漢詩詞同人誌16年10-12　文化交流漢詩詞結社葛飾吟社

十月號

２００４年中日短詩研討会應酬　　　千葉県　中山逍雀
　　　　　歩韵劉徳有先生之漢俳
　　　　　訪碧雲寺懐孫中山先生遺徳

　　國士孫中山，
　　香爐碧雲素秋天。
　　詩繋帯水間。
　　　　　原玉：劉徳有先生漢俳"富士山"

　　東瀛望雪山，
　　渾凝白扇倒懸天。
　　瀟洒聳雲間。

　　　　　歩韵林岫女士玉作日本松島夜題松
　　鴎游地天海，浪湧緑松寒。
　　詩客吟情健，高懐擬影看。
　　　　　原玉：林岫女士"日本松島夜題松"

　　清陰覆三径，影共月光寒。
　　直干耻盤屈，加如高士看。

　　　　　歩韵李仲玉先生之詩
　　吾愁日日一嚢銭，稗販多年無縁権。
　　只喜論詩千里酒，浮世哀楽又過年。
　　　　　原玉：李仲玉先生"時風有憾"

　　笑看黄塵酷愛銭，鶏毛蒜葉亦争権。
　　如斯世道何須計，養鳥栽花度晩年。

　　　　　短歌・歩韵題出郷之圖
　　父送碧渓橋，草木山川正落潮，母有片香焼。
　　世路崢�ｴ塵事多，四十餘歳故郷遙。

　　　「送別」特別影響了我的心。
　　　　原玉：王元慶先生"短歌送別"　

　　相送別長橋，胸涌離情似晩潮，曲水映天焼。
　　孤帆落照江東去，暮雲飛渡遠空遙。


　　　　　歩韵段楽三先生之詩
　　寒村痩野鎖煙霞，垢臉離郷不返家。
　　多歳糟糠相擁坐，新亭桂月照窗紗。

　　段楽三先生之詩是非常意義深遠。與我的人生，很好地相似。我出生的家貧農貧窮。因此十六歳的時，有稍微的衣服，従都市工作里出了。
　　　　　原玉：段楽三先生"陋巷寒舎"　

　　　街貨店堂掛彩霞，巷寒深處有人家。
　　　無銭流落碼頭上，難捜一根免費紗。

　　　　　歩韵李君莉女士之詩
　　我家的戌狗是懶漢，白天平時睡着。而且到夜晩変得精神，去了夜里游玩。

　　睡醒涼風夜，離開陋屋門。足食春情盛，吃飽不思恩。
　　　　　原玉：李君莉女士"戌狗"

　　　戌時方入夜，勇敢守家門。吠擾深秋静，忠誠報主恩。
　　　　　歩韵李克英先生之詩
　　門前古梅樹，梅樹従荒村移植門前已経五十歳，也我従貧村移住已経五十歳
　　魁春一白繞門飛，痩影横斜春草菲。
　　移長風霜五十歳，鶯聲亦到不思歸。
　　　　　原玉：李克英先生"咏梅"

　　窗前風吹柳絮飛，迎春花朶散芳菲。
　　不知春訊誰家報，鉄骨英姿帯雪歸。

　　　　歩韵董□先生之詩　　□：shu4
　　仰看聳天半，眼伏去路危。
　　倦脚懐歳月，拭汗猶詩爲。
　　　　原玉：董□先生"登香炉峰"

　　鬼見猶興嘆，吾來陟険危。
　　少年豪気在，何事不能爲。

　　　　模倣王謂先生農村的暮
　　　（２００４年中日短詩研討会應酬）

　　窮野晩秋小径，
　　村童伴友對斜陽。
　　不見歸鴉隠闇墨，
　　不見農夫隠闇装。
　　寒風晒肌痩田，
　　初月照露歩長堤。
　　貧村！赤貧！
　　垢面！怱忙！
　　草陌頭，
　　一輪菊花"馬頭観世音"，
　　残香僅留草叢碑頭綱。

　　（注）馬頭観世音：役牛馬的墓地，做馬頭之形状。

　　瀛歌・和楠野自安先生玉作三月杜公祠
　　紫羅蘭。古祠未緑，少陵原。杜公墨跡，一代聖賢。

　　　中日短詩交流会素描　　千葉県　今田莵庵
　　　　　　　十三夜
　　十三夜燕京，両国詩人互呼名。五輪改築盛。

　　　　　　謝林林先生
　　老林不得臨。先生秋思托筆墨，遠客仰芳心。

　　　　　　　劉徳有先生
　　柔諭要交流。中日語言無区別，両民認識秋。

　　　　　　　孫軼青先生
　　梁楹示揮毫，短歌俳句賛高吟。客知動我心。

　　　　　　　林岫女史
　　雖不知漢語，快耳林岫韻律声。短詩游意萌。

　　　　　　　鄭民欽先生
　　和典名訳多。又加日本詩歌史，蕉翁驚網羅。

　　　　　　　段樂三先生
　　趙翁起漢俳。拡之湖南三雅客，詩宴会盟偕。

詩

　　　　　龍渓巨変　　　　　　　千葉県　中山逍雀
　　獅岩石壁截洪流，串串明珠綴晃州。
　　古渡新姿燈燦燗，上行車両下行舟。

　　　　　余生得閑　　　　　　　千葉県　中山逍雀
　　小手千金笑，双親得小安。
　　桜花迷處所，意気入心肝。
　　有志閑読書，偸時共凭欄。
　　沈心千畳閣，不慮四隣欒。
　　免職無人識，従心談弱冠。
　　余生天地濶，莫道事時難。
　　弱冠：礼記；二十を弱と云いて冠す。
　　従心：論語；七十而従心所欲不踰矩。

　　客里吟・並送葛飾吟社代表団之北京「中日新短詩研討会」　　千葉県　陳　興
　　夜深誰未寝，客里又吟秋。
　　明月遊雲外，海天一葉舟。

　　並代中華詩詞学会迎葛飾吟社代表団　　千葉県　陳　興
　　異郷吾作客，待客故郷中。
　　酒席応周到，人生幾度逢？

　　　　　歌曲夢回唐朝　　　　　千葉県　陳　興
　　音量調高声満屋，居然聯想到唐朝。
　　挙杯忘我愁如酒，避世夢天詩作橋。
　　重色玄宗能諒否；痴情武後若謀消？
　　今人歌曲無多意，為博台前一瞬豪。

　　　　　無　　題　　　　　　　東京都　金　中
　　兩心盟誓永相連，火熱激情豈畏艱。
　　君在天邊亦尋取，縱隔一百憶光年。

　　　　　遊東京廸斯尼樂園"小小世界"（Small World）　　　東京都　金　中
　　萬邦布偶舞相迎，曲水輕舟次第經。
　　歡唱天眞随樂曲，身心同返十三齢。

　　　　　遊東京廸斯尼樂園"灰姑娘城堡"（Cinderella Castle） 東京都　金　中
　　遙望神馳童話郷，乳籃城堡聳輝煌。
　　感君妙語來相授，"辛黛莱拉" 灰姑娘。

　　　　　遊東京廸斯尼樂園"小木偶奇遇記"（Pinocchio's Darling Journey）　　東京都　金　中
　　回我温馨小木房，顛搖鯨腹浪他郷。
　　欣迎老父光一霎，仙女清姿立近旁。

　　　　　登北京香山 　千葉県　今田莵庵
　　香山索道上吾身，足下羊腸縷縷伸。
　　曾見李芒賀歳片，詩中歇脚正如隣。
　　(注)李芒先生１９９９年賀年片載漢歌

　　　　　登北京香山
　　　老耄跋山行，中途歇脚望雲騰。
　　　試問下来人，却道雖餘多半路，松蔭作伴只須登！

　　　戯作于碧雲寺中山記念館 　　　千葉県　今田莵庵
　　碧雲寺内祀中山，倭国中山来慰患。
　　拍照欲為随扁額，先生不許虚名頒。

　　　氷糖葫芦 　千葉県　今田莵庵
　　銀錠橋辺映水楊，香山欲見害烟長。
　　姑娘銜串葫芦実，甘口氷糖愁似忘。
　　（注）銀錠橋在北京前海与後海間。唯一可望香山地点従北京市街。
　　　　　氷糖葫芦：挿山査子実加水飴，北京民菓。

　　　　訪北京胡同 　千葉県　今田莵庵
　　黄包車旅廻胡同，変貌皇都回首濛。
　　牆上浴陽成果樹，門前把客強沽童。
　　温顔布袋鎮先祖，倒福春符貼壁朧。
　　老耄遙来遭老耄，語言不用意徐通。
（注）黄包車謂人力車。

　　　　　江西雲遊　　　　　　　千葉県　田　旭翠
　　　　洞山：逢渠橋上一徑通
　　祖庭残雨淡煙篭，翠竹繁陰一徑通。
　　浄域山川知節序，開秋的歴蓼花紅。
　　（注）洞山普利院：在江西省宜豊県同安、唐大中年間洞山 良介禅師建立洞山寺。洞山是中国曹洞宗発祥之地，釈家三大祖庭之一。

　　　　百丈山:熟新稲
　　独領先?隔俗塵，山奇水秀自清新。
　　登臨応見熟新稲，千歳猶余不食真。
　　（注）百丈寺：在江西省奉新県九嶺山脈中、唐時代百丈懷海禅師住山，"一日不作、一日不食"法語著名。亦曰"吾無徳、争合労於人？"

　　　　雲居山:山僧憐征客
　　禅院関門日夕傾，佛燈影冷草虫鳴。
　　山僧試問憐征客，薄暮開扉一片情。
　　（注）雲居山真如寺：在江西省永修県、真如禅寺是唐時代 洞山良介禅師法嗣雲居道膺禅師住山。

　　 藤王閣:繁華競遂
　　金風爽気入江西，□水要津発萬財。□＝章+各-口+貢
　　往昔繁華今競遂，方知改革大観開。
　　（注）藤王閣：在南昌市□江河畔、中国三大名楼之一。
　　　　"念往昔繁華競遂"：王安石詞"桂枝香"。

　　　　"手賀沼"散策　　　　　千葉県　高橋香雪
　　江村盛夏稲雲黄，水照紅花荷風香。
　　緬想文人吟遊集，舟行一棹傾一觴。
　　（注）手賀沼従東京付近，昭和初期。是風光明媚的偏僻的郷村。加納治五郎・柳宗悦・志賀直哉・武者小路實篤等文化人居留。現在作爲東京近郊的住宅区，被開発，與日本第一汚垢的沼沢。倒添麻煩的好意日本第一。

　　　　　処処水害有感　　　　神奈川県　萩原艸禾
　　一夜西東沛雨澆、崩崖壊屋溢流驕。
　　如何昨日旱雲下、夢想窓前簷溜跳。

　　　　　遊富士須走登山口　　神奈川県　萩原艸禾
　　景物濛濛雲海中、停○擦脚白頭翁。○＝筑-凡+郎-良
　　模糊漸現少年影、山頂征来意気隆。

　　　　　船上看芦湖煙火　　　神奈川県　萩原艸禾
　　火樹散星紅亦黄、傘花変幻圧帆檣。
　　不図俯看平湖闇、灯燭縦横軽舸忙。

　　　　　秋夜偶題　　　　　　　埼玉県　芋川冬扇
　　此夕菊花酒，金風月半沈。
　　獨坐聞蟲語，喞喞固無心。

　　　　　秋日田家　　　　　　　埼玉県　芋川冬扇
　　柿熟村村静，人無探句行。
　　鴉歸燈影淡，緩歩遠鐘聲。

　　　　　初秋吟　　　　　　　　埼玉県　芋川冬扇
　　陋屋梧桐雨，階前凉有餘。
　　蟲聲魂欲醒，星影一心虚。

　　　　　蔵頭格　中柴光泰先生祝賀百歳　　　　東京都　田村星舟
　　中秋玉兎亦安然，柴戸逃名歳月遷。
　　光闡"愚庵"塵事少，泰而不傲此心専。
　　　（注）論語有言；泰而不驕

　　　　　于納涼舞大会観"和太鼓"的調演　　　東京都　田村星舟
　　耿耿提灯樹下宜，踊圏老若不知疲。
　　一襟涼気含秋拡，百里暖風吹臉移。
　　"茶髪"青年商玩具，紅衫童女買錦飴。
　　可看連打桴跳舞，太鼓咆哮月満時。

　　　　　蝴　蝶　　　　　　　　東京都　田村星舟
　　柚花払雫愈清妍，雨後揺揺群葉鮮。
　　触指青虫伸角怒，驚慌遅緩隠葩前。
　　落砂黒糞散風転，隠見微茫埋草邊。
　　白髪方迷蝴蝶夢，徒行四季只重年。（隔句対）

　　　　　初秋晴旦　　　　　　　東京都　齋　游子
　　晴旦徘徊踏露華，百花"百合"轉横斜。
　　誰憐狼藉暴風跡，却怪幽庭野趣加。

　　　　　敗戰記念日經雨涼到　　東京都　齋　游子
　　暑威猶酷孟秋街，風雨一宵叮小齋。
　　大戰投戈六旬歳，新晴案句驟涼佳。

　寄於雅典五輪大會日本年少選手之活躍書感　　東京都　齋　游子
　　數擧功名年少身，練磨技倆又精神。
　　誰言後輩値憂處，笑倒老來無恥人。

　　　　　萬座温泉　四首之中二首
　　　　　偶　成　　　　　　　　東京都　齋　游子
　　衰老出城殘暑時，山中靜穏雨如絲。
　　温泉水溢硫黄滑，僻地風涼嵐翠奇。
　　天籟囁芒如語古，流鶯弄舌坐催詩。
　　雲邊三日欲歸宅，游客依依奈別離。

　　　　　燕　子　　　　　　　　東京都　齋　游子
　　衰翁脱暑到山邊，燕子不圖随意翩。
　　朝上蒼穹喃矮竹，衝風如杼頡頏鮮。
　　暮低緑沼親芳草，掠水追蟲來往全。
　　孰想營營玄鳥苦，苦勞無盡是何縁。

　　　　　　紀伊巡礼 　東京都　池田耕堂
　　　　　其一　室生寺
　　靈場創建千三百，信仰隆昌猶未休。
　　素朴金堂尊像麗，新装朱塔老杉幽。
　　瓊花競艶薫風裏，楓葉如燃霜降秋。
　　遮断俗塵林壑静，"女人高野"足忘憂。

　　　　　其二　高野山
　　群山窈窕白雲郷，"空海"開基爲道場。
　　雄大主堂清境寂，荘厳"御廟"感懐長。
　　緑苔石塔連参道，青靄巨杉囲仏堂。
　　歴代天皇屡行幸，法灯千載照多方。

　　　　　其三　熊野本宮
　　本宮従古在中洲，近代遷移鎮聖丘。
　　桧葺神祠真壮麗，老杉境内正清幽。
　"烏"導"帝"卒東征祐，"尊"奨植林山樹稠。
　　皇室尊崇殊絶大，民間参詣亦無休。
　　　　烏：八咫烏。帝：神武天皇。尊:素盞鳴尊

　　　　　其四　那智山
　　霊山臨海昼陰森，数百石階牽杖尋。
　　"大社"厳然奉"権現"，"仏堂"荘重祀観音。
　　爭妍層塔賞嘆久，砕玉"飛滝"感動深。
　　幾歳傾懐"熊野"嶺，老杉古道洗塵心。
　　　　大社：那智大社。権現：夫須美大神。仏堂：青岸渡寺。
　　　　飛滝：飛滝神社（那智の滝）。熊野：熊野那智山

　　　　　其五　熊野速玉大社
　　太古"三神"降霊岳，後年営社祀新宮。
　　妍華朱殿尊無限，巨大青椰興未窮。
　　依旧世人深信仰，古来皇室篤尊崇。

　　　　　其六　浦島旅館（和歌山県勝浦町）
　　舟移"浦島"已晩暉，臨海高堂解客衣。
　　洞窟温泉殊有趣，潮騒閑響自忘歸。

　　　　　其七　鬼ケ城
　　熊野灘辺風景鮮，奇岩飛沫眼前連。
　　旧曾海賊爲城此，今日游人探勝施。

　　　　　其八　伊勢神宮（三重県伊勢市）
　　老杉蒼鬱連参道，行客斎身清水涯。
　　白木内宮荘重極，黄金鰹木燦然輝。
　　昔時単独踏砂磯，今日相携拝祖祠。
　　千古依稀塵外境，無為神域正幽奇。

　　　　　北京香山有感　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　香山佳勝似家山，日本凡夫興尽還。
　　汽車飛快大都好，衝天高厦有香餐。（普韵十四寒）

　　　　　青　蠅　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　糞中玉蛹化青蠅，順命飛天落水清。
　　貢献魚肥上食案，而人排便厠窗明。（普韵十七庚）

　　　　　白頭梦化�K蚊　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　�K蚊吸血産白卵，白卵成蚊螫雪肌。
　　樗散任蚊吸老血，戀慕紅脣梦想痴。（普韵五支・七斉）

　　　　　人宜作酒仙　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　勸君怠業對嬋娟，傾盞游魂作酒仙。
　　莫忘人生一場梦，最終審判属天權。

　　　　　醉　吟　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　比較酒癲和太陽，太陽常落醉呶長。
　　徹宵野叟講詩経，払曉鳴鷄千里翔。

　　　讀日本朋友等閑平仄的七絶有感　　東京都　石倉鮟鱇
　　舶来風韵有平仄，出口山詩失四声。
　　疑是蒼鴻迷反路，入郷随俗忘高鳴。

　　　　　入声韵四首　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　　　　　　　一
　莫譏吾酒失，時得聴声律。酔境近霊山，仙人来補筆。

　　　　　　　　二
　　紅葉風披拂，白秋心鬱屈。茫然看行雲，終日如長物。

短　詩

１．漢俳

　　　　中日短詩研討会有感兩首　東京都　石倉鮟鱇
　　　　　　　　一
　　北京集諸賢。研討短詩堪愛唱，賞月共嬋娟。

　　　　　　　　二
　　短詩堪共求。靈犀馳處爽清秋，天孔月光流。

２．曄歌

　　　　　初秋吟九首　　　　　　千葉県　布川五雲
　　月如鈎　竹影當窗　露自稠

　　読書秋　雅竹蕭蕭　月光流

　　詩可酬　幽入枕上　一天秋

　　意悠悠　一湾新月　先入秋

　　露華浮　新涼一洗　故郷秋

　　新入秋　詩成吟得　意悠悠

　　易感秋　有情有味　雨亦収

　　先入秋　一片新凉　白雲流

　　入吟眸　新詩有味　一天秋

　　　　　曄歌・三首　　　　　　千葉県　高橋香雪
　　白雨凉，紅茶三分，砂時計。

　　"彼岸花"，秋色風情，路三叉。

　　月黄昏，白白可憐，"宵待草"。

　　　　　看電視、イチロー選手的偉業　　　　東京都　石塚梨雲
　　白球飛，達成記録，祝歌圍。



３．偲　歌

　　　　　　七首　　　　　　　千葉県　秋山北魚
　　焚香凭枕，夢境未來。月光和涙，映客杯。

　　君愛我□？好久信疎。夜酒丹臉，孤枕虚。　□：口馬

　　相約再会，與君悦斟。月夜如舊，花影深。

　　昼染華箋，夜不成眠。風吹葉落，舞窗前。

　　今日別君，再会何時？寒梅帶雪，亦難支。

　　渡頭別君，再会何時？緊結柳枝，訝春遅。

　　月照涙痕，呆然忘言。暁天星冷，同褥恩。

　　　　中日短詩研討会有感兩首　東京都　石倉鮟鱇
　　鳴鴻渡海，吟客舒情。研討短詩瞻月盈。

　　日日人忙，年年詩短。錬字随心，凝萬感。

４．三聯五七律

　　　　"狐　雨"　　　　　　　東京都　齋　游子
　　雷鼓驚童白雨輕，玉簾輝日彩虹生。
　　可憐奇象趣，想起古譚情。
　　先人怪謂是燐火，又用狐文冠厥名。
　　（注）狐文是謂狐的文字，以此冠于雨也。

　　　　萬座温泉　四首之中二首　　東京都　齋　游子
　　　　　　秋　天
　　紺碧秋天惱殺人，清風颯沓適精神。
　　仙郷愉樂足，殘暑健忘眞。
　　崔嵬石徑高臺上，秀麗連山景可親。

　　　　　　魚族與植生
　　魚族不游酸性川，硫黄吐毒植生貧。
　　健在疏松韻，繁榮矮竹茵。
　　造化深謀最難計，眼前風物興津津。
　　（注）矮竹是謂"熊笹"也。疏松是生育於荒地種，而数不多。
　　　　此種却不適通常的植生地而不能成長也。

詞

　　　　　城西秋題　　　　　　　千葉県　陳　興
　　意先秋気至、秋気入詩懐。学子書包里、瓶水合復開。面包慣朝食、歯根久摩擦。読書深夜事、困意鏡中察。上網知天下、読書識人生。幽独図書館、隔卓談笑声。我卓紙横縦、垂首写詩時。蘇黄詩集傍、未読一首詩。詩人逢秋至，会作秋里吟。年将二十四、行世若天真。

　　　　　菩薩蛮・留学日本満四周年作　　　千葉県　陳　興
　　客間愁恨知多久，開心一対傷心九。昨夜夢帰時，醒来星未稀。
　　秋来涼気返，只是陰雲満。楓葉幾時紅，城西紛落中。

　　　　　水調歌頭・香山　　　　　千葉県　今田莵庵
　　銀錠橋辺好，若霽見香山。軽烟藹藹西海，暫佇柳条湾。黄蓋車夫誘我，応試胡同遊覧，櫨熟壁牆間。倒福貼窗上，有媼慰情頒。　　香山好，坐索道，易登攀。羊腸石磴, 身如翔鳥出人寰。遥眺北京城市，疑視頤和堂塔，水與緑成斑。雲上伸腰処，片刻忘憂患。

　　　　　探芳訊・秋　吟　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　月光晃，照散士無言，感懷怏怏，聽良宵蛩語，清切轉悽愴。悲哉傾酒芳壺尽，未得心酣暢。試搖脣，解悶消愁，擬唐謳唱。　　頻欲逃塵網，願羽化登仙，却醒惆悵。秋悔人生，無功譽、有空想。漸成七絶眞陳套，詩境徒高尚。枕長肱、梦酌佯誇雅量。

　　　　　垂楊・清秋醉吟　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　嫦娥晃晃，照霜頭仰看，紫穹開曠。淺酌無言，重杯未得心舒暢，空聽蛩語声悲響。憶昔日、介心豪放，到如今、空老無功，有醉生惆悵。　　欲振精神宏量，鼓詩腸雅健，搖脣謳唱。我有文才，巧調平仄吟清爽，聳肩覓句誇高尚。笑横臥、枕肱梦想，游魂羽化乗風，天蕩漾。

　　　　　燕山亭・四時如醉　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　春探櫻雲，香雪任風，飛散蒼穹開曠。花底抱壺，坐聽流鶯，巧囀正堪酬唱。乗興搖脣，調平仄、擬唐高尚。停杖，臥盛夏涼陰，午眠舒暢。　　老骨傷感清秋，憫草際殘蛩，引愁悲響。好逑已散，月寡人鰥，相思不忍惆悵。重振精神，呵冬筆、裁詩奔放，吟志健、游魂雄壯。

言論筆譚

　中国詩詞の高い生産性と新短詩の将来をめぐって　 　石倉秀樹
　　およそ読者の立場からは、読んで詩情を覚えないものは詩ではないのでしょう。一方、定型詩であれ自由詩であれ、あるいはまた散文であれ、それを読んだ読者が、作者が提供する豊かな詩情に引き込まれていく作品は、立派に「詩」であるのでしょう。「詩」においてもっとも大切なのは、この「詩情」です。

　　そこで、世界的に見て定型詩が衰退していくのは自然な趨勢であると思えます。１行の音節の数を固定し、詩全体の行数を固定し、押韻を義務付ける、そういう制約のなかに作者の豊かな詩情を押し込めることにどれだけの意味があるのか？定型詩は詩人の自由な魂を押し込める言葉の牢獄ではないのか。そういう問いのなかで自由詩や散文詩が生まれ、音節の数や押韻の緊縛から作者と読者の詩情の自由を解放し、２０世紀の詩を新たな曠野へと放り出しました。Ｈａｉｋｕが世界の桧舞台に踊り出たとき、世界の市井の詩人たちが、その無韻の詩型を受け入れた時代の背景がそこにあります。17音節の制約をどう考えるかという問題があるにせよ、押韻を放棄することによってＨａｉｋｕは限りなく散文詩に近付いています。

　　この世界的な傾向は、ある面、日本の詩人にとってとても有利な展開でした。なぜなら、わが国の読者は、多くの場合、詩を日本語の世界で理解します。そして、わたしたちの日本語は、定型詩の成立に不適な言語であるにもかかわらず、一方で、とても美しい朗詠が可能な言葉です。そこで、わたしたち日本人は、定型詩の牢獄に囚われるはずもなく、豊かな詩情を自由な言葉に託すことができると、はじめから信じることができたのです。

　　しかし、自由詩・散文詩の曠野に色とりどりの花が咲きほこり、蝶が舞い鳥が歌う豊かな実りの楽園が、そこに迷い込む詩人のすべてに平等に用意されていたわけではありません。詩情は、言葉が伝える意味内容に等しくアプリオリに含まれているものではなく、作者の思いを正確に言葉に託すだけでは、詩の命ともいえる詩情を読者に喚起することはできないのです。詩情は、書き連ねられた言葉が伝えうる意味内容のほかに、その言葉の連鎖が含む響きのよさ・流麗さを、あわせて要求します。翻って考えれば、定型詩の定型詩たる由縁は、この言葉の響きのよさ・流麗さを、市民の幸福をともに養うある種の社会保障制度のように、それぞれの国語に属する万民に、保証するものではなかったのか。定型詩という名の牢獄は、そのなかに身を置けば、美しい楽の音が天井から夢のように降ってくる殿堂ではなかったのか。

　　とすれば、母国のごとき定型詩を捨て、言葉の殿堂から迷い出た流浪の詩人は、どうやって言葉の響きのよさ・流麗さを獲得していくでしょうか。詩人は、楽譜を目にできない盲目の演奏家のように、みずからの耳と口をたよりに、おのが詩情を託す言葉を紡いでいくのではないでしょうか。そして、西洋の多くの詩人が定型詩という母国であり殿堂である楽園を捨てたのに対し、わが国の詩人たちこそは、日本語で詩を書き始めた最初から、言葉の殿堂への道筋なき曠野に身を置いていたのです。みずからの耳と口を頼りに、つまりは、みずからの語感と言葉についての才能を頼りに、道なき道を進むのが、わたしたちの日本の詩人です。

　　かくいうわたしもまた、日本語で詩を書く限りは、そういう詩人のひとりでありえたかも知れません。しかし、わたしには日本語についての優れた語感と、それをハンドリングする自信はなかった。そこで、わたしは、日本語では詩を書かなかったし、今も書きません。かりに、詩情にも似たわたしの内なる思いのたけを、ある意図のもとに頻繁に改行して日本語に素直に託したとして、それが詩であるのか文であるのかについて、その違いを敏感に嗅ぎわける天才ならではの語感は、わたしにはないのです。なぜなら、わたしは、凡人だからです。

　　定型詩は、同じことを散文で書く場合には保証されない言葉の響きのよさ・流麗さを保証する言葉のシステムです。その意味で、言葉の天才には不用であるかもしれないが、凡才が詩を書くには有用です。定型詩が求めるさまざまな規約は、詩情豊かな天才詩人には自由な魂の飛翔を閉じ込める牢獄であるかも知れないが、凡才には、豊かな詩情などはもともと期待しがたいのですから、定型詩を書くことによって失うものは初めからないのです。進歩した文明のもとでは、そこに住む人々は生活に必要な何から何までもを自分で用意する必要がないように、定型詩の王国では、詩情に乏しい凡人でも言葉の響きのよさ・流麗さ、つまりは言葉の殿堂に一歩でも近付けるようにと、きちんと区画され標識が準備されている道筋が、縱横に張り巡らされているのです。

　このように見るとき、中国の詩詞を書くことに親しんできた者には、その文明の利器ともいえる定型詩の発達のうえで、漢民族と中国語が打ち建てた人類定型詩史上の偉大な金字塔に眼を見張り、今後の定型詩の発展にさらなる期待を抱くことになります。

　　人類には多くの民族があります。そして、それらの民族にはそれぞれに豊かな詩情があり、それぞれに固有の言語により、多くの、優れて芸術的な詩作品が生み出されています。それらはいずれも、人類の詩の歴史に多彩に輝く宝石です。

　　しかし、それらの詩も、中国の詩詞の発展と比較すれば、その歴史の長さ、豊かさという点で見劣りがします。中国の定型詩詞は、次の４つの点で、世界で一番進歩しているからです。

１．　多くの芸術的な作品がこれまでに書かれ、今も書かれ続けている。
　多くの人が、詩国数千年の歴史が、世界に通用する多くの芸術的な作品を山のように生み出していることにまず瞠目するでしょう。そして、それ以上に注目すべきは、それらの傑作を生み出した定型詩型が、過去の遺物として忘れさられているのではなく、今も書き続けられ詩の生命を吹き込まれているのです。

２．　これに加え、唐詩に始まり、宋詞・元曲に到る定型詩詞の豊かな発展のなかで、中国では１０００を超える定型詩詞が生みだされている。
　定型詩を生み出したのは中国だけではないにしても、中国ほどに多くの定型詩詞を生み出した民族・言語は他はないでしょう。日本では今も書き続けられている定型詩型は、俳句・川柳と短歌ぐらいしかありません。西欧に眼を転じても、ソネットとバラード、他にもあるでしょうが、それらを足しあげて１００を越えるかどうか。

３．　詩の言葉として不可欠な要素、流麗で響きのよい文を書くにはどうしたらよいかという点について、音韻上の法則が発見されている。つまり、「平仄」がある。

４．　そして、平仄が発見されているので、わたしたちのような外国人でも、流麗で響きのよい文が書ける。
　わたしたちの日本語も美しい言葉です。しかし、中国詩詞における「平仄」にあたる音韻上の法則は日本語では発見されていません。そこで、わたしたちの日本語は、それ自身は美しいものであるにも関わらず、どうすれば美しい響きの文が書けるかということを、科学的に外国人に説明することはできません。たとえば、俳句の５・７・５は、美しい響きを可能にします。しかし、５・７・５にすればすべて美しいかというと、そうではありません。

　　以上の４点は、突き詰めれば、平仄の発見がもたらした偉大な功能であると思えます。

　　１０００を超える定型詩詞を可能にした原理はいったい何であるのか。わたしは、「平仄」の発見がそれを可能にしたと思っています。「平仄」は、それを知らない民族には、詩人の魂の自由な発想を無意味に制約するものとしか映らないかも知れません。多くの日本人がそのように考えると思います。しかし、この考えは間違っています。「平仄」とは、言葉の、豊かで流麗な展開を可能にし、保証する音韻の法則だからです。

　　言葉の流麗な展開は、詩詞の基本です。しかし、その基本は、なかなか法則化しえない。言葉の流麗な響きに寄与する「韻」については多くの民族が発見しています。しかし、「平仄」は、中国以外ではいまだに発見されていません。そこで、平仄を知らない多くの民族の言葉は、詩文としての流麗さ、豊かさを、詩人の天才的な語感あるいは霊感によって獲得することになります。

　　一方、「平仄」は、四声を学習しさえすれば、天才でなくとも習得できるものです。中国人でなくとも習得できます。中国語をよく話せない、聞いてもよくわからないわたしのような日本人でも習得できるのです。そして「平仄」を習得すれば、流麗に響く文、つまり、詩が書ける。

なぜ日本人に漢詩が書けるのかという点について、日本人の多くが最初に見つけ出す答えは、日本人は漢字を知っている、日常の生活のなかで漢字を使っているからだいうことであるしょう。これは間違いではありません。しかし、不十分な理解です。

　　なぜなら、ひとつ事例をあげます、「平仄」を知らなくても漢詩が書けると思っている日本人が時々います。彼らは、たとえば絶句だと称して１句７字４行の文を書きます。しかし、彼らがそういう詩を書き続けることは、ほとんどありません。２，３は書いてみます。あるいは１００ぐらいは書くかもしれません。しかし、それ以上に書き続けることはありませんし、できません。

　　なぜ書き続けられないのか。その理由は、そのような文はいくら書いても、それで詩が書けたという確信を持つことができないからです。狂気と隣り合わせに生きる天才であればともかく、常識のある普通人であれば、そういうことをいくら重ねても、詩文としての流麗さ、豊かさを獲得できたという確信は持つには到れません。日本語であればともかく、漢字だけの文の響きの良し悪しは、日本人にはなかなかわからないからです。

　　一方「平仄」に沿った句作りをしていけばどうか。

　　数学の多くの公式や音楽の楽譜は、人間の知性や感官に直接かつ純粋に働きかけることができ、言語の違いを超えて多くの民族に共有されるうるものですが、「平仄」はこれと似ています。つまり「平仄」には、数式や楽譜と同様に、一定の学習は必要ではあるでしょうけれど、音韻の流麗な響きにかかわる法則として、地球上のすべての民族が共有できる明快さがあるからです。

　　フランス象徴主義の最後の偉大な詩人であったポール・ヴァレリーは、「詩に音楽の富を奪還」したいと考えていました。民族、国境、言語を越える音楽や数学が持つ普遍性を詩が獲得できれば、音や数字では表現できない、言葉ならではの豊かさ、つまりは詩想を、多くの人が共有できると考えたのです。中国詩詞の「平仄」の発見と発展は、ヴァレリーのこの理想を、彼が生まれる１０００年以上も前に実現したものと言えます。

　　もしマルコ・ポーロのかわりにヴァレリーが元代の中国に来ていたとしたら、世界はどうなっていたか。花火を鉄砲に変えて人を殺し、ただの紙をドルに変えてしまう今日の世界の不幸は、かりにやがてはそうなるのだとしても、ずっと後代のことになったと思います。なぜなら、マルコ・ポーロは火薬と紙とスパゲッティを西洋に運んだ商人でしたが、ポール・ヴァレリーは詩人だからです。彼は北京に留まって、おそらくはフランス象徴主義のような優れた元曲を書き残したでしょう。ポール・ヴァレリーが１９世紀のフランスに生まれて元代の中国に来ることがなかったことは、中国の詩詞の発展のうえでは小さな損失ですが、マルコ・ポーロが中国にやってきたことは、人類にとって、大きな禍（わざわい）でした。

　　さて、以上述べたことを踏まえ、新短詩の今後について、主に漢俳・漢歌を中心にわたくしの期待を述べます。

　　わたしは、昨年の１２月から１月の間に、約１０００首の漢俳を書きました。わたしには平水百六韵ではなく、普通話韵で詩詞を書きたいという期望があります。平水百六韵を普通話韵に組み直す、そのための習作の手段として、いささか集中的に漢俳を書きました。そして、平仄の高産性をわたし自身の頭と肉体で体感してみる、そういうねらいもありました。

　普通話韵習得のための手段として、絶句でもなく中山新短詩でもなく漢俳を選んだことには理由があります。中山新短詩は、俳句的センスで書く詩としては漢俳よりも有利でありますし、詞を書く上での句法の習作に適しているというメリットもありますが、当時わたしがやってみたいことして、漢俳を短い詞曲のようにして書いてみたいという考えがありました。

　　具体的には、詩のように五字句は上二下三、七字句は上四下三に詠むのではなく、五字句は上一下四、七字句は上三下四、あるいは上一下六、上二下五に詠む、そういうことも可とする句作りがしてみたかったのです。詩をたくさん書いてきたという慣れがありますので、多くは上二下三、上四下三の句作りになりましたが、詩のように書いてもよく、詞曲のように書いてもよいというあたりに、漢俳の柔軟性があるように思えました。そこで、絶句でもなく中山新短詩でもなく漢俳を選んだのですが、三句の平仄をどう組み立てていくかという点で、漢俳がいかに多くの可能性を含むものであるかを、実感することができました。いくつもある句法のなかで、とりわけわたしにとって書きやすく、また、しっかりと書けたように思えるのは、第２句を上二下五に読み、上二時を領字とし、下五と第三句の五字を対仗にする書き方です。

　　それはともかく、漢俳が持つ句作りの多様性は、五字句・七字句をそれぞれどう区切るかを意識してはじめて明確に意識できるものです。そして、この句を区切ることと平仄は、別のことのように見えて実は相互に深く関係しあっているように思えます。そのことは、今のわたしにはただ直感的にわかるだけなのですが、かりに平仄と句の区切り方が別のことだとしても、そういう規約を意識しながら漢俳を書くことは、詩への取り組みを方法論的にわかりやすくするものです。漢俳もまた、中国詩詞の伝統を踏まえるなら、絶句や律詩と同様に、わたしたち日本人にも書ける豊かな可能性を含んでいます。

　　わたしは若いときにフランス文学と多少のフランス語を学びました。当時、フランス語を学ぶ学生は多く、英語につぐ位置にありました。今は、フランス語を学ぶ学生よりも中国語を学ぶ学生の方が多くなっています。彼らがさらに進んで、中国文化の精華である詩詞を学ぼうとするとき、漢俳は、その小振りな入り口から広い山野を望むことができる門となって、彼らを迎えることができるでしょう。彼らが新しい時代へ向けての漢俳の担い手となってくれることを、わたしはおおいに期待し、深く期望してやみません。





吟社の窗

　　「二〇〇四年中日短詩研討会」は９月２６日、北京の首都大酒店で開催された。詳細報告は資料受領後とし、取り敢えず瞥見を記しておく。
　　日本からの参加者は中山栄造、今田述、斎川正二、小畑節朗、石倉秀樹、高橋香雪、門馬清子（以上葛飾吟社）、楠野修（日中友好漢詩協会）、俳句界から加藤耕子（俳人協会）、杉浦浩二（『耕』）、他に田口敏夫計１１名。
　　中国側からの参加者は劉徳有、孫軼青、周克玉、屠岸、紀鵬、林岫、鄭民欽、谷威、董耀章、蒋有泉、李仲玉、李克英、王渭、段楽山、湯文斌、黄明燦、王元慶、楊平、李佩雲、李増山、董□、王麗心、劉志邦、李君莉の２４名（敬称略）。□＝樹−木＋シ。
　　予定されていた林林先生は、９３歳の高齢を押して、強い参加ご希望をお持ちだったが医師の諒解を得られず、中日友好協会の董振華理事が先生の次の揮毫を持参された。

秋涼須温暖
親善結詩縁
迎扶桑詩人　　　林林

　　従って今回の中国側の重鎮は劉徳有氏と孫軼青氏である。

　　劉徳有氏は曾つて中華人民共和国文化部副部長（わが国の文部次官に相当）を勤め、現在中国対外文化交流協会副会長の職にある、日中文化交流の第一人者である。北京大学日本研究センター客員教授として、シンクタンクの役割をも果たしている。芥川龍之介『芋粥』、有吉佐和子『祈祷』等の訳書、『在日十五年』『戦後の日本語新探』等の著書がある。当日、「この中秋節と国慶節を前にして、日本から詩人の皆様が来訪されたことは、誠に意義深いものがあります。中日両国の間には難しい問題が生じていますが、こんな時だからこそこのような文化交流が非常に大切だと思います。」と流暢な日本語で挨拶をされた。

　　孫軼青氏は中国の国家組織である中華詩詞学会の会長であり、最近まで国家文物局長の要職にあった人。このような政府要人が出席したことは、この研討会への中国文化人の期待がいかに大きいかを表している。

　　司会と総括は林岫女史（中国新聞学院教授、中国書法家協会副会長）が、通訳は鄭民欽氏（北京北方工業大学教授）が担当した。

　　林岫女史は総括の中で、「短詩」の定義について述べ、最初漠然と５０字をメドと考えたが、これに対し林林先生が４０字を適当とされた。５０字にしても七言律詩ははみ出してしまう、五言律詩は４０字で丁度入る、従って今日では４０字までを「短詩」と呼ぶのが妥当とされているそうだ。

　　趨勢としては、短詩の中で「漢俳」（５・７・５）と「漢歌」（５・７・５・７・７）が主流である。それは明らかに日本の短詩型文学の影響が色濃いことを物語っている。今回湖南省から参加した段楽山、湯文斌、黄明燦の三氏が中心となって、長沙市で刊行している漢俳専門誌『漢俳詩人』（季刊）を見ると、今や漢俳の流行は北京など中心地に止まらないことが解る。

　　この雑誌に曾つて「漢俳を訳すのに何故短歌形式を使うか」という私の小論が、流麗な中文に訳されて掲載されたことがあった。その趣旨は、なぜ漢俳は日本の俳人の興味を引かないかについて書いたものである。それは日本の俳人にとっては、漢字十七字の漢俳の情報量が多過ぎて、俳句に似ていないというのが理由である。たしかに情報量からいえば漢俳は俳句の倍ほどの内容を盛り込める。だから韻文をとるならば、短歌形式を用いるのが自然なのである。

漢俳と俳句が似ているのは、実は内容ではなく音律なのだ。北京語の発音は一字一音節だから、音読すると日本の俳句と同じリズムになる。日本の俳人はこれを北京語で発音することなく字面で読むだけだから、同質性を全く理解できない。

　　ところが近年、若者の間の外国語選択が、英語に次いで中国語を選ぶという時代になって来て事情は急速に変わってきた。将来は漢俳を両国の詩人が互いに理解して詠みあう可能性が考えられるようになってきた。事実、葛飾吟社には中国語を勉学中の日本の大学の女子学生が参加したり、中国の留学生詩人が顔を覗かせたりするようになっている。漢詩というと老人の手慰みとしてきた常識は、いずれ覆る可能性が大である。無論、そこには唐時代の発音で死滅した平水韻を、いつまでも使うのかといった問題もある。現代北京語を会話する世代にとって、現代韻を用いるのがごく自然であり、日中どちらの若者もそれは同じ筈である。

　　出席の石倉秀樹氏は「日本から中国へ来ている留学生にぜひ漢俳を詠むことを奨励して欲しい。それは中国文芸の精髄を知る機会にもなるはずだ。」と発言して注目を浴びていた。日本の俳人が理解しない同質性が、難なく理解できる世代が生まれつつある。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（莵）

十一月号

詩

　對短詩研討会招開的尽力，中国許多賢人感謝。　　千葉県　中山逍雀
　　論詩酌酒太天真，徳友風姿動我神。
　　草木山川千古意，一衣帯水結交親。
　　歩韵孫軼青先生玉作慶飛天

　　　　　歩韵孫軼青先生玉作慶飛天　千葉県　中山逍雀
　　革新技術跨蒼穹，何日飛船自在行。
　　百世宿志追約到，華人首訪萬星宮。

　　　　　孫軼青先生玉作慶飛天
　　　飛船似箭入蒼穹，華夏精英天外行。
　　　登月可期非夢幻，嫦娥狂喜廣寒宮。

　　　　　北京中日短詩詞研討会　　千葉県　高橋香雪
　　千里客程集一堂，詞詩會得意揚揚。
　　吟情更有中秋月，兩地揮毫宴席傍。
　　　注：兩地；中国和日本的詩友們

　　　　　母八十八歳祝寿　　　　　千葉県　高橋香雪
　　萓堂耳目不知衰，毎日読書心自怡。
　　鶴髪仙顔期百歳，佳辰賀宴涙先重。

　　曄歌
　　米寿筵　鬢霜更加　秋月前。

　　　　　金中先生朗誦会之后與鮟鱇先生對酌　　千葉県　高橋香雪
　　高吟気魄動梁塵，異国青年發興新。
　　尚友談論樽有酒，先生一酔喜色真。

　　　　　赴日抒懷　　　　　　　　東京都　金　中
　　年幼躊躇總戀家，今爲游子向天涯。
　　嵐山瀝瀝思仙聖，上野喧喧賞櫻花。
　　燕雀安知鴻鵠志? 鯤鵬肯做井中蛙。
　　讀書萬巻八千路，昂首騰飛耀我華。

　　　　　遊東京廸斯尼樂園"小飛象"
　　　　（Dumbo　The　Flying　Elephant）　　東京都　金　中
　　乳象環翔首尾連，耳寛如翅意翩翩。
　　就中小鼠紅衣帽，笑臉回旋持教鞭。

　　　　　　DATE　　　　　　　　　東京都　金　中
　　　　　　　（一）
　　跋渉相思路漫長，將迎幽会美辰光。
　　看鐘疑惑千分過，掻首踟□四面張。　　　□＝足厨
　　熾燥田原接甘雨，氷嚴林莽沐驕陽。
　　瞬間何故胸潮沸? 縁自伊人到近旁。

　　　　　　　（二）
　　庭園淡淡籠蟾光，私語依依影曳長。
　　春水柔擁青翠竹，南風偸吻鬱金香。
　　日常珍重當全会，偶尓輕佻亦未防．．．．．
　　最愛聽君嗔"□壞!"。一絲甜蜜沁心房。　□=ｲ尓(ni3)

　　　　　傾聽金中先生朗誦有感　　東京都　石倉鮟鱇
　　滿堂無酒都人醉，言志聳肩鳴凰豪。
　　洗錬雄渾亦悲慨，千年風韵破風濤。

　　　　　寄金中先生朗誦会 　　　　　千葉県　今田莵庵
　　金中朗誦響啾啾，漢語原音自起愁。
　　李老酖酖蘇魂魄 杜翁役役継歌喉。
　　自翻晩翠荒城月，也詠菅家遠里囚。
　　詩意韻声難執別，会場聴衆識情游。


　　　　　中越地震崩落地二歳児童独生還　　千葉県　今田莵庵
　　山川迫処道細長，地震俄生避不遑。
　　軽走汽車偕崩落，同乗母姉遭悲涼。
　　三宵洞穴憂情遺，二歳児童命運強。
　　熟練隊員除岩助，生還暗窟早新霜。

　　　　 北京飯店 　　千葉県　今田莵庵
　　北京飯店史遷長，曾泊隣房張学良。
　　三翼雄楼榱桷太，百年巨柱耀金光。
　　周辺地鉄通深路，守旧駅城隔孤坊。
　　酩酊帰来名月夜，開紗影入照銀牀。

　　 　　八首大蛇 　　千葉県　今田莵庵
　 "出雲"葆旅旅情強， 太古伝承在各郷。
　　八首大蛇流域息， 一条玉剱腹中蔵。
　　丈夫鼓勇佯供酒， 妖怪待酖誅割腸。
　　静寂"簸川"如往昔，瞬時空港轟音昂。

　　　　　贈佳人七絶一首　　　　　千葉県　陳　興
　　佳人索句在天邊，未識芳音与玉顔。
　　有信我心如大雁，不知何処望蝉絹。

　　　　　詩　夢　　　　　　　　　千葉県　陳　興
　　林間長睥睨，不可任馳騁。昨夜夢林間，詩空留與夢。

　　 　江西雲遊其二　三首　　　　　千葉県　田旭翠
　　　　　其一　曹山道中
　　百里征程泥一尺，萬声清韻竹千竿。
　　金田去路風痕浅，福地荘厳雨後看。
　　（注）曹山寺：曹山崇壽院在江西省撫州市宜黄県陳房橋村。唐時代洞山良介禅師法嗣曹山本寂禅師住山古跡。

　　　　　其二　青原山　盧陵米価
　　青原山裏満嘉禾，村巷黄金萬頃波。
　　爽節風高知古意，盧陵米価現如何？
　　（注）青原山：青原山靜居寺在江西省吉安市青原山村。唐景龍三年(７０９)禅宗七祖青原行思開山。
　　　　　盧陵：　吉安市古名
　　　　　盧陵米価：従容録第五則"僧問青源　如何是佛法大意
　　　　　　　　　源曰盧陵米作麼価？"

　　　　　其三　江西雲遊欲再遊
　　羇思加深更少留，却懐何日話曽遊。
　　歓談酌酒千金笑，携手同看一色秋。

　　　　　頌結婚　　　　　　　　神奈川県　山田鈍耕
　　枡量公平方寸中，
　　田郎歳月百夫雄。
　　一心努力人如問，
　　志気縦横萬世功。

　　　　　秋日郊行　　　　　　　　　　　神奈川県　萩原艸禾
　　晴日稲花路，自憐半己忘。
　　柿朱朱適菊，壁白白揺陽。

　　　　 "川越喜多院"五百羅漢　　 神奈川県　萩原艸禾
　　伏啼坐笑蹲踞怒，横哂屈瞋起立悲。
　　惻惻停□羅漢列，夫容似彼那容誰。□＝筑-凡+郎-良

　　　　"長崎"雨中写生旅行　　　　神奈川県　萩原艸禾
　　遠望虚船霖雨繁，回看峻閣密雲昏。
　　同遊互認狂痴輩，尺紙濡毫踞小軒。

　　　　"根尾谷薄墨櫻"秘史　　　　神奈川県　高橋子沖
　　静悄深山古木嗟，蘇生奇跡感無涯。
　　皇孫秘話模糊裏，遠客書繙争看花。

　　　　"谷汲天台華厳寺"　　　　　　神奈川県　高橋子沖
　　巨杉千樹白雲流，清清渓声煙霧浮。
　　創建三百懷聖者，堂前閑散鼓鐘周。

　　　　"蓼科高原"　　　　　　　　神奈川県　高橋子沖
　　遥遠連山新雪光，紅楓白樺午風涼。
　　老朋打球喊声踊，邑落清幽斜照長。

　　　　　"柴又帝釈天"　　　　　神奈川県　高橋子沖
　　站前銅像笑吾迎，演劇故人天下鳴。
　　古寺門前交誼厚，巷間殷賑街亦栄。

　　　　　"印尼歌声会"　　　　　神奈川県　高橋子沖
　　故旧来参喜色煌，歌声情熱満堂昂。
　　彩衣染色映光麗，日印交歓談笑長。

　　　　　述　懐　　　　　　　　　埼玉県　芋川冬扇
　　　　　　其之一
　　酔後無人到，孤灯一段愁。西郊如墨画，四壁夕日幽。

　　　　　　其之二
　　二八青雲志，浮雲萬里遊。臨風蓬髪乱，未道任去留。

　　　　　春一首　偶成　　　　　　東京都　田村美智代
　　梅花隔水領春風，野鳥穿林一翻空。
　　只願昇平迎旭日，飄然双袖暗香中。


　　　　　夏一首　桂林（Guilin）　 東京都　田村美智代
　　萬丈黄塵覆桂林，幾何緑薫洒騒音。
　　空思千古驕陽下，遊客如潮門巷侵。

　　　　　青�拷･　　　　　　　　　東京都　田村美智代
　　好碁無類屡連晨，懶不自慳而援民。
　　白色密生鬚冠絶，可憐稀有是詩人。
　　（注）青�香F国分青�香i1857~1944）懶不自慳的詞匯従欧陽修的懶不自惜

　　　　　北京大街夜市場　　　　　東京都　齋　游子
　　秋夜千灯市，微醺客意親。
　　請看三四月，如醉善爲隣。
　　漢俳：秋夜千灯市，我帶微醺客意親。月亦醉爲隣。

　　　　　寄北京日中短詩研討会　　東京都　齋　游子
　　盡日論詩熱氣横，人人語語吐丹誠。
　　良宵把酒温交處，月色帶烟如有情。

　　漢俳：盡日論詩處，一堂熱氣和氣横。月下思友情。
　　曄歌：嫩芽發，活活伸來。漢俳才。

　　　　　北京活況　　　　　　　　東京都　齋　游子
　　飛閣摩天返午陽，人車溢巷往来忙。
　　却思桑海朝朝變，休道胡同幾百霜。
　　　（注）第三句５字，李商隱詩より

　　　　　訪香山碧雲寺　　　　　　東京都　齋　游子
　　東來連袖訪，静寂碧雲宮。清帝詩碑黙，孫文畫椁空。
　　專權難抗恨，革命易成功。孰問興亡跡，山門松柏風。

　　　　　中秋節訪天壇後述懷
　　佳節公園老若圓，祈年殿下舞豐年。
　　今歸陋屋弄空想，漢族當娯明月前。

　　　　　寄台風十八号書感　　　　東京都　齋　游子
　　怪物生南海，暴風驚惰眠。怒聲如猛虎，豪雨似飛泉。
　　倒樹又摧屋，侵堤兼破船。幾招多恨禍，數道異常年。
　　旅客死埋志，北□嘆仰天。茫然投筆處。白屋月光穿。

　　　　　十六夜　　　　　　　　　東京都　齋　游子
　　三五中秋十里雲，今宵二八月明天。
　　野翁閑詠清光下，蛩雨桂香從那邊。

　　　　　詩友小林光子女史追憶　　東京都　齋　游子
　　光女已登雲外城，解顔當樂自吟聲。
　　却思迂拙純情性，頑固半生持一誠。

　　　　　秋分偶成　　　　　　　　東京都　齋　游子
　　佳節西郊雨始收，亂蛩聲裏訪良儔。
　　時談氣象異常歳，孰識天行尚健不。

　　　　　秋日偶成　　　　　　　　東京都　齋　游子
　　金風微有韻，碧宇絶無雲。野叟憐秋處，草蟲幽咽聞。
　　對日暴毛氈，氈藏經歳垢。一打千蚤飛，億塵舞千扣。
　　秋水流不滯，川谷除滓清。老來無頼漢，奈何疎懶情。

　　　原韵奉和李君莉女士之玉作讚北京的繁榮（独木橋体）　　東京都　石倉鮟鱇
　　王府井街高厦新，餐廳擁擠菜單新。
　　改革経濟喜殷富，開放民生試嶄新。
　　昼買指環妻子喜，夜重玉盞老懷新。
　　北京緑酒催輕爽，日本白頭称意新。

　　李君莉女士原玉：２００３年展望祖国万象更新
　　　大街小巷日翻新，喜訊頻傳天地新。
　　　芝砌春光清旦媚，闌持夏氣秀而新。
　　　菊含秋馥丹青絢，桂映冬榮景象新。
　　　擧國同心迎奧遠，龍騰献瑞展圖新。

　　　　　風　二首　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　　　　　　（一）
　　蝶飛花散火雲高，葉落月臨烟雪飄。
　　梦想仙姿四時舞，凭闌夕眺水光搖。

　　　　　　　（二）
　　不見仙姿千里行，羽衣拂面梦魂清。
　　寒蝉鳴處吾生老，長慕夕陽雲有情。

　　　　　一郎居士謝国民榮譽賞　　東京都　石倉鮟鱇
　　獨渡滄溟聳兩肩，一郎居士列球仙。
　　温顔微笑謝榮譽，不上官家冢宰前。

　　　　　東京"浅草寺"秋景　　　東京都　石倉鮟鱇
　　左聽華語右中文，堂宇楹聯菩薩恩。
　　�K髪青娥堪照相，黄肌白首幸爲隣。
　　靈犀應按快門處，花貌羞含笑臉春。
　　疑是梦魂游漢土，香烟靄靄化祥雲。

　　　　　止温泉宿　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　昨夜風號梦魔噪，今朝人醒宿酲微。
　　青年滑雪喜新霽，白首随妻祝古稀。
　　分手浴池温老骨，比肩布店買春衣。
　　外寒内暖客房好，終日無爲倚暮暉。

　　　　　冬天情景　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　樹頂晩烏舞，雲中夕映微。一更朱臉飲，二鼓雪花飛。
　　少好老殘痩，多穿妻子肥。被炉看電視，半醉避寒威。

　　　　　冬天有至愚　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　少壯開車伴美姫，老殘長慕夕陽垂。
　　聳肩望眺亂山影，停杖仰瞻明月姿。
　　傷感庭蛩吟斷續，騁懷秋色促相思。
　　我無功譽有空想，飲與嫦娥醉態痴。

新短詩

漢歌

　　　　　漢歌　二首　　　　　　　北京　董振華
　　国慶前夕，中日短詩詩人在京挙弁研討会，慶祝中華人民共和国成立３５周年。
　　　喜気迎国慶
　　　中日詩人聚京城
　　　共話短詩心
　　　秋高気爽水有韻
　　　同文同源総相来

　　慶祝北京第二外語学院成立４０周年
　　　一壺紹興酒，同窗旧友話不休。
　　　憶朝夕相処，秋涼映照十年別，熱泪追述四春秋。

漢俳

　　　　　漢俳二首　　　　　　　　北京　董振華
　　　　　送別段樂三先生
　　仲月照楼台。詩人帰去詩在心，相聚待春来。

　　花好月児圓。神馳南帰詩友畔，祝一路平安。

　　　　普通話韵一麻六首　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　　　　陪酒憐嫖客
　　侑觴佯惻怛。禿翁往日正英發，如今只醉殺。

　　　　　常恐妻子失時氣
　　侑觴人惱殺。心裡妻責吾認罰，沈黙不能答。

　　　　　春　梦
　　妖魔夜惱殺。色情施虐劇笞撻，笑不怕冥罰。

　　　　　春野吟
　　野叟愛酬答。放唱競跟鶯語滑，不顧韵拉雜。

　　　　　手乏不能沽酒
　　老殘頻手乏。枕書貪梦櫻雲下，花精勸醉殺。

　　　　　手乏但沽酒
　　老殘頻手乏。笑賣藏書却窮乏，朱顔醉解乏。

　　　　　台風去　三首　　　　　　　東京都　齋　游子
　　喞喞蟲声急，徹宵不休爲誰忙。台風三徑荒。

　　淙淙清淺水，水底無滓轉分明。台風已隔城。

　　碧花籬下戰，可憐含艷映朝暉。暴風去無威。

　　　　漢俳"出雲"紀行十首 千葉県　今田莵庵
　　　一　"出雲"空港
　　空港"宍湖"中。雨下来航降立看，天隅懸秋虹。
　　（注）出雲：島根県古称。日本最古地誌"出雲風土記"。

　　　二　"鼕鼓祭"
　　鼕鼕鼓声響，松江城域古祭催。鎧士装女徊。

　　（注）鼕鼓祭：例年十一月三日催事。市内各所叩太鼓、古装束行列去。

　　　三　"松江城"
　　鼕声届高天。楼閣周辺非尋常，成群描弧鳶。

　　（注）松江城：在島根県松江市。木造五層歴史的建造物。旧松平藩主城。

　　　四　"小泉八雲"旧邸
　　旧邸静開門。"小泉八雲"没百年，洋人帰化痕。

　　（注）小泉八雲：旧名Lafcadio Hearn。愛蘭人随筆家。1890年従美国来日。到翌年十月于松江英語教師。主著"怪談"。紹介俳句最初洋人。

　　　五　"塩見縄手"町
　　潜松小舟去，周回城壁秋水濠。静寂忘喧噪。

　　（注）"塩見縄手"＝旧武家屋敷町。

　　　六　洋人三个人
偶遇城水瀕，洋人男女三个人。道街魅無垠。

　　　七　足　湯
終着站前秋。温泉浸足待客来，会話楽忘愁。

（注）足湯：在"一畑電鉄松江宍道湖温泉"終着站前。

　　　八　"神在月"
祠神集出雲。颱風無害過当地，聞道好運群。

（注）"神在月"：俳句歳時記以十一月称神無月。依日本伝承，此月全国祠社神集合"出雲大社"臨会議，因為自社留称
　　　　　"神無月"。但唯一出雲国耳呼称"神在月"。

　九　"松江東本町"
"玄喉睦魚"好，"簸川正宗"一献加。松江宵水涯。

（注）"玄喉睦魚"：日本海産魚之一種。 "簸川正宗"：地産酒，正確謂"簸上正宗"

　十　秋灯頂錬
俯瞰"宍道湖"，水辺欄干点秋灯。金飾頂錬勝。

（注）"宍道湖":塩水湖。島根県県庁松江市在此湖畔。

五七律

　　　　"旧網走監獄"資料館　　　神奈川県　萩原艸禾
　　游客応看開路図，凄凄労役眼前蘇。
　　鉄鎖幾傷肉，厳寒忽裂膚。
　　千里誰憐捜景道，焉知是地萬囚枯。

偲歌

　　　　　　六　首　　　　　　　　千葉県　秋山北魚
　　朱脣唱歌，玉指彈弦。瓶花芳郁，夜燈前。

　　何處去了，爲何不歸? 虫聲切切，纏我衣。

　　懶不梳頭，緑髪披肩。情人膝下，月正圓。

　　曉鳥殘聲，願傾耳聽。請君莫去，月過庭。

　　思郎的的，懷妾欣欣。兩心如一，結茅新。

　　錦楓勝花，煽恐秋寒。爲歡幾何，色凋殘。

　　　　　詠尾四首　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　遊魂酒境，曳尾塗中。只今樗散醉吟融。

　　蠅營迎意，狗尾續貂。禿王天下少詩豪。

　　青蠅附驥，白首傾杯。好也梦魂千里飛。

　　陰陽合作，銜尾相随。交情昼夜眼花回。

　　　　　吟翁自嘲二首　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　枕肱貪梦，衣錦歸郷。醒然仰月，透寒窗。

　　八仙過海，百姓披襟。老殘無病，數呻吟。


　　　　　廉価出售　　　　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　那条遮件，眼花繚乱，笑買東西人爭艷。

　　　　　依據諺語作三首　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　"千軍易得，一將難求"。不解原由，失好逑。

　"人過留名，雁過留声"。曉歸雲影，帶余情。

　"瓜無滾圓，人無十全"。神前莫献，買福錢。

曄歌

　　　　　三　首　　　　　　　　　千葉県　高橋香雪
　　店繁華。月餅満載，酒與茶。

　　登香山。電梯秋風，遊子顔。

　　桂香浮。尺書未到，胸裏愁。

　　　　　二　首　　　　　　　　　東京都　石塚梨雲
　　樹々紅。車窓絶景，旅愁中。

　　坐書楼。一片秋心，往時悠。

　　月有陰。梧竹当窓，夜沈沈。

詞

　　　 　南郷子・"摩周湖"俯瞰　　　　神奈川県　萩原艸禾
　　山路雨初収、眼前一水大摩周。青壁四望連嶂静、悠悠。仰看高天風意柔。
　　深碧入双眸、浅紅映水適清遊。風韻尋来探勝旅、油油。晴朗澄神千里秋。

　　　　　菩薩蛮・留学日本満四周年作　　　千葉県　陳　興
　　客間愁恨知多久，開心一対傷心九。昨夜夢帰時，醒来星未稀。
　　秋来涼気返，只是陰雲満。楓葉幾時紅，城西紛落中。

　　　　　釵頭鳳・熊 　　千葉県　今田莵庵
　　山熊熄。郷人集。不侵相互豊栖域。枝頭実。秋果溢。冬眠時近，獣忙漁食。溺。溺。溺。
　　颱風激。森穣失。餓熊来襲良田匐。農民叱。少童慄。振鈴通学，喚声休魄。嚇。嚇。嚇。

　　　　　調笑令・私　奔　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　雲涌，雲涌，日日花心欲動。娥眉翠黛脣紅，相思性異梦同。同梦，同梦，春起私奔抱甕。

　　　　　調笑令・山櫻花下梦天仙　東京都　石倉鮟鱇

　　堪賞，堪賞，玉貌春誇酒量。佯狂舞入櫻雲，艷唱妖搖絳脣。脣絳，脣絳，姿態乗風任放。

　　　　　十六字令・冬飲十四韵　　東京都　石倉鮟鱇
　　冬，大雪封門宴未終。人何處? 厠所月玲瓏。

　　窗，寒月皚皚照墨江。人何處? 厠所鼓詩腸。

　　妻，莫難朱顔踏雪歸。辛勤處，人要酒温臍。

　　壺，靈液温臍灑世途。流光早，雪滿老殘鬚。

　　来，我賣藏書作酒材。凌寒醉，踏雪尽吟才。

　　脣，長夜温臍喜酒醇。氷肌染，花点臉邊春。

　　寒，踏雪嫦娥照我還。荊妻叱，酒聖醒人寰。

　　澆，陪酒佳人媚笑妖。堪瞻仰，壁挂畫中嬌。

　　歌，誰誘桃源伴酒魔。沈沈雪，靜夜幻聽多。

　　誇，酒量長留旧友家。重杯處，窗外雪無涯。

　　昇，日照皚皚雪快晴。飛麻雀，爽朗宿酲輕。

　　愁，鏡裡朱顔雪満頭。三千丈，偏願梦春游。

　　斟，醇酒三杯鼓寸心。年年老，巴調祭詩吟。

　　簷，雪舞沈沈夜正酣。人呵筆，不顧醉吟凡。

言論筆譚

　　　　　　　　　短詩の字数をめぐって　　　　　　　石倉秀樹
　９月に北京で開かれた２００４年中日短詩研討会では、「短詩」の"字数"をめぐって中国の出席者から多くの発言があった。４０字までの詩詞を「短詩」とする方々と５０字程度のものも短詩として認めようという方々が、それぞれに考えを述べた。

　４０字までであろうと５０字程度であろうと大差はない、はじめ私はそう思いながら拝聴していたが、「短詩」の普及を図るうえで、この４０字あるいは５０字のいずれをメルクマールとするかは、中国の詩壇にとってはけっこう重要な意味をもつものであることに気がついた。以下、私見を述べる。

　研討会そのものの目的は、「短詩」の普及を通じ日中の詩人の交流を深めていこうとするものである。そして、この取り組みの背景には、元曲以降７００年余の空白を超える新しい定型詩である漢俳・短歌、さらには中山先生提唱の曄歌・坤歌・瀛歌・偲歌の普及を図っていくねらいがある。

　しかし、交流推進の立場からは、その道具は漢俳・短歌と中山新短詩に限定されるべきでなく、門戸は広く開かれるべきである。絶句や律詩、さらには十六字令などの短い詞もこれに加えるべきだ。そこで「短詩」。漢俳・短歌、さらには中山新短詩でもなく、詩や短い詞曲をも含む「短詩」。

　ところで、「短い詞曲」と一口にいっても、間中好、慶宣和、三台令、南歌子、江南好、漁歌子、長相思、相見歡、風光好、定西番、醉太平、中興樂、感恩多、蝴蝶児、添声楊柳枝、太平時などなど、たくさんある。上記は、平声押韻のものだけ、これに仄韻押韻、平仄換韻押韻などの短詞、さらに天淨沙、凭欄人などの散曲も加えなければならない。加えて上記は、いずれも４０字以下、これを５０字程度に拡げれば、雨後の筍。

　もとより４０字か５０字かは、これらの詞をどう扱うかではなく、七言律詩を「短詩」に入れるかどうかを、大きな争点とするものである。詩を書き慣れたバランス感覚からは、五言律詩４０字は短詩とし、七律５６字は「短詩」とはしないとする考えには、多くの人が違和感を覚えるに違いない。

　それをあえて「短詩は４０字まで」とする理由はどこにあるのか。ここで、「短詩」の長所を原点に戻って考えてみたい。

　日々ますます忙しくなるなかで詩は短くなる宿命にあるとは、「漢俳」をめぐって、２０００年の研討会で中国側の林林先生からお聞きしたある詩人の言葉だ。詩人も読者も日々忙しいなかで、詩詞を作り詩詞を鑑賞する命脈をどう長くし、詩作りの裾野を広げていくかを考えるなら、詩は短くても作り甲斐があり、鑑賞するに足るものであることに心を砕いていくべきである。これに加え「短詩」には、容易に憶えることができ、暗誦することができ、通勤や通学などの歩きながらでも、詩を愛し詩を楽しむことができるという長所がある。また、詩を通じての日中交流の上でも、日本の詩人に長詩を求めることは実際的ではなく、「短詩」の方が有利である。

　しかし、そういう短詩の長所を踏まえたうえでも、「５０字程度」の立場にからは、七律を排除する明確な理由はつかめないし、日本の詩人には、「４０字以下」として七律を排除する理由は、さらにわかりにくいことに違いない。

  この疑問を解くためには、日中の詩作りには大きな差異があることに目を向けなければならない。私たちが作る「詩」といえばまず絶句であり、七絶が主、五絶はともかく五律や七律はあまり書かれない。一方、中国では、書店に並ぶ出版物を見ても、また、個人の私家版を見ても、圧倒的に七律中心である。つまり、わたしたち日本人は、読むにしても作るにしても、中国人に較べおよそ半分の字数で、詩が提供する情感に、けっこう多感にひたりきることができるのである。われわれの詩文化は、そういう位置にある。あえていえば、われわれの詩文化は「七絶」的、中国は「七律」的。

　この日中の詩文化の差を踏まえるなら、「40字以下」とする主張は、これまで親しみ慣れてきた「七律」の文化にいったんは目をつむり、未開拓の「七絶」的文化に意識を振り向けようとしているのだと思えてくる。食べなれ見慣れた美味しい料理からあえて眼をそらし、食べ慣れない新しいメニューに挑戦してみる、そういう意図が見えて来る。メニューに七律もありますということになれば、ついついそれに箸を付けてしまうから、きょうは七律のないメニューを選ぶ。七律は、明日食べればよい。「短詩40字以下」論の背景にある考えは、そういうねらいがある。そして、このねらいはもとより、「七律」の文化をすべて捨て去るということではない。今日は短詩、明日は七律。いずれにしろ、日本人には日本のコメが一番、そういって米のメシの絶句やたまにのサシミの律詩ばかりを食い、漢俳という名のヌーベルクイズィーヌシノワーズである点心には箸を向けることのない畳の上の和服の詩人にはわかりにくい風味がそこにある。



吟社の窗

▼１０月２２日金中氏の漢詩朗誦会が滝野川会館大ホールで開催された。葛飾吟社会員十名ほどが聴衆として参加した。多分全体で四百人ほどの聴衆があったと思う。
朗誦は孟浩然、王維、李白、柳宗元、王翰、王昌齢、張継、杜牧、朱熹、白居易、それに金中さん自身の翻訳による、土井晩翠の『荒城の月』『星落秋風五丈原』阿部仲麻呂と藤原定家の和歌、さだまさしの『抒情小夜曲』と、才気縦横に溢れた作品が歌われ、最後は長編詩、白居易の『長恨歌』陶淵明の『帰去来兮辞』で閉められた。
切々たる朗誦は、中国語への理解を超えた哀歓を聴衆に与えた。中国人の学生さんが大分お手伝いをされていて、日本語達者な女子学生と話したが、やはり古典に通暁している人は少ないように思われた。先般の「中日短詩研討会」とも考え併せて、今後の詩詞文学を通じての交流を、いかに発展させて行くべきか考えさせられる。

　▼わが国でも現代中国語を学ぶ若者が激増しているのは事実だが、残念ながら漢詩漢文の古典教養は大いに低下してしまっている。この傾向
中国でも同様であると思われる。中国詩詞を知る人は中国語ができない、中国語を習得した世代は古典に不案内。この矛盾をどう解決したらいいのか。漢字文化圏の根幹を築くために、心ある両国の知音が手を携え合って地道な努力して行く以外ないのであろう。文化交流といえば派手な映画、舞台、絵画、音楽といった、ビジブルなマテリアルばかりに気が向いているのが現代であるが、文字という人類が獲得した動物から最も遠い表現手段を、蔑ろにして人類の進化が実現できるだろうか。もう一度真の文化を考え直してみる必要があるのではないだろうか。

　▼休会会員になっている坂口明子さんから招かれて、１０月２日英国俳句協会の前会長のデビッド・コブさんにお会いした。外国人が俳句文学に示す興味とアプローチには、欧米人にも中国人にも共通するところが感じられた。殊にシラブル数を出来るだけ五・七・五に近づけたいとする努力は類似するところがある。ただし漢字という表音文字については、通常の欧米人には理解の行き届かないカテゴリーである。

　▼個人的な旅だが出雲へ三日行ってきた。折しも小泉八雲没後１００年の展覧会が行われていて、名作『耳なし法一』の原稿展示はことのほか興味をそそられた。夫人のせつさんは、話をしながらそれを八雲のためにローマ字で記録している。それを見ながら八雲が英文を書いている。「門を開け！」というところは、八雲が「リズムが悪い。もっと他にいい呼びかけ語は無いか？」と尋ねている。せつさんが「カイモーン！」ではどうかと尋ねると、「それだ！」ということになる。散文ですらこれだけリズムが大切なのだ。ましてや詩文においておやである。また当時、外国人と築く家庭のコミュニケーションが、いかに困難なものであったか、全部カタカナで書かれた八雲のせつへの手紙や、四人の子供が父へ書きおいた英語の走り書き等々、参考になるものが少なくない。この展覧会は松江の八雲旧邸隣の「小泉八雲記念館」で来年３月まで行われている。

　▼前号所載の石倉先生の『中国詩詞の高い生産性と新短詩の将来』について、いろいろ反響があった。或るマルコポーロの研究家から、「マルコポーロはフビライに仕え中国文化に深い理解を示した有能な官僚だった。火薬や小麦粉を伝えたのは別人ですよ。」との指摘もあったが、総じて東西詩詞構造へのアプローチは好評だったと思う。『梨雲』では、今後も評論を大事に扱って行くべきだと思う。（莵）

十二月號

詩

　　 　　詩文交流　　　　　　　千葉県　今田莵庵
　　人類以何異獣禽，即当用字不伝心？
　　白狐舞踏秋叢野，黄鳥来鳴春疎林。
　　電映時時模裸性，詠詩役役作知音。
　　中瀛両国交流興，同文同軌含蓄深。

　　 　　松江宍道湖温泉　　　　千葉県　今田莵庵
　　松江湖畔湧温泉，灯影頂鏈昨夜燃。
　　蜆貝漁舟醒早暁，鋤簾長棹奮餘烟。
　　下車鉄路観光客，楽話足湯站後縁。
　　暖脚方言徐理解，雲州入忽遇神仙。

　　 　　訪小泉八雲旧邸于松江有感　　千葉県　今田莵庵
　　八雲文士"愛蘭"人，"美国"離来四十辰。
　　白汽船辿"東海"水，黄包車踏"出雲"瀕。
　　武門才女身辺助，　夕語幽談小説�堰B
　　旧邸百年留旧景，　古城鬱鬱水濠隣。
　　（注）小泉八雲；Lafcadio Hearn。1850生希臘愛蘭人。作家。美国新聞社勤務後　1890年来日帰化。出雲Izumo；島根県旧称。

　　　"京都展"披露"芸妓舞妓"　千葉県　高橋香雪
　　京都芸妓"叶干沙"，今秋祭礼扮演"巴"。
　　誰和一同催妙舞，竝肩拍照眼生華。
　　　　（注）叶干沙；芸妓名。　巴；武将木曽義仲愛妾。祭礼；京都時代祭。

　　 　寄松江風流堂日俄戦役百年記念復刻甜菓"日本海" 千葉県　今田莵庵
　　俄国艟艨滅大瀛，雲州甜商祝心傾。
　　椀中□点温湯瀉，美味甘汁新作生，　　□＝米羔。
　　餅干旭旗浮上面，糖平縞幟下沈泓。
　　今模百歳先人業，両片伴漂親善情。
　　　（注）俄国；Rosia。

　　　　　悲阿拉法特 　　　　　千葉県　陳　興
　　曾従電視識阿翁，今日斯人却化風。
　　頭戴国旗居海外，心懐理想病家中。
　　英雄死去憐方起，魂夢帰来恨未終。
　　戦事有因難避免，煙雲何処満晴空。

　　 　　　朝　霧　　　　　　　　　千葉県　陳　興
　　朝来驚見満城霧，霧未散時迷我途。
　　如此也堪称一景，留連却嘆瞬間無。

　　　　　帰　国　　　　　　　　　　千葉県　陳　興
　　帰国之前買機票，電車新宿駅中停。
　　飛機駅外藍天上，疑向吾心所往行。

　　　　古詩　中越地震五首　　　神奈川県　山田鈍耕
　　　　"妙見峠"崩落
　　戌辰妙見路斜通，虎闘竜争互争雄。
　　中越震災襲車輌，落崩惨状古今同。

　　　　"新潟中越地震"
　　山紫水明墳墓郷，震災襲来濁流汪。
　　住民混乱避難急，天帝威力断人腸。

　　　　　鯉（山古志村）
　　錦鯉養魚発祥村，震源直上撃波奔。
　　池塘崩壊渾一夢，麗質飛天僅保存。

　　　　　牛（山古志村）
　　鈍音角突闘牛郷，地震災難千里翔。
　　路崩渓裂天忽暗，荒村廃屋對斜陽。

　　　　　長岡今昔
　　戌辰戦役火攻街，中越池妖土水埋。
　　人害天災交互至，常為戦場入壮壊。

　　　　古詩　同期会旅行　　　　神奈川県　山田鈍耕
　　旧友十位軽車旅，満山紅葉肆閑行。
　　校歌斎唱騒音事，社公覚醒使人驚。
　　注：社公；土地の神

　　　　　　地震感懐　三首　　　神奈川県　高橋子沖
　　　　　一　"濃尾"震災百年
　　地形隆起古跡徊，被害住民総泉台。
　　山峡長閑遊客誘，薫風芳草百花開。

　　　　　二　"阪神"震災十年
　　栄光都市壊塵嘆，惨状可憐不絶看。
　　民衆恰如不死鳥，雄雄復活再興歓。

　　　　　三 "中越"地震感懐
　　地裂山崩倒屋充,　住民恐恐対応窮。
　　幼児救出隊員耀,　緊迫支援国内隆。

　　　　新潟県中越地震　　　　　東京都　田村星舟
　　激震乾坤幽暮時，住房壊潰僅少屍。
　　可驚崩落土砂下，奇跡生還二歳兒。

　　　　　行漓江　　　　　　　　東京都　田村星舟
　　游渚魚鷹和少年，漓江滾滾往来船。
　　楼台傍水揺青水，竹樹臨風掃碧天。
　　字字吟情顕客意，盈盈意気競精妍。
　　初知形勝惟如夢，萬古千秋景自研。

　　　　自衛隊観閲式　　　　　東京都　田村星舟
　　　　于陸上自衛隊朝霞駐屯地
　　騒音逾夥馳街里，旋翼飛機旋轉空。
　　却覚不安国際計，鐵鯨鐵馬聖人弓。

　　　　　　言　志　　　　　　東京都　金　中
　　窗外晨光桐葉搖，枝頭鳥語衆聲悄。
　　身居簡室研書密，懷慕先賢立志遙。
　　萬里宏程通碧海，一腔熱血似春潮。
　　青山不阻東流去，自信將游"日本橋"。
　　（注）日本橋位于東京中央区。周圍一帶即爲日本交通和商業中心

　　　　遊東京廸斯尼樂園"幽霊公館"（Haunted　Mansion）　東京都　金　中
　　古寓森然瞠目姿，軌車徐駛暗中時。
　　廳堂雨雨幽霊影，起舞翩翩華爾茲。

　　　　遊東京廸斯尼樂園"巨雷山"（Big　Thunder　Mountain）　東京都　金　中
　　列車徐動響突突，探検當年採礦途。
　　高速穿梭坑道裡，放聲揮臂一歡呼。

　　　　遊東京廸斯尼樂園"星際旅行"(Star　Tours)   東京都　金　中
　　横沖騰上夜天庭，宇宙無垠萬点星。
　　霎那眼前生隧道，此身光速作飛行。

　　　　北伊、南法紀行　　　　東京都　齋　游子
　　　　　一　空港偶成　阿姆斯特丹（ｱﾑｽﾃﾙﾀﾞﾑ）
　　低雲流去似游鰹，高物如鱗淡淡連。
　　忽怪飛機離陸滑，恰如魔女又如仙。

　　　　　二　水都舟游　威尼斯（ﾍﾞﾆｽ）
　　舟游古都暮，海上點灯連。水路巡街狹，石橋投影圓。
　　潮盈礎常漬，物換屋逾堅。適意棹歌調，有情覊侶縁。
　　應機談笑處，月掛淡烟天。

　　　　　三　水都懐古　威尼斯（ﾍﾞﾆｽ）
　　中世南欧制海王，隆隆國富覇權強。
　　今聞嫋嫋棹歌調，月下舟游有古香。

　　　　　四　海港暮色　熱那亜（ｼﾞｪﾉｱ）
　　秋日欲暮蒼海平，一船出港點灯行。
　　孰知前路向何處，却怪暮天飛鳥輕。

　　　　　五　古都夜色　佛羅倫薩（ﾌﾛｰﾚﾝｽ）
　　文藝復興地，夜色轉清寥。月光明如晝，皎皎照中霄。
　　萬里來訪處，遺芳今尚饒。活活先人力，元氣今可描。
　　敢然�ﾌ炬火，對神恰如挑。百灯逝川上，爛眼投影漂。

　　　　　六　海濱偶成　尼斯(ﾆｰｽ)　排律隔句對
　　東奔西走旅，一日有閑行。雨霽雲開處，白鴎翻海輕。
　　車駆人語路，黄葉映松鮮。呼興百珍市，任風千里情。
　　恍然忘戰火，恬淡蔑虚名。無事悠悠意，晩秋塵外城。

　　　　　七　聽尼斯觀光指南法語有感
　　舊城臨海路羊腸，行客勝游秋色長。
　　驚耳指南流麗語，有誰琢出此文章。

　　　　　金秋戲作　　　　　　　　東京都　齋　游子
　　桂花紛散萬黄優，柑果半黄金氣稠。
　　豐潤黄黄尤適意，黄昏反照一庭秋。

　　　　　秋夜即事　　　　　　　　東京都　齋　游子
　"焼芋商人"吹笛行，坐催空腹一書生。
　　秋宵無月寂寥處，却聽叮窓驟雨聲。

　　　　　季秋偶成　　　　　　　　東京都　齋　游子
　　胡桃落果暴風秋，疎咽老蛩催暗愁。
　　聞説山熊現人境，有誰能作共生謀。

　　　　"野良�K"懷古　　　　　　東京都　齋　游子
　　今看�K狗誕生霄，懷古雄姿與愛嬌。
　　白首閑閑無頼日，童心偶像底堪消。

　　　　　梯田　中越地震　　　　　東京都　齋　游子
　　重畳耕地至天空，稲穂美姿指顧中。
　　地裂水噴村路絶，偏祈再興"越光"功。
　　（注）越光：新潟県的特産米コシヒカリ

新短詩

1． 曄歌

　　　　曄歌三首　　　　　　　　千葉県　中山逍雀
　　　　于茨城県新治郡新治村本郷
　　落楓軽。枝頭紅柿，葉葉聲。

　　迎霜時。淡淡桜花，欲寄誰。

　　年少苗。紅雨幾年，恨二毛。

　　　　曄歌二首　　　　　　　　千葉県　中山逍雀
　　　　于千葉県松戸市自宅
　　耐寒株。東風細雨，嫩芽舒。

　　青壁寰。鑿岩蓄水，玉蕋鮮。

　　　　曄歌一首 　　　　 　千葉県　中山逍雀
　　　　于栃木県日光市霧降高原霧降之瀧
　　一条水。春夏秋冬，已幾歳。

　　　　曄歌一首　　　　　　　　千葉県　中山逍雀
　　　　于北海道稚内
　　北海涯。青春心里，誰人知。

　　　　　曄歌四首 　千葉県　中山逍雀
　　　　　于北海道利尻
　　母子島。阻寨寒風，緑襁褓。

　　獨生島。怒濤歳月，堂堂貌。

　　満身香。砂礫痩土，結寒光。

　　兄弟島。姉兄弟還，眞成好。

　　　曄歌二首　　　　　　　千葉県　高橋香雪
　　華表前。盛装少女，菊花天。

　　起朔風。茶梅散乱，秋色中。

　　　　　曄歌五首　　　　　　　東京都　石塚梨雲
　　夏雲多。立志十年，一鳥過。

　　風雪中。青雲路遠，未成功。

　　桂樹芳。喜怒哀楽，六十霜。

　　笹竹音。秋声颯颯，夜色深。
　　（笹竹の葉ずれかすかに夜の秋）

　　鳥帰林。諸事忘吾，歳月深。



２．坤歌
　　　　　坤歌二首　　　　　　　千葉県　高橋香雪

　　暴風雨。蔬菜高貴，銹農具。

　　發福躯，報應飽食，道義虚。

　　（注）發福躯；おデブちゃん



３．偲歌

　　　　　偲歌三首　　　　　　　千葉県　秋山北魚
　　困惑変心，夢醒還疑。雷神裂響，孤入幃。

　　被乖一切，復傷別離。秋、蟋蟀悲，楓葉飛。

　　獨空對酒，低唱情歌。鬱蒼庭樹，樹隠鴉。（通韵）

　　　　　偲歌・用成語三首　　　東京都　石倉鮟鱇
　　群盲摸象，吟客論詩，東邊日本，擬唐時。

　　伴花傾醉，如魚得水。人怕錢包，度年尾。

　　班門弄斧，画餅充飢。東施随處，效顰痴。

　　　　　偲歌十二首　　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　醉耐三冬，欲飲千鍾。梦游仙洞，對花容。

　　月照荒涼，人慕茫洋。妖花壁上，画中娘。

　　羨望天資，没有瑕疵。花言悦耳，讃吾詩。

　　醉中含笑，笑裡藏刀。花間春老，瞼波妖。

　　塗中曳尾，花底游魂。晩節探春，頻醉人。

　　放棄圖書，堅持玉盞。半梦如愚，住酒館。

　　塵界辛勞，酒郷安逸。辯白巧妙，依靈液。

　　傾盞愉愉，順性徐徐，游魂鼓羽，入方壺。

　　酒洗秋哀，人鼓詩才。嫦娥作態，照涼台。

　　人醉酣春，花慰辛勤。笑仰櫻雲，吟蕩唇。

　　日照朱顔，天奉銀盤。人游青眼，仰藍山。

　　酒洗辛酸，人恕愚頑，醉呶不短，借団欒。


４．漢歌

　　　　　漢歌・偶　作　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　梦拝泥菩薩，誘吾浮舸渡天河，傾杯共唱歌。濤亂星間闘酒魔，眼花耿耿醉銀波。



５．漢俳・漢歌

　　　　　漢俳・晩秋海色　熱那亜　東京都　齋　游子
　　雨氣呼暗雲，晩秋水天渺難分。胡爲十字軍？
　　　　原：史傳欲問君

　　　　　マルコポーロ　　　　東京都　齋　游子
　　東方見聞録，執筆臨海牢檻寮。思逐盧溝橋。
　　　　原：中世水都産，遠旅東方記見聞。多興千載文。

　　　　　漢俳・詩酒二首　　　東京都　石倉鮟鱇
　　詩酒共吹香。正是醉郷游羽客，吟境涌霞漿。

　　梦魂游九泉。笑問詩仙呼不應，詩聖苦無錢。

　　　　　漢俳・探　春　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　山櫻舞雪春。又愛老鶯流雅韵，美酒洗枯腸。

　　　　　漢俳・佳勝鼓詩腸　　東京都　石倉鮟鱇
　　吟情日日衰。試問春櫻飛雪處，秋月破雲時。

　　　　　漢俳・春　梦　　　　東京都　石倉鮟鱇
　　花陰陪睡魔。梦對仙娥舞春袖，魍魎弄秋波。

詞

　　　　　酔花陰・神在月 千葉県　今田莵庵
　　晩秋何謂"神無月"，全国祠堂歇。神挙去雲州，不在閑宮，樹散紅黄葉。
　　雲州却謂"神在月"，大社多顔謁。雨謀降巫山，議了還郷，翌年良縁決。

　（註）神無月kan-na-zuki：是旧暦十月別称，相当新暦十一月。
依日本伝承，此月全国祠神集合于出雲大社催会議，謀決全国有縁男女婚姻。

　　　　　思遠人・文官俑 千葉県　今田莵庵
　　兵馬俑悠久布武，佩剣捧戈立。始皇帝遠没，二千余歳，鎮護向東及。
　　文官俑得伝香域。袖手睨空黙。帯砥石琢何？八身唯残，遙望似顔泣。
　　（註）文官俑：2000年于西安兵馬俑東方新発見文官俑八体，
内一体招来陳列東京。

　　　　　揚州慢・北京秋天口占　東京都　石倉鮟鱇
　　天地中心，天安門上，紅旗風巻翩翻。看人都�K髪，認我也黄顔，憶遠祖、浮舟破浪，滿帆渡海，来到荒邊。有亡魂，懷土同文，今日歸還。
　　景山一望，夕陽長、紫禁城閑。似鵬降蒼穹，猶張金翼，堂宇相連。歩歩詩腸胎動、探清韵、暫聳吟肩。問中秋明月，何年再共嬋娟？

　　　　　于飛樂・上八達嶺立長城有感　　　東京都　石倉鮟鱇
　　碧落飛雲，長城萬里攀山，如龍防衛縁邊。望西方，聽鼓角，半梦遙看，連峰狹谷，通沙漠、一陣風烟。
　　我是東夷，蒼溟圍處，探花翫月空閑。喜和平，安野性，未嘆無錢。華人汗血，滲黄土、歴史連綿。

　　　［中呂］迎仙客十九韵　　東京都　石倉鮟鱇
　　聽晩鐘，念花容，仰看嫦娥傾醉慵。歳將窮，梦不通，獨耐嚴冬，長慕人眠冢。

　　落照黄，遠烟蒼，獨看西窗醉流光。病中花，畫裡娘，人慕茫洋，半梦無眠仰。

　　綴玉枝，擬唐詩，笑對紅梅吟誦時。和鶯啼，賞艷姿，稱讚天資，搖吻留花底。

　　醉眼迷，醉魂飛，梦化蒼蠅銀翅輝。舞黄昏，入絳閨，嘆賞胡姫，跨馬貪交尾。

　　露雪膚，笑狂夫，梦魔艷然招玉壺。有白頭，迷紫府，交媾愉愉，夕寤聽春雨。

　　有野翁，醉陽台，戀慕斜陽無点埃。憶人生，傷老懷，獨入秋哀，瞠目西霞彩。

　　抱酒壺，仰櫻雲，飛雪繽紛風乱巡。聽黄鶯，伴絳裙，人醉酣春，乗興吟搖吻。

　　唖酒杯，落暉灣，傾醉茫洋秋倚欄。水光寒，月色闌，臨照朱顔，空老爲樗散。

　　作散官，戀重巒，帶同老妻投駅館。浴温泉，共笑歡，酒洗辛酸，對飲襟情緩。

　　抱酒壺，仰花天，滿目櫻雲飛雪旋。鼓吟腸，聳老肩，笑弄春烟，覓句將流眄。

　　醉樹陰，梦桃源，笑對天人迎艷然。絳脣花，緑酒泉，共醉香烟，乗興春沈湎。

　　問酒家，作詩豪，聳肩蕩唇乗怒濤。唱歌長，醉眼高，好也阿嬌，稱讚吾吟巧。

　　問酒家，對仙娥，艷笑化爲煩惱魔。弄花言，送瞼波，人可如何，老境燃情火。

　　抱酒壺，仰櫻花，悦目乗風飛雪佳。和鶯吟，搖吻誇，即興詞華，碎錦情無假。

　　仰雪花，似蝴蝶，片片乗風旋視野。賞春櫻，試口舌，探韵佳絶，暫作詩豪也。

　　抱酒壺，仰山櫻，飛雪乗風輝日景。弄春光，却市声，唱和黄鶯，白首將吟詠。

　　抱酒壺，似猿猴，身在仙家消内憂。對黄頭，輝碧眸，再擧金杯，醉更交紅友。

　　弄物華，歩春林，游目晴天殘雪岑。聽鶯啼，有叟吟，唱和披襟，覓句誇天稟。

　　轉鏡光，映花潭，悦目嫦娥春意酣。想豐頬，坐夜巖，戀慕眈耽，老去猶傷感。

　　日景長，月娥纖，凭欄景光湖水添。暮山高，老叟恬，試蕩舌尖，覓句秋愁染。

言論筆譚

　　　　　　金中さんの指正に謝す　　　　石倉秀樹
10月に開かれた金中さんの朗誦会について２首をお贈りしたところ金さんから丁寧に指正していただきました。わたしの立場からの弁明の適否も含め、みなさんの漢詩作りの参考にしていただければと思い、この稿を書きます。

　　　　　　　其　一
石倉作：
滿堂無酒都人醉，言志聳肩鳴凰豪。
洗錬雄渾亦悲慨，千年風韵破風濤。

金中案：
滿堂無酒人皆醉，神采飛揚鳴凰簫。
宛転雄渾亦悲慨, 千年風韵破風濤。

金中：「都人醉」は正しい語順では「人都醉」です。「人皆醉」にしたほうが古めかしく、典雅に聞こえます。
石倉：語順の件：起句・承句を対仗にするため語順を変えました。ただ、「都人醉」と「鳴凰豪」は、語の修飾関係のうえでは対になっても、語の品詞（名詞、動詞、形容詞など）の対応がゆるいことは承知していました。
石倉：都→皆の件：「古めかしく、典雅」なるほどと思います。

金中：「言志聳肩」：このような並列の構造を取っている七言句の前四字は、二字と二字が対になれば形が整えて都合がいい。「言志」は「聳肩」と対仗になるような具体的な身体表現に直すか、あるいは「聳肩」を「言志」と対仗になるような表現にするかは一つの案です。但し「鳴凰」との繋がりを考えると、私なら「神采飛揚」といった表現にしたいです。　


石倉：「神采飛揚」。美しい言葉ですね。こういう言葉は、日本人には書けない。ただ、「滿堂無酒人皆酔」と合いますでしょうか？余談ですが、「滿堂無酒」、この句は小生、けっこう気に入っています。私自身の感性のどうにも変えられないものとして、言葉の落差あるいは乖離・対比はできるだけ大きい方が楽しいという語感があります。ここではキーワードは「酔」。美酒に酔うのはあまり面白くありません。「酒無く」して酔う方が面白い。そして、「無酒」をさらに強調するものとして「満堂」。わたしの詩がめざす方向にそういう語感があります。

「言志」は「歌永言，詩言志」からとっています。最初は、「揺吻聳肩」。「揺吻」は「詩韻含英異同弁」からの言葉。しかし、句中対としてあまりに素直すぎるし、「鳴鳳」が「揺吻」ではスケールが小さい。そこで、実辞である「聳肩」に虚辞である「言志」を対応させ、「虚実対」のつもりで書いています。「志を言う」「肩を聳やかす」。「虚実対」で対をなすのは、文法構造だけ。「動詞+名詞」。この理解、間違いでしょうか？

金中：「鳴凰豪」の「豪」は、「鳴凰」との繋がりにやや違和感があります。「鳴凰簫」にしたらいかがですか。「簫」の字は「凰」との組み合わせが多く、実際朗誦の伴奏音楽を指します。

石倉：「鳴凰簫」。そのとおりですね。作者としては、起句と対にすることばかりにこだわっていましたので、動詞・形容詞ばかりを捜していました。「豪」は、「好」「浩」に音が通じるかもと思い書きましたが、「やや違和感」とのこと、作者の立場からは、「これで大丈夫？」とのいささかの不安感がありました。ただ、金中さんの朗誦の印象が、日本語の「豪快」に聞こえましたので、マア許されるかと思ったのですが。。。

金中：「洗錬」はやはり和語の感じがします。この場合、「雄渾」や「悲慨」と、逆のイメージの言葉がよいです。「柔らかい」という意味の「宛転」はいかがですか。

石倉：「洗錬」、「雄渾」、「悲慨」は司空図の「詩品」から選んでいます。そこで、和語ということはないのでしょうが、小生、和語化した理解をしてしまっているのかも知れません。
　　　ただ、さすが金中さんの感ありです。「洗練」は、詩文の批評には使えても朗誦の様態を形容する語としては、ちょっとお門違いかなと思っていました。また、「雄渾」や「悲慨」とは違うイメージの言葉を捜すことは考えており、そこで「洗錬」を選んだのですが、和語化した理解では「繊細」などいささか線の細いイメージがあり、そういう語を句頭にもってくるのがよいかと思っていました。

「宛転」。これも「詩品」にあったかと思います。しかし、小生の眼、そこには行きませんでした。日本語の漢語のなかで「宛転」はなじみが薄く、「洗練」にはなじみがあり、そういうところでの無意識の選択が働いたのだと思います。「宛転」、いい言葉を教えていただきました。

　　　　　　其　ニ
石倉作：
　　青雲渡海到蓬莱，鳴鳳雄姿踏舞台。
　　千載佳吟凝朗誦，華風吹処万紅開。

金中案：
　　　青雲渡海到蓬莱，鳴鳳清姿立舞台。
　　　千載佳篇吟誦処，華風吹徹万紅開。

金中：「鳴鳳雄姿踏舞台」：「鳴鳳」のイメージに合わせるには、「雄姿」を「清姿」に、「踏舞台」を「立舞台」にしたほうがいいと思います。
石倉： 「鳳」は金中さんです。そこで、金中さんをどういうイメージで書くかですが、なるほど金中さんご自身を表現するなら「雄姿」よりも「清姿」の方がピッタリかなと思います。また、「雄姿」はありふれた語、較べて「清姿」は、われわれ日本人にとってだけのことかも知れませんが、とても新鮮です。日本では、勇姿、艶姿などは、よく使いますが、「清姿」はあまり使いません。この

　問題は、本来は形容語+名詞の言葉を一個の熟語として日本語のなかに組み込んでしまうというわたしたち日本人の漢語の扱い方と関連があると思えます。自戒すべきで、ありがたいご指摘です。

　「清姿」に戻ります。「清姿」は「雄姿」に較べ語勢が弱くないですか？「青雲渡海」との関連でいかがでしょうか？

　　　また、「立舞台」か「踏舞台」ですが、日本語では「舞台に立つ」といい、また、「舞台を踏む」ともいいます。朗誦は「立」、舞踊は「踏」かなとも思います。ただ、「立」よりは「踏」の方が語勢に勢いがあると思います。「吐鳳」「鳳舞」「踏舞」、そういう言葉のなかで「踏」としました。「踏」とすれば「雄姿」、「立」とすれば「清姿」ということになるかと思いますが、そういう理解でよろしいでしょうか。

金中： 「千載佳吟凝朗誦」：「凝朗誦」は三字とも動詞で都合がよくない、「千載佳篇吟朗処」というふうに末字を名詞化するといいです。その場合、「華風吹処万紅開」の「処」の字を例えば「徹」に直します。

石倉：華風吹徹万紅開。句中対的で響きがいいですね。千載佳篇吟朗処。納得できます。
そのうえでの作者の弁解になりますが、「凝朗誦」は、「朗誦」を名詞句のつもりで使っています。つまり、ここでもわたしは、上記「清姿」のところで触れた誤りに陥っているわけです。日本語の文脈のなかでは「朗誦」は名詞、「朗誦する」が動詞ですので、ついつい間違えてしまいます。これが文法的和習であること、大変勉強になります。

　ただ、もう少し弁解させていただくなら、先日中国で買った詩法の本に、現代文法との比較で、名詞を動詞のように扱うことがあるということで杜甫の「城春草木深」が引用されていました（「春」は本来名詞。ここでは動詞的に使っている）。もしそうなら、動詞を名詞のように扱うことも許されるかということで「形容語+動詞」である「朗誦」を名詞句として使いました。

　　　この句でいちばん使いたかった語は実は「凝」です。千載の

　佳吟を金中さんが朗誦するのではなく、千載の佳吟が、金中さんの朗誦に集まってくる、そういう意味を「凝」にこめたかったのです。千載の佳吟は、だれでも朗誦できます。日本人はそれを日本風の詩吟で朗誦しています。しかし、朗誦される千載の佳吟の立場に立てば、だれにどのように朗誦されたいのか。金中さんなのか、それとも。。。。　というようなことを考えた次第です。

　　　ただ、「凝」の語義・語感が、それに応えてくれるものであるかどうかは、あまり自信がありません。日本人は、漢語の名詞・形容詞はなんとか自分のものにしていますが、副詞・動詞は日本語との混同が著しく和習におちいりがち、わたしはそう思ってます。

　金中さん、貴重なお時間を割いて丁寧に指正していただき、本当にありがとうございました。漢詩がすばらしいだけでなく、本当はとてもむずかしいものだということは常々思う努力はしていますが、日本人の口からそれを聞いてもあまり真実味がありません。そこを金中さんにここは違うと言われれば、なるほどと思うところが多く、ありがたい限りです。

　そのうえですが、冒頭の「都→皆」につき、少々思うところを述べさせてください。他の作を含めすでにお気付きだと思いますが、わたしはできるだけ現代語を用いてで詩詞を書きたいと思っています。これをするには、まず漢俳・漢歌があり、つぎに曲、次に詞、ということにすべきで、古樸を旨とする詩は、最後にすべきことであるのかも知れません。また、小生が書いている限りの現代語へのチャレンジは、古い語感を豊富に残している日本語のなかの漢語が所詮はベースになっていますので、いくら現代語を取り入れたとしても、木に竹を接いだような造作になり、作品の完成度のうえでは、中途半端のそしりを免れないだろうと思います。しかし、わたしは何もしていないわけではなく、すでに１万首の詩詞を書きました。このことは、世間に向けて何らかの発言を許す勇気をわたしに与えてくれます。その立場からのことですが、動詞や副詞は可能な限り現代語に準拠して詩詞を書くようにした方が、日本の漢詩作りの再生に役立つ作詩運動になるのではないかと思っているのです。

　わたしが学んだフランス文学では、新しい文学を創造するための運動論がさかんで、ローマン主義、社会主義、自然主義、象徴主義、超現実主義、反小説などなど、多くの文学運動が文学史を彩っています。彼らにとってどうしてそのような運動論が必要だったのかですが、彼らは先人たちの作品が優れたものであったことを乗り越え、否定するために新しい運動を起こしたものではありません。先人の作品のエピゴーネンになること、それは私の仕事ではない、私は私の仕事を見つけるといういわば芸術家精神が、とても色濃くフランス文学の伝統に根付いているからなのだと思えます。いいにつけ悪いにつけ、どんなに優れた作品を書こうと、フランス文学ではエピゴーネンは決して評価されません。たとえばわたしが、ボードレールそっくりの詩を書いたとしても、そういう詩をあなたが書く意味はどこにあるのか、という問いを受けるだけでしょう。このフランス文学精神を思うにつけ、日本の漢詩界では、それとはまったく対極の詩の作り方、あるいは指導がなされていないかと思えるのです。漢詩はフランス文学とは違うといえばそれまでですが、創造的であることと同時代的であることをめざさない地平に、明日へ向けての新しい活力は決して生まれてこないということは、洋の東西を問わず真実ですから、わたしは、わたしの頭のなかの遣唐使以来の漢語に、極力現代の言葉も加えて刷新していきたいと思っているのです。
　「都→皆」一字のことで針小棒大なことを書いてしまいました。お許しください。

吟社の窗

▼白川静先生が文化勲章を受章された。心よりお慶びを申し上げたい。漢字という表意文字の成立過程は、後漢の許慎の撰に成る『説文解字』を以て権威としてきたが、白川先生は１９００年の後に異説を提唱され中国人を驚かせた。先生は９４歳という高齢のため授与式に上京されなかったが、NHKアナウンサーが京都でインタビューした談話を数日前払暁に放送していた。その中にこんな話があった。「おもう」という日本語は多くの意味を持っている。日本が漢字を採用したとき、多くの漢字を「おもう」と読ませた。懐＝懐かしむ。憶＝覚えている。念＝念ずる。想＝想定する。等の字をみな「おもう」と読んで日本語の表現力に幅を持たせていた。ところが戦後「思」だけを「おもう」と読んでもいい、それ以外の字は読むことを禁止した。思の字の田の部分は脳で心は心臓を表す。つまり思い悩むの意だという。この辺は白川先生の面目躍如だ。「みる」というのも「見」だけがそう読めることにした。その他の視＝注視する、看＝看とる、観＝鑑賞する、覧＝見渡す等は「みる」と読むことを禁じた。こうして日本語の表現力はやせ細った。アメリカの国語改革勧告の尻馬に乗って誤りを犯した罪は大きい。そもそも二百年の歴史しか持たないアメリカ人に日本語の複雑な歴史など解る筈もないと語っておられた。

▼先日松江の小泉八雲旧邸を訪れたとき欄間の扁額の達筆に感嘆した。一つは副島種臣の「励志図報復」もう一つは山岡鉄舟の「水沈香薫錦雲源処」。士大夫が詩文に励む慣習は、ついこの間まで日本も中国も同じだった。今は解説もなく観光客も目を留めない。

▼四先生の揮毫を得て『梨雲一邑』が完成した。林林先生の「秋涼須温暖，親善結詩縁。」孫軼青先生の「短歌俳句共高吟，衣帯情随格律深。詩国東瀛邀遠客，只縁遠客是知音。」李克英先生の「甘露◇軽塵，雨打芭蕉品味新。翠竹更精神。」楊平先生の「楼頭風雨驟，眉間好句天成就。霽開山緑透。」いずれも玉筆。楊平先生揮毫の漢俳は林岫先生の岳陽楼での秀吟である。先日、陳興さんがこの本を見て、立派な合同詩集ですねと絶賛していた。会員の皆様の浄財で印刷費も十分賄えたようだ。ご協力に対し感謝の他はない。◇＝シ＋邑

▼新会員高橋渉氏が入会された。カヤバ工業社員としてジャカルタに滞在された経歴をお持ちである。莵庵が滞在した時期の一寸前らしい。世の中は狭いものだと思う。

▼本年も残り僅かになった。颱風、地震と災害の多い多難な一年だった。会員の山田鈍耕さんは小千谷の出身、地震当日長岡高校同窓会参加のため長岡にいて、上野に帰り着いたところで地震が起きたとのこと。斎川游子さんも新潟の出身で醤油醸造業の弟さんが長岡で震災に遭われたという。来年は酉年。飛躍の新年であることを祈りたい。（莵）