸飛濤寒過霜。
　　大雁胸懐本坦蕩，不知何故到他郷？

　作者は中国からの留学生である。秋雨秋風秋夢長、秋は稔りの季節であると共に厳しい冬の訪れを待つ、寂しさを顕す語彙でもある。秋を三個使って、充実と寂寥を言い得ている。

　起聯と頷聯では心の内を詠い、頸聯では目に映る情景を詠う。即ち転換で有る。合聯では遂に心を抑えがたく、雁に仮借して望郷の思いを詠う。

　　　　　十五青衿　　　　　千葉県　今田菟庵
　　十五青衿三学羈、北京復旦浙江維。
　　長城蘇夢西湖又、朋友已知晤語誰？

　この作品は、十五人の学生が中国の学生と渡中して交流を図った事を詠った作品で、一見淡々と事実を述べただけの様に見えるが、学生の渡中に熱い思いを寄せる心底が窺われる。

　そして、句の区切りを「、」で切っている事より明らかな様に、出句と落句で一意を形成している。起と承は学生たちがと交流した三っの大学をいっている。転句は帰国してからの回想である。「蘇夢」でそれがわかる。合句では交流の成果に到る。景を写してその中に情を秘ませる手法。

　　　　　　江戸開府四百年　　　千葉県　高橋香雪
　　四百年前根拠不流血革命，江戸（現在的東京）新政府被樹立。今年新政府樹立四百年是紀年的年。
　　列強覇業迫嚴宸，幕府羣僚多後塵。
　　忠勇幾人文與武，繁栄首府値佳辰。

　この作品は詠史、女性にしては珍しい作品である。女性の作品は感情的な一面に傾き易いのに、俯瞰的な見方をしている。西欧列強が迫りくる現実と、その対応に苦慮する幕府、意欲をなくした官吏。忠勇と云っても日本国民に対する忠勇である。武人も文人も日本国民の為に力を合わせた。この作品の中で転句の忠勇幾人文與武は、程よく意を転換し然も合句に良く馴染んでいる。

　　　　　世界遺産紀行　　　　　東京都　池田耕堂
　　　　　小便小僧　　古体
　　官庁広場是何人，市民旅客兩為隣。
　　小僧銅像向誰語，尽日來参一世珍。
　　急迫難事最上策，童子散尿葬戦塵。
　　全球婦女周知事，自豪小鶏実可愛。

　台座の上で小便をしている「小便小僧」を詠っている。ただ此を正面から写したのでは面白くない。この作品は視点を変えて、ｵﾁﾝﾁﾝを誇らしげに此方に向ける少年の情景に視点を合わせた。

　起聯頷聯は観光地の様子。頸聯でこの銅像の由縁。起聯頷聯頸聯までが起承で、合聯の出句が転句、合聯の落句が合句と成る。

　世界中の女性に見られて仕舞ったよ！可愛いｵﾁﾝﾁﾝ。中々面白い作品である。

　　　　　頌辞　吉田良治君　 神奈川県　山田鈍耕
　　吉祥家運不忘先，
　　田園豊熟子孫賢。
　　良妻修医芳姿好，
　　治績無彊萬古傳。

　蔵頭格は応酬の典型である。読んで呉れる人は漢詩に堪能とは限らない。疎縁の確率が高い。貰った人が喜ぶ事が最大の条件で、殊に奥さんを褒める事は効率的だ！

　褒めの条件を満たしている。吉祥家運、先祖を忘れないと謂い、田園豊熟とは稔り多く、子孫は賢い。美人の奥さんを褒め、奥さんの業績は広く永く萬古傳で結んでいる。易しく読めて然も重厚、貰って喜ばない人は居ないだろう。

　　　　　花間踏狗糞 東京都　石倉鮟鱇
　　人肥狗痩共春風，散歩櫻雲飛雪中。
　　樗散行吟頻踏糞，山妻責過去年同。

　犬の糞を踏むとは面白い視点だ！犬に糞をさせる為に散歩に連れ出す人が多いと聞く。だが現実は成る程犬は痩せたが人は肥っている。しかしこれは反訓にとれないこともない。

　作者はこういいたかったのだろう。人の心は痩せ、犬は肥ると。起句で荒廃した人心を写し、承句で、それを自覚しない民衆を写す。転句では、雅な心とひどい災難。どちらも持ち合わせている自業。山妻責過去年同で、奥さんが目を覚まさしてくれる。ハッと自覚する様は言い得て妙である。何処の奥さんも偉い！「去年同」に余韻がある。

　　　　　雨中観桜　　　　神奈川県　萩原艸禾
　　浅紅朶朶漸将斎，雅客両三花雨堤。
　　坐覚香雲如我懶，道傍嫋嫋一枝低。

　薄紅色の桜、花雨というから、満開をすぎた時期であろう。この花雨が転句合句と密接な関係を持つ。もし三分咲きだったら、転合と齟齬することになる。

　この川土手の、散り花の桜と自分の姿を重ね合わせ、即ち人生の盛りを過ぎた自分に似ているという。道端でくたびれているじゃあないか！そこに諧謔がある。

曄歌　　　　　　　東京都　石塚梨雲
　　独試翰。墨香脈脈，染清寒。
　　　
　心を落ち着けて筆を握れば、心地よい墨の香りが辺りに漂う。恐らく冬であろう、墨の香りで心は洗われ寒さで心は引き締まる。一墨、紙を染める。

　　万古同。一杯一笑，五雲中。

　昔から酒は百薬の長。一人か？二人か？談笑して心朗らかにすれば、心は和らぎ極楽気分。

　　　　　曄歌　　　東京都　門馬清明
　　揮酔筆，月落花塵。涙痕新。

　ほろ酔い加減で詩箋に向かっているのだろうか？月落花塵とは、共に盛りを過ぎた事を言っている。涙痕新、つい涙が出てしまう。

　涙は数年前に亡くしたご主人を思ったのだろうか。だが誰しも盛りを過ぎると急に侘びしくなるものだ。詩歌に携わると殊にその感が深くなる。

　　　　　坤歌 東京都　門馬清明
　　柴門閉，不知俗塵。守一貧。

　誰しもこういう生き方をしたいと思うが、実は余程の余裕がないと、俗塵に係わらずに、ひっそりと門を閉じて一貧を守る生活は、中々難しい。人生後半を過ぎたら、こういう境地に到りたいものだ。

　　　　　偲歌二首　　千葉県　秋山北魚
　　日々帯緩，恋情更濃。粉顔枕涕，開鏡慵。

　女性が恋に窶れる表現に日々帯緩が有る。恋いに悩んで食事も喉を通らず痩せてしまう表現だ！涙に枕をぬらし、鏡を覘くのが物憂い。恋とはこんなにも身を焦がすのか？好かれた男が羨ましい。

　　客床三日，寒帷空薫。静燃心火，夜縫裙。

　宿で三日も待っているのに未だ顔を見せてくれない。恋情抑えがたく、夜も眠れない。「着てはくれないセーターを・・・・・」名唱『冬の宿』の世界だ。

　　　　　　曄歌・観桜二首　　　千葉県　布川五雲
　　聴鶯聲。一枝魁春，湧詩情。

　何処で鳴くのか鶯の声。庭先の梅か？或いは盆栽の梅か？一枝春に先駆けて花を開く。詩心に疎い者でもこの時ばかりは詩心が湧いてくる。

　　恋花時。酔人山月，酒一巵。

　花を愛でる時未だ日暮れは早く、夜は薄寒さが残る。月は山陰に掛かり一層の興趣をもたらす。月見酒と洒落込むか。




吟社の窗
▼一昨年、林岫先生ご来日のとき、2004年北京で葛飾吟社創立20周年記念大会をやろうというご発言がありました。その後SARSや鳥インフルエンザなどもあり、暫く様子を見てきましたが、大勢に影響のある話ではないようです。そこで９月後半の開催実現を目指して、北京側と交渉に入りました。成都か洛陽あたりの訪問を加えて、北京での祝賀交流を行いたいと考えています。５月から８月までの間にアンソロジーも編纂する積もりです。宜しくご協力をお願いします。

▼「梨雲」の詩は玉石混淆ですが兎に角個性豊かです。自作だけでなく詩友の作も大いに読んでみてください。陳興さんのような中国人留学生が反応するのも個性があるからだと思われます。４月号に「陳興さんの詩を回って」の一文を載せたところ陳さんから次の詩が寄せられました。
　贈今翁 陳興
　葉公帰去一年多、 葉公帰り去って　一年多、
　晩輩陳興曾有歌。 晩輩の陳興　曾て歌有り。
　詩使何曾寂漠詠、 詩　何ぞ曾て寂漠を詠わしめしに、
　今翁又有論如何。 今翁又有りて　論ずるや如何。

　注に葉公は湖北の詩人葉先生、陳興忘年詩友とあります。陳興さんが詩友と別れ新しい詩友を求めていた理由が解ってきました。そこでこんな詩を次韻して送りました。

　陳氏詠吟想国多、 陳氏の詠吟　国を想うこと多く、
　誰忘寂寞月円歌。 誰か忘れん　寂寞　月円きの歌を。
　曾居我又椰蕉地、 曾て居す　我れ又　椰蕉の地、
　不託詩情情託何？ 詩情に託さずして　情何に託す？

▼４月東京例会に来た松川明菜さんが、更に吉野まやさん、桑山ゆいさんを紹介したいとのことです。若い詩友候補たちを応援しましょう。(莵)

六月號

詩

　　　　　　留日感懐八首　　　　東京都　金中
　　　　　　　　　一
　　去國猶吟老杜詩，懐郷可誦子瞻詞。
　　偏経風雨蒼茫日，正是男児搏撃時。
　　学府求知晨出早，勤工渉世夜帰遅。
　　恍如飛縦藍外天，雲海深深入夢恩。

　　　　　　　　　二
　　域外方知魯迅哀，百年学士復重来。
　　白圭甘願還盟主，青史豈容成劫灰。
　　冬日戦場斉吶喊，春晨原野独徘徊。
　　今人欲法先師績，亦是風騒磊落才！

　　　　　　　　　三
　　悠悠万里大江浮，還歳千年社稷優。
　　物実風潮方漸起，拝金利欲正横流。
　　明朝國運孰賢握? 昔日栄光何処求?
　　独立蒼茫瀛海外，依依注目望神州。

　　　　　　　　　四
　　英才本自出寒門，心沐柔陽倍感温。
　　窮達不分懐旧土，沈浮豈敢忘原根？
　　高歌動地抒郷思，長嘯驚天喚國魂。
　　安得揚鞭揮駿馬，奔馳塞外大高原。

　　　　　　　　　五
　　君中愛神霊矢無? 痴情但覚女郎□。　　□＝[女朱]
　　胸懐澎湃殷紅血，心意分明莽黒奴。
　　奔放詩魂游五岳，依稀春夢到三呉。
　　導邦丈室蕭然壁，高挂雄鶏大版図。

　　　　　　　　　六
　　依依何日会嬋娟，一別□陵猶未還。　　□＝[シ覇]
　　儀態婀娜達詩禮，容顔秀媚似山川。
　　黛眉愈鎖清朝暮，褐帯漸寛長夜天。
　　切切情懐知幾許? 與君相愛五千年。

　　　　　　　　　七
　　浩澣神州魂夢牽，悠悠青史訴庄厳。
　　衰危歴劫悲時月，興盛図強新紀年。
　　赤子豪情搏風浪，匹夫壮志越山巓。
　　邁開奮勇堅実歩，祖国未来扛在肩。

　　　　　　　　　八
　　天際浮雲伴月光，問君何事倍奔忙。
　　愚如北国高原闊，泪比東瀛梅雨長。
　　搏愛芳心懐孔孟，崢�ｴ傲骨刻炎黄。
　　身経磨煉功成日，欲献明珠報女郎。

　　　　　五月二十三日白日夢　故郷帰路　　　千葉県　陳興
　　万石誰家大屋基，乱猶有序我遙思。
　　屋高天下驚神斧，乃是屋基承載之。

　　　　　　比興　　　　　　　　　千葉県　陳興
　　本為丹青欲成就，誰知転入比興来。
　　唐風宋露教餐飲，堅信鉄花迎我開。

　　　　　龍潭篇　　　　　　　　千葉県　陳興
　　少年聞道龍潭険，従此未曾親自臨。
　　早有冤魂石沈底，長無惧意客来新。
　　清泉一束聊為瀑，老樹千株称作林。
　　那里深深通大海，這邊四季只陰陰。

　　　　　留学日本満三載、題一首、遣懐　　千葉県　陳興
　　又見秋風似旧識、白雲明月如秋色。
　　争求雁塔一朝名、誰念龍標千里謫。
　　碧水悠長恨久流、青山重疊愁堆積。
　　雨中灯下写詩人、今夕君知是何夕？

　　　　　秋虫賦　　　　　　　　千葉県　陳興
　　多情之秋，秋虫切切。紛擾我心，白雲遮月。
　　若論塵世，若吐心声。曲高和寡，一片虫鳴。
　　晩霞如火，霎時成灰。繁星依旧，万戸灯輝。
　　曲径幽深，清芬如霧。不知花名，但将心許。

　　階前的"山野草"和牡丹　千葉県　中山逍雀
　　階庭四月養花天，留客酌茶述竝肩。
　　野草千叢香蕊畳，牡丹幾株玉魂眠。
　　何恨緑雨唯一日，偏惜紅苞僅數天。
　　大胆謙虚還寿命，紛紛狼藉受風旋。

　　　　　払曉訪"河津櫻"　　　千葉県　中山逍雀
　　黎明一路訪芳塵，倒酒偸閑事皆眞。
　　此刻公園能養老，将来我圃再怡醇。
　　植苗灌水青年意，割草施肥白髪身。
　　百歳邯鄲只一夢，紅雲香雪為誰春。

　　　　　五月的"吉高之大櫻" 千葉県　中山逍雀
　　疇邊坐鎮復芳辰，四月櫻雲人更人。
　　游客歓芳誰惜別，農夫割草自成隣。
　　黙聴樹下青青聲，仰見枝頭蒼蒼旻。
　　累代慈心三百歳，開花落葉任天眞。

　　 　　　孟夏雑詠 　千葉県　今田莵庵
　　一『金中留日詩作集』読後有感
　　西安青雲学徒詩，幾多読忽付箋施。
　　歌嘉嵐峡恩来韻，身倣女郎沫若痴。
　　遠訪扶桑究古代，久離禹域懐東籬。
　　騒人令覚青春刻，蘇活老生燈下遅。

　　　　二　五月八日大学生松川明菜，
　　　　　　吉野摩耶両嬢訪葛飾吟社
　　読詩俄起恋花心，朋友相呼訪竹林。
　　古老互論驚浅学，喧喧諤諤近青襟。

　　　　三　葵祭馬狂奔古都
　　祭行馬奔何撞車，鬱塞探因争政譁。
　　国会年金謗不納，最勝不納是自家。

　　　　四　五月十七日、五十一期成城小学校藤波会于鎌倉皇子飯店
　　先生臨会頗尋常，九十五齢維健康。
　　丘上餐堂望潮海，門生不語我身霜。

　　　　五　五月廿日、七十五周年記念第一美術展優秀賞受賞葛飾吟社友多数来臨
　　披陳画展市井娯，七十五年齢我倶。
　　秀賞無端酬余藝，騒人忝慮励前途。

　　　　六　五月三十日三女子大学生参観第一美術展。蔵頭格三首
　　　　　　寄吉野摩耶嬢
　　吉人漢語屡為詩、野菊芳香時誘詞。
　　摩頂憂時心不乱、耶嬢役役育佳姿。

　　　　　　寄松川明菜嬢
　　松濤何異日中丘、川響同聞両国鴎。
　　明朗佳人加雅韻、菜根更読識風流。

　　　　　　寄桑山由比嬢
　　桑麻交誼得団欒、山郭浜楼懐累餐。
　　由旅容姿加麗色、比肩朋友啓心肝。

　　　　七　六月四日臨米持禎子個展于銀座麻里王朝日画廊（蔵頭格）
　　米旨魚鮮転眼更，持難空腹入厨房。
　　禎人作雅身辺具，子女相扶業不妨。

　　　　風邪沈綿三吟　　千葉県　干田 旭翠
　　　　　　　　　一
　　經雨残桜南薫渡，留花暁夢却愁春。
　　沈綿十日風寒疾，薬餌無効慵弄。

　　　　　　　　　二
　　黄昏発熱獨長吁，重被衰駆汗侵膚。
　　窗外薔薇和乳燕，鏡中抱疾数茎鬚。

　　　　　　　　　三
　　北去南来壮健誇，何知衰病一重紗。
　　欲問嬉遊空欹枕，漾緑薫風信息遐。

　　　　　送　別　　　　　　　　吉野摩耶
　　五月朝朝雲脚垂，在中親友照相思。
　　方知歳月如風去，君更加才發妙姿。
　　　　　註："中"是謂中華人民共和国

　偶　成　　　　　　　　東京都　田村星舟
　　東風吹酔面，歩自任所之。
　　歳歳花相似，紅紅千萬枝。

　　聴探戈舞曲的演奏　　　東京都　田村星舟
　　探戈舞曲劇場中，"月下的蘭"和"黒瞳"。
　　回顧青春之不返，倶聴傍晩惜歌終。

　　　　　百済観音　　　　　　　東京都　田村星舟
　　柔交天衣膝部邊，観音纖佇一欄前。
　　應知妖亦幽愁貌，再訪"斑鳩"思入玄。

　　　　　看　花　　　　　　　　　東京都　田村星舟
　　芳塵靉靉又多風，白白天葩萬萬層。
　　借問中華有桜樹，宴遊老若路東西。

　　　　　雨中新緑　　　　　　　東京都　齋　游子
　　残紅委地雨蕭蕭，坐怕軽寒転寂寥。
　　可識濛濛蒹鬱鬱，疎籬嫩竹向人驕。


　　　　　詠沖縄戦六首　　　　　　東京都　齋　游子
　　　　　訪沖縄首里城
　盡心經歳理荒城，昔日芳姿復活成。
　勿問王孫何処在，黙懐守禮海天晴。

　　　　　訪摩文仁丘拝和平之礎
　　萬里碧波煙靄中，誌碑臨海愴丹哀。
　　島民曽遭酸難日，兵火今還砂礫風。

　　　　　寄姫百合女子学徒隊
　　青襟女子土中人，看護傷兵夕達晨。
　　偏惜故山灰滅處，紅顔素手入胸新。

　　　　　寄海軍司令部壕跡
　　地下海兵難有眠，空嘆空腹與空拳。
　　不如指令乞降伏，草上偕横仰九天。

　　　　　巡沖縄南部戦線跡想往事
　　敵襲呼雲蔽海来，弾丸百萬吼如雷。
　　軍民食乏兵戈劣，山野風腥死体堆。
　　殉国青襟名不朽，落花紅雨艱難裁。
　　傷心欲問戦争理，鬼哭啾啾白日頽。

　　　　　沖縄海濱偶成
　　平波浩蕩望茫洋，年少浮泅水一方。
　　游子忘憂松籟裏，與妻拾貝晩風涼。


　　　　　　春暁偶成　　　　　　　東京都　齋　游子
　　春暁鳥啼人易驚，時聞"送報"發車聲。
　　偸安老大暖衾裏，忽想愚孫遊学檠。

　　　　　　陋屋新緑　　　　　　　東京都　齋　游子
　　陋屋晴明帯薄寒，薫風満肚漸成歓。
　　尖風一陣侵窗入，花笑緑肥春漫漫。

　　　　　　緑陰読書　　　　　　　東京都　芋川冬扇
　　孤吟眠不得，堆書坐南軒。
　　暁日侵窗入，朝来浄六根。

　　　　　　夏夜舟行　　　　　　　東京都　芋川冬扇
　　江上清風爽，浮船酌且歌。
　　流蛍添客恨，揺扇仰銀河。

　　　　　　　聞　鵑　　　　　　　　東京都　芋川冬扇
　　窗前春已去，暗夜欹枕聴。
　　杜宇聲聲切，孤眠夢幾醒。

　　　　　　　新緑山寺　　　　　　　東京都　芋川冬扇
　　葉葉青山下，白雲物外天。
　　呆然禅寂境，詩興恰如仙。

　　　　　　"新宿御苑"初夏　　　神奈川県　萩原艸禾
　　公園遠近楽欽音，幼趁晴光老息陰。
　　何厭出遊花散後，淡濃翠色溢芳林。

　　　　　　　弔　亡　　　　　　　 神奈川県　山田鈍耕
　　順耳興業机杖賢，年々矍鑠不知痊。
　　應驚夜半櫻花散，米寿直前赴九泉。

　　　　　　　偶　題　　　　　　　 北海道　宮本英函
　　　　　　　　　一
　　漢詩骨法惑多岐，短歌詩情誰不知。
　　数有観桜只珍賞，自国文化竟何之。

　　　　　　　　　二
　　美国都門弄萬功，辺境城市満痩蓬。
　　可知水魚多憂慮，日日生命任誰翁。

　　　　　　　　　三
　　明眸皓歯坐中香，才色兼備又摘章。
　　誰謂同穴夢物語，男子獨夢桃源郷。

　　　　　　　　　四
　　梅花雨中得春先，桜花天下伴婦妍。
　　唯有花花開又散，飲酒造句背花眠。

　　　　　游覧故宮　　　　　　　東京都　池田耕堂
　　天安門外望遼然，紫禁城中楼閣連。
　　正殿豪奢思不已，内廷絢爛愕無辺。
　　官人十萬常争覇，美女三千互競妍。
　　術数権謀昔時夢，現今遊客玉楼旋。

　　　　　　明十三陵　　　　　　　東京都　池田耕堂
　　石人石獣連神路，廟社陵門遙渺茫。
　　帝墓豪奢擬宮殿，明楼華麗似高堂。
　　生前雖自極権勢，死後何期辿喪亡。
　　強大明朝名不朽，如今群衆楽観光。

　　　　　　慶　州　　　　　　　　東京都　池田耕堂
　　新羅首府遍黎元，古代風情今尚存。
　　吐含山中臨石窟，無双仏像正清尊。

　山内純子女士高雅（頭藏格）　　東京都　石倉鮟鱇
山高碧落二条雲，
内美飛天翻袖勤。
純篤精心微笑處，
子來民庶自爲群。
　　（註）山内純子女士是飛機服務員的最高幹部也

　題山本衛士先生的現代彫刻作品"自從天空向都市"　　東京都　石倉鮟鱇
　　耀靈澄景古来同，競聳高樓当代榮。
　　更有緑陰鋼鏡映，尖端藝術剪天空。（普韵十八東）


題山本衛士先生的現代彫刻作品"倒金字塔−革命的噴水"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　天倒王權天水噴，梯田蒼潤映白雲。
　　流如美酒浮光處，人壽年豐思欲醺。（普韵十五痕）

題山本衛士先生的現代彫刻作品"人類標准原器−男与女（？）"東京都　石倉鮟鱇
　　地藏原器鑄諸人，天下無涯掀世塵。
　　同願和平誓博愛，并肩男女痩身伸。（普韵十五痕）

　　　　　初夏山行　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　青春歸昨梦，朱夏擧新烽。花散嶺雲涌，緑肥風氣濃。
　　樹林繁鬱鬱，谿澗水淙淙。飛瀑濛濛雨，閑情落落胸。
　　笑裁詩一首，欲飲酒千鍾。養性烟霞癖，佯仙文士宗。
　　無言白頭歩，悦目翠峰重。回首仰山頂，登高倚老松。
　　日輪輝燦燦，華髪薄鬆鬆。愚叟疲勞早，幽禽啼斷慵。
　　游魂迷反路，探勝忘中庸。

　　　　　蟻軍襲青虫　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　童心殘酷抓青虫，投与蟻軍前進中。
　　一命可憐翻滾處，紫陽花發晝無風。

　　　　　醉梦桃源　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　醉逢仙女飲還飲，笑蕩玉脣吟復吟。
　　羽客千年如一日，賞花玩月梦沈沈。

　　　　　老來多病（打油）　　　東京都　石倉鮟鱇
　　尼采梅毒我頭痛，近年妻子訴腰痛。
　　隣家醉叟痛風疼，老去無牙無劇痛。
　　　　　（註）尼采：徳國哲學者Nietzhe

新短歌

　　　　　曄歌五首　初蛙　　　千葉県　中山逍雀
　　追憶時。始発月臺，青蛙兒。
　　掃落葉。跳出青蛙，驚麻雀。
　　蛙合唱。母子語舊，青草上。
　　雨露滋。道謝蛙聲，山中池。
　　遠蛙聲。二部合唱，近蛙聲。

　曄歌二首　　　　　　東京都　門馬清明
　　鳥陰天。旅游心理，馬路邊。
　　鳥曇り　バス路に立てば　旅心

　　　　　到「鳥陰天」的季節，我天空的鳥那様地，想去旅行成。
　　　　　（注）「鳥陰天」是俳句的表示季節詞。候鳥返回故郷的季節。候鳥返回故郷的季節，陰天多。

　　調勤暁。送行出門，百千鳥。
　　転勤の門出を送る百千鳥

　　　　調勤工作的早晨，送丈夫的我的心非常寂寞。門前，很多的小鳥啼在，小鳥們與我一起也参加着送別。因此，很多的小鳥的多嘴饒舌聲，給使之温和起來我心。
　　　　　（注）「百千鳥」是俳句的表示季節詞。很多的小鳥囀謂現在做聴見的季節。新緑的季節，很多的小鳥囀能聴。

曄歌三首　　　　　　東京都　田村星舟

　　春気冷，"五頭"連山，暮雲還。
　　雨絲中，落花委地，古梵宮。
　　爾姿妍。玉荷矗矗，欣向天。

　　　　　偲歌・讀"菜根譚"借句三首　
　　　　　　　　　　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　一時寂寞，萬古凄涼。養徳物外欲疎狂。
　　擺脱俗情，減除物累，人游仙境知風致。
　　面前田地，身後恵澤。醉聽古人説道徳。（普韵）

　　　　　　　偲歌・花底閑吟　　　　　　東京都　石倉鮟鱇

　　適情緩飲，乗興微吟，花底擬唐誇詩品。

　　　　　　　漢俳・病室有珍事　　　　東京都　石倉鮟鱇

　　今天有珍事，山田鈴木佐藤來。明旦逝蓬莱?
　　　　　　(註) 山田，鈴木和佐藤是在日本很多的名字也。

　　　　　　　漢俳・場崎孝先生高雅　　　東京都　石倉鮟鱇
　　　　　　　　　　（頭藏格・打油）
　　　場屋有歌声。崎嶇人路起春風，孝烏反哺鳴。
　　　　　　(註)　場崎先生是日本業余歌劇壇的首屈一指的人。

　　　　　　漢俳・邪加多男声合唱団泊函嶺高原飯店
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　千葉県　今田莵庵
　　合唱到深更。聴過一夜巣中褥、迎朝競詠鴬。
　　暁色染山巓。倚窗昨夜高歌舎、噴煙緩登天。
　　旭光躑躅中。払暁高原開幕色、一樹映山紅。

　　　　　五七律・新宿御苑初夏　　神奈川県　萩原艸禾

　　公園細草伸，遠近楽欣音。
　　子狗跳陽照，老人息樹陰。
　　何譲出遊花散後，淡濃翠色溢芳林。

言論筆譚

　　　　　　　　　　　　　山田鈍耕小論 　　　　　　　　　　　　　今田 述

　「梨雲」の詩詞を見て行くと個性的な作品が多いのに驚く。山田鈍耕さんもその一人である。作品を通読すれば鈍耕さんがどういう人物であるか解る。故郷の新潟を愛していること、世俗世界の不条理に遺憾を述べるよりも退職後の人生を満喫していること、家族を大切にしていること、詩作と絵画と釣りをエンジョーイしていること等が作品から窺える。通読した読者は作者を知らなくても、きっと人間性豊かな人物像を想像できるだろう。
　だが時として人生の艱難をふり返ることもある。中味は深いがはったりのない性格は、サラリーマン世界で何時も順風満帆だったわけではなかったであろう。直接詠われてこそいないが、何かに仮託したペーソスが片々とした詩情となって随所に現れる。

　　　塩引鮭

　　海角回游遡急流， 　　海角回游して　急流を遡り、
　　匆匆産卵復何求。 　　匆匆として産卵し　復何をか求む。
　　少年負笈離家久， 　　少年笈を負いて家を離れて久しく、
　　歳暮共鮭憶故丘。　　　歳暮鮭と共に故丘を憶う。

　塩鮭を見てその一生を自分の人生と比較している。恐らくふり返ると青雲の志と大きな隔たりがあったのであろう。その気持ちは次の詩を見ると一層強くなってくる。

　　　　　　"自分史"即感

　　辞職回頭緬変遷， 　　　辞職に頭を回らせば　緬たり変遷，
　　褒誉毀貶転騒然。 　　　褒誉毀貶　転た騒然。
　　心頭翼翼迂愚甚， 　　　心頭翼翼として　愚を迂るや甚し，
　　日日余生小洞天。 　　　日日の余生　小洞天。


　「自分史」の流行を、悲しむべきか喜ぶべきか？ いささか自慰の流行という気もする。むしろ作者が詠詩に喜びを見出したことは幸運だったといえるだろう。
鈍耕写景の詩も決して単なる写生ではない。日本人は得てして見える風景を羅列したものを漢詩だと思っているが、旅行パンフレットみたいな詩が人に訴えるわけはない。人情が風景に滲み込んでいって初めて詩情となる。

　　　　　　酒田山居倉庫

　　庄内米穀在双肩， 　　　庄内の米穀　双肩に在り，
　　最上川沿土倉連。 　　　最上川沿　土倉連なる。
　　簫瑟秋風吹欅木，　　 　簫瑟の秋風　欅木を吹き，
　　映瞼帆影碧風漣。 　　　瞼に映ゆ　帆影　碧風の漣。

　酒田は最上川河口であり、幕府直轄地の庄内米はここの倉庫に貯蔵され日本海から瀬戸内海を回って江戸の蔵前に運ばれた。倉庫は今でも残され使われている。欅を吹く秋風が笛を吹くと瞼には往年の帆影が見えてくる。ここにも作者の情念が込められている。
鈍耕ジャンルの一つは、魚を主題とした詩だ。冒頭の鮭もそうだが、『金目鯛嘆息』の三連作の独創は読者を唖然とさせた。爾来吟社では金目鯛先生と呼ばれている。

　　　　　　その三。

　　漁撈猟物富春秋， 　　　漁撈の猟物　春秋を富ませ，
　　艶艶壮身燦両眸。 　　　艶艶たる壮身　燦たり両眸。
　　欲貢烹何為画餅， 　　　烹るに貢がんと欲っするを何ぞ画餅と為し，
　　嵌框飾壁恨愁愁。 　　　框を嵌め壁に飾れる　恨みは愁愁。

　その二で、金目鯛を釣った作者は、あまりの美しさにすぐ食べるのは勿体ないと、これを画に描いたのである。すると金目鯛が美味しく煮て貰おうと思っていたのに、画にして額に入れた作者を恨んでいるというのである。確かに奇抜だが、よく味わうとこれも釣と油絵に趣味を持つ作者の暖かい人間性の発露なのである。

　鈍耕もう一つのジャンルとして、故郷新潟を詠んだ作品群がある。

　　　　　越後闘牛

　　角突煙塵響鈍音， 　　　角突の煙塵　鈍音を響かせ，
　　堂堂勝敗見天心。 　　　堂堂の勝敗　天心に見る。
　　應看勢子挙聲喚， 　　　應に看る　勢子　聲喚を挙げ，
　　日日艱難抵萬金。 　　　日日　艱難　萬金を抵てるを。

　これは実に活き活きと闘牛を捉えている。円形競技場の中心で巨牛が煙塵をあげて勝敗を争う。勢子は大声をあげて応援する。毎日苦労して育て上げ大金を掛ける。杜甫『春望』放浪の末の「家書抵萬金」に比べれば、遊びとはいえ艱難には違いない。
母が亡くなり作者は納骨のため故郷柏崎を訪れる。作者の本家"奈良屋市川"は民謡"三階節"に出てくる名門だという。近時天皇が行幸になった話を聞いて感銘にふける。

　　　　　去為了安放骨灰到我故郷"柏崎"

　　閻魔両拝忽塵腸， 　　　　閻魔両拝すれば　忽ち塵腸，
　　"民謡三階"即故郷。 　　　"民謡三階"　即ち故郷。
　　村市偶聴行幸譽， 　　　　村市　偶たま聴く　行幸の譽，
　　墓門只有篆煙香。 　　　　墓門　只有り　篆煙の香。

　そして家族愛。『学習塾』では夜更けまで勉強している孫娘の書燈に無言のエールを送る。

　　　　　学習塾

　　稚気孫娘學熟通， 　　　稚気の孫娘　學熟通い，
　　浮沈席次琢磨功。 　　　浮沈の席次　琢磨の功。
　　何憐父母猶多夢， 　　　何ぞ父母の猶多き夢を憐み，
　　深夜書燈亦小忠。 　　　深夜の書燈　亦　小さき忠。

　　　　　　　　作品を読んで　　　　　　　　中山逍雀

　添削には出来る作品と出来ない作品があります。詩詞作品は、作者の意思表示手段ですから、添削者は作者の意志を効率よく読者に伝える手法を伝授する為に、文字を書き換えてその一例を示すのです。更に源玉から離れないように、出来るだけ書き換える文字を少なくします。ですから、文字を書き換えられた作品は、幾つもある方法の中の一つの結果に過ぎないのです。
　添削を受けた作品は必ず再度筆を入れなければ成りません。そうしないと自分の作品に成りませんし、その手法を感得出来ません。添削が出来ない作品とは、何を言っているのか解らない作品と、何も言っていない作品です。もしこれに筆を入れますと、添削者の意志が住み着いてしまい、原作者の作品ではなくなってしまいます。

　　　　　　　風邪沈綿　　某氏

　　北去南来壮健誇，何知衰病一重紗。
　　欲問嬉遊空欹枕，漾緑薫風信息遐。

評：この作品には、前側の句意を継がずに、転換されている句が、第二句と第三句の二カ所有る。

評：この作品を添削して、作者の意志を読者に伝えやすくするには、二通り有る。即ち第一句を起承として、第二句を転句とし、三四句を合句にする方法と、各句を起承転合に割り振って、第三句を転句にする方法である。


　　　　　　その一

　基本的な作詩法なら、第二句は第一句北去南来壮健誇，の意を継がなければならないのに、第二句は何知衰病一重紗。と意を転換しています。先ず、単に文字の変更として、衰病は罹病に変更します。
　源玉の構成は、第一句；北去南来壮健誇，で起句と承句を受け持って、何知罹病一重紗。を転句にしているのである。そうすると、第三句と第四句は合句と云う事となる。然し乍ら、欲問嬉遊空欹枕，と漾緑薫風信息遐。は、互いに句意の疎通が図られていない。依って合句としては拙い。第三句を書き換えて、細雨如糸空欹枕，とすると、第四句漾緑薫風信息遐。によく馴染む。

　　　　　　風邪沈綿

　　北去南来壮健誇，　　　　　　　　　起句と承句
　　何知罹病一重紗。　　　　　　　　　転句
　　細雨如絲空欹枕，漾緑薫風信息遐。　合句

その二

　起承転合を一句ずつ割り当てる方法なら、第二句を第一句の句意を継ぐように改めればよい。構成以前の問題として第三句欲問嬉遊空欹枕が分かり難いので、第二句の一部を転用して、何知罹病空欹枕，とします。
　それでは、第二句を第一句の句意を継ぐようにします。北去南来壮健誇，に続けて、第三句の嬉遊を転用し、陽光を加えて、陽光嬉遊一重紗。とします。これなら元気な事を好い事に、暖かく成ったので薄着をしたら風邪に罹った、と云う事となります。


　　　　　風邪沈綿三吟録一

　　北去南来壮健誇，陽光嬉遊一重紗。
　　何知罹病空欹枕，漾緑薫風信息遐。

　　評：添削二例共に作品の主眼は漾緑薫風信息遐に有ります。


　　　　　「新宿御苑」初夏　五七律　　某氏

　　公園細草伸，遠近楽欽音。
　　学児跳陽照，先生息樹陰。
　　何譲出遊花散後，淡濃翠色溢芳林。

注：
１−詩題を新宿御苑に限らずに、「初夏」とした。
２−詩形を書く場合は、詩題の前に書きます。
３−学兒は日本語か或いは造語でしょう。声調も現代漢語とは違っています。
老人が子犬を連れて散歩する姿を設定しました。
４−おそらく小学生を指すであろう「学兒」に対する先生は、日本語でしょう。声調も　　現代漢語とは違っています。
５−「譲」はイ−ゆずる。ロ−責める。の意味がありますが、一般にはイの意義が用いられているので、誤解を避けるために「厭」にしました。

　　　　　三聯五七律　初夏

　　公園細草伸，遠近楽欽音。
　　子狗跳陽照，老人息樹陰。
　　何厭出遊花散後，淡濃翠色溢芳林。

評：
１−五句と六句は良く拗救が為されて居ます。
２−殆どの人は古典定形に固執しますが、新しい詩形にどしどし挑むことは、とても良い傾向と思います。勿論自分で詩形を作っても一向に差し支え無いことです。
３−起承転合の配置は
　　公園細草伸，　　　　　　　　　　　　　　　起句
　　遠近楽欽音。　　　　　　　　　　　　　　　承句
　　子狗跳陽照，老人息樹陰。　　　　　　　転句
　　何厭出遊花散後，淡濃翠色溢芳林。　合句
と成っており、良く句が案分されています。
公園細草伸，で、公園に若草が伸びると言い、徐々に若い世代に移りゆく兆しを述べて、起句としています。
遠近楽欽音。で身の回りや離れたところでは、既に世代の交代が進んでいることを述べ、承句としています。
子狗跳陽照，老人息樹陰。小狗と老人を登場させ、若者は現代の息吹を謳歌し、老人は、壮年の業績に寄りかかる。この句は興の詩法で、転句としている。
　　何厭出遊花散後，淡濃翠色溢芳林。もう盛りを過ぎた自分が、次の世代に取って代わられる、そんな状況を厭がっても居られないよ！この句は興の詩法で合句とした。

　　　　吟社の窗

▼懸案の北京訪問の日程について林岫先生が書簡を書かれたようです。現段階で到着していませんが、袁静芳さんが電話したところ、９月１９日（日）案が提案されているようです。当初案の２５日案は建国記念日準備期間に入っていて、事実上立案不能とのこと。また１８日（土）は満州事変勃発記念日で、日中のイベントには向かないだろうということです。林岫先生の書簡を待って、６月１２日の例会席上、皆様にお諮りします。

▼金中さんは１９７５年生まれ。現在東京外国語大学博士課程に留学中です。１４歳で西安交通大学に入学したという、現代中国の天才特別教育制度に乗った秀才です。近く葛飾吟社を訪問するとのことなので、事前に皆様にご紹介を兼ねて、頂いた詩集『與君相愛五千年』の中から、代表的な作品「留日感懐八首」を転載させて貰いました。

▼私事にわたって恐縮ながら、５月２０日第一美術展の第一日に中山主宰はじめ秋山、池田、萩原、三宅、田村、門馬の各先生にお出で頂き、小生の受賞作油彩『ジャワ更紗』をご覧頂きました。また後日逐次、小畑、山田、高橋諸先生に、そして最終日３０日（土）には若き友人吉野まや、松川明菜両嬢にもご参観頂きました。皆様のご好意に対して深く感謝し、紙面を借りて厚く御礼申し上げます。

▼今月から、本来のエデイター石倉鮟鱇先生に編集をお返しします。４月、５月と二ヶ月編集してみて、毎月のご苦労が忍ばれました。今後は編集子にご迷惑を掛けないように心掛けて行く所存です。（莵）