漢詩詞同人誌14年10-12 文化交流漢詩詞結社葛飾吟社
表現在心里顕現的東西 中山 栄造
所謂作詩，謂贏得制作詩的事。「［口那］个那様，要是写就行了把注意轉向？」，直率地没説根本。何処的誰説了不知道，不過，「表現眼顕現的東西」据説有謂得言詞。這個言詞，是日本人造就的作品的質量使之下降的根本的原因。
如果這個言詞従頭芯不消失，「［口那］个那様?要是写就行了？」多少花費時間，浪費也成了。読者諸位，即刻，請忘記這個言詞。
而且請認爲「表現在心里顕現的東西」有不但在制作漢詩詞基本。
心に映るものを写す
作詩とは、詩を作る事を謂う。「どの様に綴るのか？」にばかり気を取られて、端的に根本を講じていなかった。
何処の誰が言ったかは知らぬが、「目に映るものを写す」と謂う言葉があるそうだ。この言葉は日本人の作品を駄目にしている根本的な原因である。この言葉が頭の芯から消えなければ、「どの様に綴るのか？」に幾ら時間を費やしても徒労に帰してしまう。
読者諸君は、即刻、この言葉を忘れて欲しい。漢詩詞を作る上での基本は、「心に映るものを写す」を脳味噌に叩き込んで欲しい。
Ⅰ 詩
秋色暮吟 千葉県 中山逍雀
西郊十里曵杖時，野水從容満稲陂。出岫閑雲含細雨，投林歸鳥愛深枝。
露叢蟲語報秋切，村樹蝉聲向晩悲。始看黄花籬落畔，賞來却憶去年詩。
賞 菊 千葉県 中山逍雀
朝寒午暖杪秋時，叢菊團欒競秀姿。隠逸陶家思遣愛，清廉屈氏味餘慈。
風流雅讌重陽楽，緑酒黄花佳節宜。招客賞来香郁郁，艶葩含露傲東籬。
（注）雅讌；風流人の酒盛り
陶家；陶淵明 屈氏；屈原
賞 菊 詠物 千葉県 中山逍雀
逸興騒人袖手観，東籬叢菊玉團團。天姿値李葩尤好，風態凌霜影未残。
靖節先生挂冠愛，屈平夫子結寃餐。晴秋也會重陽日，浮酒拂災須竭歓。
（注）靖節先生；陶淵明 屈平夫子；屈原
拂災；重陽の節句の日に邪気を払う習慣がある
袖手；懐手をする。袖手傍観
何もしないで成り
行き任せに見物する
挂冠；官を去り職を辞す 後漢書逢萌伝
秋夜吟 千葉県 中山逍雀
閑吟有興苦中娯，短筆未工裁句麁。非以詩文諛世俗，啻令胸臆去荒蕪。
仙寰徽韻那邊訊，人界悲歌可賞無。脈脈西風彌萬里，鈞天廣楽適河圖。
（注）鈞天；天の中央 又其処で奏す音楽
廣楽；広大な音楽城の名
河圖；中国の伝説で、黄河から現れた竜馬の背に現れていた図、卦の元となった
秋夜吟 千葉県 中山逍雀
西郊田野稲雲肥，舊井孤桐一葉飛。疎柳梳風條失色，老蛩咽露語如違。
三秋静夜不須扇，九日微寒未襲衣。個裡乾容坤態改，黄花開落識天機。
（注）天機；天の秘密 天の運行する働き
個裡；個々別々に存在する物
乾容坤態；乾坤容態
秋夜吟 千葉県 中山逍雀
詞客常留識字憂，烟霞痼癖幾時休。青山苦雨蕭蕭夜，白屋悲風瑟瑟秋。
千首有詩無世用，一瓶沽醉鬻吟愁。赤貧生計痩身老，半百餘年正笑鳩。
（注）無世用；世間の用に立たぬ
鬻；見せびらかす 欺く 養う
釜から蒸気の出ている形をかたどる 賣に通ず
鳩；鳩は巣を作ることが下手という、物事の下手に例える（詩経召南鵲巣）
賀東大寺大仏開眼千二百五十年法要 千葉県 今田莵庵
一千二百余年過，開眼慈悲流滂沱。鴟尾絢爛翻佛舎，垂旛壮麗模雲羅。
曾嘉双婦霓裳舞，今演千人男女歌。遺徳猶存憂乱世，唐風現代混然和。
賀加藤耕子句集『西又東』上梓（鶴頭格） 千葉県 今田莵庵
加盟俳句賑西東，
藤下還来文芸風。
耕旦種苗何役役，
子規一叫響残空。
松田道子未亡人為亡夫晴夫氏開催遺作展于世田谷美術館
（鶴頭格） 千葉県 今田莵庵
松風爽籟画中情，
田野岳山客思盈。
晴得憂心繙旧作，
夫人操志憶君更。
兄弟四家会秋于“会津湯野上温泉藤龍館” 千葉県 今田莵庵
兄弟四家登覧盟，頂峰会議亦誰名。老雄酒量年々減，健婦遊言喋々盛。
欣仰連山紅葉染，俯瞰瀑布白條鳴。得望幾度斯如刻?
将去湯村黄菊明。
（注）登覧；旧暦中秋一家登高之催事。
頂峰会議；summit conference
刀匠南海太郎正尊 釈尊諦居士一周忌香語 千葉県 小畑旭翠
一日行持無懈怠，多年辧道積工房。
収因結果吹毛剣，大巧究尽遊帝郷。
恭惟此日一弁香焼金炉、読誦大乗妙典如来寿量品舎利礼文，所鳩功徳回向南海太郎正尊 釈尊諦居士霊位
荘厳報土、円満菩提。正与麼時感応道交法味飽満底消息如何円香。露。亦夢金英含玉露，誰知晩節傲厳霜。
庚申偶作 東京都 石倉鮟鱇
髑髏頭頂芳花發，仙女胯間飛蝶迷。
醉月老殘貪梦處，三尸驚訝出臍躋。
夜雨聞蟲 東京都 齋 游子
寒雨霏霏夜寂寥，斷腸多恨北鮮霄。
時聞滴點草蟲咽，如弔鬼神哀調饒。
夜雨聞蟲 東京都 齋 游子
秋霖寒夜坐三更，靜聽幽蟲地底鳴。
私託美人吾輩夢，本優時凛可憐生。
題老婦人 東京都 齋 游子
清容若鶴髪如霜，老女端然少粉粧。
聞道明眸年少日，嬌羞快活斷人腸。
熱帶海濱偶成 寄澳州凱恩斯（kai2
en1 si1) 東京都 齋 游子
南國海濱萬象晴，北端樹林承日明。
泥渚潮干三里坦，嫩芽尺許無數萌。
水禽一群眠又憩，或求魚介跳行輕。
無人游泳日光浴，又無極目塵芥横。 （庚韵）
美人抱児撫金髪，解顔停歩談快活。
聞道往時白砂汀，任潮砂去泥到達。
樹子流來止泥中，有時如看嫩芽發。 （月・曷韵）
又指眼前好風光，蒼海浮帆接天末。
却疑嫩芽長作林，形勢能○里人心。
又恐游子還來日，滄桑一變恨不禁。 （侵韵）
（注）
○＝りっしんべん＋かくしがまえ＋（峽ー山）満足させるの意。
珊瑚海游行 東京都 齋 游子
晴日南洋探勝翁，航行快速意融融。
碧波澄徹少倫比，黄髪翩飜任好風。
泊島人游砂渚白，入林鳥哢野花紅。
珊瑚礁勢若山谷，魚俗百般西又東。
題詩友秋月氏之宿痾 東京都 齋 游子
宿痾經歳痛難裁，呻吟手術三四回。
國手盡心猶無效，脚力不還有悲哀。（灰韵）
昔日同門聽講夕，終了即作清遊客。
狭斜連袖入酒家，傾盞語詩惜歸宅。（陌韵）
病床故人寄來書，再起壯心在玉壺。
終生毎伴輪椅處，知命事詩安一隅。（虞韵）
私敬温柔剛毅志，家人扶助無不至。
不恨病躯喜存身，有誰敢批此明智。（置韵）
無 題 東京都 齋 游子
非芭蕉矣非一茶，不聖不愚只凡爺。
拈句案詩無寧日，身邊唯有紙屑華。（麻韵）
窓外百声強又弱，憤怒怨恨稀愉樂。
研求運動幾功名，拉致悲傷株下落。（薬韵）
不識濟民天下謀，無奈國家滅亡憂。
遣悶探楓温酒處，待望英傑思千秋。（尤韵）
厭國家権力 東京都 石倉鮟鱇
強制連行慰安婦，國家往日害人民。
血塗青史難忘處，悲聽同胞死北鮮。
憂 國 東京都 石倉鮟鱇
同胞枉死動西東，日本少年傷幼童。
強制連行慰安婦，更加卑怯辱流風。
玩月浮幻 東京都 石倉鮟鱇
頻想誰人稱我詩，酒郷誇誕易成痴。
今宵明月臨天下，當問天娥露雪肌。
拱手傍観 東京都 田村星舟
坊間一処適修羅，咬袋乱抛鴉子多。
唖唖濁声其嘴鋭，貪婪凄絶可如何。
二十五菩薩来迎会 東京都 池田耕堂
喬林寺院記星霜，九品伽藍対本堂。
菩薩渡橋来此岸，往生祈念至還相。
Ⅱ 新短詩
曄歌五首 千葉県 高橋香雪
故郷茶，楚々風情，秋櫻花。
彼岸花，妖艶鮮紅，白雲遮。
別離時，松茸一枝，炊新米。
越郷憂，舞台児女，社日秋。
夏爐觴，十八史略，秋夜長。
曄歌二首 東京都 石塚梨雲
意悠悠，月前酔筆，翰墨游。
月光清。修竹飄風，心自平。
曄歌・用領字詠四時 東京都 石倉鮟鱇
鼓吟魂。歩春風路，雪花村。
雨声涼。喜炎熱散，午梦長。
蛩語低。醉明月照，斷雲飛。
倚窗明。賞雪峰渺，月光清。
回文曄歌・雲化櫻 東京都 石倉鮟鱇
曄歌：雲化櫻。乗風雪舞，蝶春昇。
雲 回文七絶：
昇 化 乗風雪舞蝶春昇，
春 櫻 舞蝶春昇雲化櫻。
蝶 乗 櫻化雲昇春蝶舞。
舞 風 昇春蝶舞雪風乗。
雪
曄歌五首 東京都 田村星舟
孤 影
空罐儿。戯蹴少年，孤影牽。
空缶を蹴りつつ少年孤影ひく
木 通
自破顔。窺視西東，大木通。
身を割りて外界窺く大木通（あけび）
蝴 蝶
鱗状片，留下指先。蝶離専。
鱗粉を指にのこせり蝴蝶離る
水馬跳
水馬虫。一跳一跳，蒼天中。
あめんぼう蒼天にひたに跳ねまわる
蚯 蚓
庭一隅。体節自在，蚯蚓匍。
庭の隅 体節自在にみみず匍う
偲歌・普韵十七庚十六首 東京都 石倉鮟鱇
花前含笑，月下談情。与君傾酒樂浮生。
醉如李白，詠似淵明。佯仙覓句慰余生。
櫻雲吐雪，樗散吟情。擬唐覓句競鶯鳴。
醉當搖吻，句任人評。花間吟歩似流鶯。
人傾玉盞，櫻遶山城。春易成詩競老鶯。
丹脣爛醉，黄鶯亂鳴。白首流涎吟骨輕。
花催吟志，酒洗俗情。搖脣放唱賞山櫻。
獨耽美酒，老快吟情。搖脣花底競鶯鳴。
酒温腸肚，花滿荒城。探春随歩喜吟行。
花飛香雪，風發天声。春窗光亂月盈盈。
雲歸峰頂，鳥喜新晴。春夕吟歩好風情。
醉乗風爽，笑覺身輕。花間吟歩擲功名。
湖浮櫻影，春囀倉庚。搖脣花底快吟情。
酒温腸肚，風散玉英。山櫻花底興縱横。
笑傾芳酒，醉樂浮生。櫻雲盛處午風清。
梦逢仙女，春結詩盟。油然酬和賞山櫻。
Ⅲ 漢 俳
漢俳試吟対比俳句 千葉県 今田莵庵
中人畢業大学院
中人為博士。助詞很難用之時，会話聊逆耳。
◇テニヲハを残し外人卒業す
花笠踊
農踊捧花笠，倒笠翻笠半掩羞。恰似掬全球。
◇花笠に地球を掬ふ踊かな
貿易風
風帆沖浪漂，巧妙捕得貿易風。印度環礁中。
◇ウィンドサーフィン貿易風を操れり
独角仙
飼育独角仙 少年朝起忽問虫 虫又飼少年。
◇飼育器が飼ふ少年と甲虫
漢俳・偶 作 東京都 石倉鮟鱇
笑對解言花。醺醺聽亂蛩如雨，賞月透窗紗。
漢俳・偶 作 東京都 石倉鮟鱇
醉中浮想好。酒促游魂出胯間，化蝶迷春草。
Ⅳ 詞
雨淋令・陰虫“邯鄲”在日本
千葉県 今田莵庵
“邯鄲”清切。此名誰命?
早秋啼月。雖似蟋蟀音違，蕭蕭喞喞，時時鳴咽。側耳騒人欲聴，纜車誘藝惚。攀急坂，“高尾”山頭，月下“邯鄲”乱吹律。
邯鄲故趙呼城闕。授廬生，一碗黄梁熱。栄華一刻過夢，譚渡海，島人傾説。落魄蕭然，静聴陰虫興趣相結。凄又浄，恐命“邯鄲"? 清商和明月。
（註）高尾山＝在東京都最西端、標高八百米。纜車＝ケ
ーブルカー。清商＝音階之一。
奪錦標・貪醉梦吟句
東京都 石倉鮟鱇
春賞櫻花，繽紛香雪，片片晴天霏散。夏避驕陽吟歩，偏愛幽林，納涼溪澗。患烟霞沈痼，慢探勝、裁詩無倦。聽秋声，傷感舒情，善耐修辞華誕。
化蝶游魂仙苑，時遇天人，氷肌膩滑豐滿。悦目乳房双聳，振翅旋回，玉容妖婉。忘文才淺短，弄花言、搖脣稱讚。見青娥、告訴関門，送我寒冬風巻。
石州慢・秋夜貪春梦 東京都 石倉鮟鱇
愁聽殘蛩，哀訴好逑，思慕難斷。寒齋傾酒茫洋，身是無能樗散。天生醉客，仰看壁挂青娥，絳脣粧點誇妖婉。碧眼放秋波，誘霜頭浮幻。
仙苑，櫻雲飛雪，似蝶飄飄，春光爛漫。醉境風流，試鼓吟腸清健。佳人陪酒，批評拙句声高，擬唐陳腐還華誕。佯笑耐嘲詼，嘆情深才淺。
退任と新体制発足の御挨拶
中山 栄造
葛飾吟社を立ち上げるのに、さしたる能力は必要としなかった。探求心と無鉄砲さがあれば其れで十分であった。人生４０年の中、大概の職業は三四年で十分だったが、漢詩詞は思ったより奥が深く、中華詩詞壇との交流の道を開くという目標を立てたが、余り大風呂敷を広げ過ぎたかと、自己嫌悪した時もあった。
趣味の結社と雖もも、創業する能力と、これを安定成長させる能力とは別物で、創業者は探求心と無鉄砲さがあれば十分だが、安定成長期には豊富な知識と忍耐強さが要求される。幸いにもこの結社は雄偉な人材に恵まれ、適任者に事欠く事はない。
私は、この結社が既に創業期を経て、安定成長期に入って居ると認識し、それに相応しい人物が運営に携わる事が、結社の存続に不可欠であると思っていた。
即ち、創業者の個人的組織から、会員による共同組織に改編しなければならないのである。
平成１４年１０月１２日、定例会の席上、本件の提議を為し、衆議の結果、結社は雄偉な人材を得て、新体制を発足させた。これを機に、私は総ての任を退き、一人の会員として、末席を汚させて頂く事とした。
不肖私は、今日まで賜った関係諸賢のご厚誼に対し、厚く御礼を申し上げるとともに、新体制発足の意義を御理解いただき、新任理事に対し、倍旧の御支援とご鞭撻をお願いいたします。
敬白
平成１４年１０月１４日
代表就任ご挨拶
今田 述
このたび葛飾吟社の代表を仰せつかりました。こうなりました経緯をご説明してご挨拶とさせて頂きます。
葛飾吟社は中山栄造主宰が設立されたいわば個人的結社であります。代表が設置されても結社の性格は変りません。個人的結社でも世間で認知されてくると次第に雑事が増えます。中でも他の団体への対応などについては、かねてから主宰が負担に感じておられました。今回の措置は簡単にいえば、このような雑事を分離して、主宰が漢詩詞の制作と指導に念できる体制を作ったに過ぎません。
最初、中山先生からは主宰を交代して欲しいというお申し出がありました。小生には漢詩詞を指導する能力はありませんのでこれは論外であります。もともと個人的結社ですから中山先生が主宰を下りれば葛飾吟社は解散となります。これに対して窮余の策として理事数名を任命して理事会で結社の運営に当たることを提案しました。
そして中山先生から、斎川正二、小畑節朗、石倉秀樹の諸先生と私の四名が理事に指名されました。さらにその中から代表を決めるようご指示がありました。十月十二日の新宿例会で皆様にお諮りした結果、私に代表を引き受けるよう委嘱されました。私自身はその任に相応しいと思っておりませんが、林岫・鄭民欽両先生招聘イベントが迫っている中で延引することが出来ず、取り敢えずお引き受け致しました。
会の運営がつつがなく行われるために、他の理事先生方は勿論、会員諸兄姉のご協力を切にお願いする次第であります。漢詩詞が中国の形式である以上、その詠法が中国の方式によることはいうまでもなく、そのためにも中国詩壇との密接な連携を要するという中山主宰の方針は、今後ともいささかも変わりません。
敬白
平成１４年１０月１４日
十月號 完
林岫鄭民欽先生訪日迎接記 今田 述
かねがね中山先生が希望されていた林岫先生の来日が鄭民欽先生とのセットでやっと実現した。本年一月この企画を立ち上げたとき実現の確信があったわけではなかった。最大の問題は林岫女史に相応しい講演会を開催できるだろうか。今日の日本で中国詩壇の話を聞いてくれる聴衆を集めることが出来るだろうかということだった。幸い俳文化誌『游星』の尾形仂先生・関忠雄先生のご好意で、その第３３回集談会の講師に当ててくださった。
しかし今だからいうが企画は順調に進行したわけではなかった。中国側の出国ビザをとるために公的機関の招待状が要るという。これは川井敏久松戸市長の協賛を頂くことができた。その後も手続きは複雑な過程を経て、結局最終林岫先生のパスポートが揃ったのは出発直前の六日で、航空券の購入もその日が期限だったという。連絡に当たってくれた徐一平女史だけが終始「今田さん、大丈夫だよ。必ず来るよ」と激励してくれた。
そういう状況下でも講演会の通知状発送などは進めざるを得ない。結果として十日の講演会は七十五名の参加者があり、椅子を他の部屋から運ぶほどの盛況であった。しかし『游星』の先生方には申し上げていないが、一時は直前キャンセルの電話を聴衆全員にすることも覚悟したほどであった。
到着の八日、中山先生と快晴の成田へ。お二人を出迎え顔を見てホッとした。その足で成田山新勝寺へ。八月他界された鶴見照碩前貫首へ鎮魂の書を差し上げたいという林岫女史の意向による。いきなり書道博物館の貴賓室に迎えられ、成田山仏教図書館の大島赳次長から丁重なご挨拶を受けた。窓外池畔の紅葉が美しい。林岫女史はただちに一首を詠み色紙に揮毫された。
重訪成田書道美術館緬懐照碩貫首猊下
林 岫
紅葉依然好，庭園百様幽。
故人随月去，遠客忽傷秋。
私はこの美術館は初めてだが林岫先生は三度目だという。玄関ホールに泰山の岸壁に彫られた縦十数メートルにも及ぶ書の拓本が展示されている。昨年斎川先生、中山先生と共に泰山を訪ねたときを思い出す。鶴見前貫首は書道の振興に尽力され、訪中の際は必ず中国書道協会の副会長である林岫女史を訪問されたという。大島氏の先導で一山越えて太子堂へ案内され前貫首のご遺骨に詣でた。終わって山崎照義事務長からご挨拶を受けた。
柏のホテルにチェックインして中山先生宅に向かう。晩餐には上海出身の袁静芳さんにも同席願った。林岫女史は中山夫人手作りの漬物、芋煮物それに栗の甘露煮を絶賛された。
中山栄造於家宅招欽与鄭民欽，今田述同行
林 岫
嘉木□然隔市塵，四時芳草接東隣。 □＝攸＋羽
菜根清淡何須問，知有温馨雅主人。
翌九日十時に柏で両先生を拾い中山先生の運転で柴又へ向かう。途上富士と筑波が見渡せる快晴だった。帝釈天で参道を楽しみ、寺の彫刻と庭園を参観する。しかし最も女史の目を惹いたのは拝殿脇の瑞龍松であった。
帝釈天題経寺題瑞龍松 林 岫
古苔斑駁瑞龍松，現出金剛自在容。
看得千年真一瞬，分香蓮宇坐禅風。
料亭「川甚」にて川魚料理で昼食。これより葛飾吟社へ向かう。二時より林岫先生の詩詞講義。講義は途中から詩詞の吟唱へと移り、さらに古典式と歌謡式の違いなどとなる。吟社会員として中山、今田、斎川、小畑、石倉、秋山、萩原、三宅、高橋、田村、石塚の十一名が参加。合計二十名ほどが聴講した。
午後五時川井敏久松戸市長来臨。教室をあらためて歓迎晩餐会とする。川井市長が市議選挙直前の多忙なスケジュールを調整してお出で頂き、遠来の賓客を労い乾杯の音頭をとられたことは感謝に堪えない。
翌十日はいよいよメインイベントの游星講演会。朝十時お二人を中山先生、小畑先生、徐一平女史と四人で柏に迎えに行き、千代田線で代々木上原経由成城へ向かう。成城飯店で昼食の後会場へ。葛飾吟社からは中山、今田、斎川、小畑、石倉、秋山、萩原、山田、池田、三宅、高橋、田村、石塚、大沼、門馬の十五名が参加。
会場整備や受付を分担して頂き開会を待つ。講師を関先生や井上緑水氏に紹介する。一時半定刻を一寸過ぎて尾形仂先生が到着。早速講演会に入る。まづ関先生が八月軽い梗塞を起こされたため、私が代役で司会をすることとなった経緯をふくめて、游星と葛飾吟社の双方について説明した。
講演「華やかに展開している中国現代新短詩」は流石の内容であった。ことに中国の詩の形式は唐宋のものを踏襲することが多かったが、ここへ来て漢俳が出現した経緯を、現地の当事者から聞くわけだが、こんな機会はまず他にない。古典詩詞の名手であり、同時に漢俳の主唱者の一人である林岫女史を講演者に選んだことが、的確であったことを再確認した。
林岫女史によれば中国の詩歌は、最初は民間の歌謡体であったが、魏、晋の時代（３世紀から５世紀）に次第に「文人文学化」し、素材は素朴な郷土色から政治思想や世相批判にまで拡大した。表現手法は７世紀から１３世紀、すなわち唐宋時代に頂点に達し中国詩歌黄金時代を築いた。これに次ぐ７００年に詩詞の各形式はそれぞれの発展を遂げたが、しかしその後現代までの６００年は、全体としては唐宋の様式を踏襲して大きな変化を見せなかったという。
２０世紀に入ると新文学が提唱され、英・独・仏・露文学の影響を受け、新しい思想を表現するために、格律を無視した「新語体」（口語自由体）が生まれ、それ以来中国の詩歌は、「伝統体」と「新語体」の二つの支流に分かれた。８０年代になって、日中の文化交流活動を通じて日本の俳句や短歌の影響を受けて、漢俳・漢歌という二つの詩形が生まれた。
９０年代に入り中国の詩歌も簡潔化、短詩化の傾向が顕著となり、現在短詩は伝統体短詩、新語体短詩、漢俳、漢歌の４種類となっているという。日本人が漢詩と称する伝統詩は、文化大革命時代中国の詩壇から追い出されていたが、１９８７年５月中華詩詞学会が生まれ、中国伝統詩歌の高揚に努め、現在６２０の詩社が学会の下にある。この中で可成りの詩社が漢俳・漢歌を手掛けるようになっているという。
講演の中では中国古典詩の名手である林岫女史が、同じモチーフで五言絶句で詠み、後に漢俳にあらためた例をひき、その表現が日本の俳句の省略に近づいて行く、いわば詩人の手の内を明かす興味津々の話などもあった。
第二部の質議には内田園生氏（初代国際俳句交流協会会長、元ヴァチカン大使）宇咲冬男氏（現代俳句協会理事、「あした」主宰）星野恒彦氏（俳人協会理事、国際俳句交流協会副会長、早稲田大学教授）それに目下ＮＨＫの第２放送で「おくの細道」の連続放送を担当中の中野沙江氏（聖徳大学教授）が立った。
終了後成城駅前の喫茶店で講師を囲んで座談するのが慣例だが、この所尾形先生も関先生も健康に不安があり、まっすぐ帰られたのは残念であった。しかし星野恒彦先生から、「通訳つきで講演を聴くのは現実感が強い。游星の皆様にはよい経験だった。」と貴重な講演へのコメントがあった。
１１日からは一泊旅行。九時東京発の東北新幹線で出発。両先生に随って中山、斎川、小畑、秋山、三宅、高橋、田村、石塚、門馬、今田それに徐一平さんの合計十三名。連日快晴で車窓からは那須連山や安達太郎などの雪山が見えた。仙石線本塩釜で下車、「中長」で昼食後ここに荷物を預けて塩竈神社へ詣でる。坂道を上がると紅葉と菊が美しい。『おくの細道』で名高い和泉三郎の灯籠を説明する。
鄭民欽先生は昨年『芭蕉全紀行文』の翻訳を終えたそうで、無論この下りは覚えていて林岫先生に説明していた。塩竈神社は全員気に入ってなかなか下りてくれない。眼下には早くも松島が見えていて、二時の船には乗りたかったのであるが、結局遅れて二時半になってしまった。
林岫女史は松島まで五十分の遊覧船の観光を満喫された。船出と同時にうみねこが追従してくる。船内売店で売っているえびせんをつまんで手で挙げていると嘴でさらって行く。これには林岫女史が手を打って喜んだ。
随葛飾吟社詩友同游松島乗舟即興 林 岫
舟牽雲水秋痕寛，佳日融融認作春。
緑茗□香欣款客，白鴎争食繹親人。 □＝口＋巽
同行中山，今田，小畑，斎川，秋山，三宅，石塚，高橋，田村，門馬，鄭民欽，徐一平詩友。
松島桟橋に着いて瑞巌寺へ向かう。入口でテレビの撮影をやっている。見るとゲストが黛まどかさんだ。早速林岫女史を紹介する。ジャンルや詩風は異なるが、中国と日本の人気女流短詩人がここで遭遇するのも面白い。
旅宿のホテルニュー小松好風亭の宴会は盛大だった。今回企画の委員長たる斎川先生のご挨拶に続いて林岫先生から「松島観光は素晴らしい。この旅館の部屋に入ったとたん窓の風景に息を飲んだ」とご挨拶があり、ついで吟を披露された。
欣新小松飯店窗眺 林 岫
松岸飛舟逐浪寛，黄花秋意未闌珊。
遮窗夭矯□枝痩，横豎都成畫裡看。 □＝虫＋Ｌ
抵岸夜飲新小松飯店歌酒暢興 林 岫
松島清波浮碧玉，蘭亭雅趣樂閑身。
素心盟結情深處，従不分座列主賓。
宴会の前に、どこが上座か議論があった。「ま、いいではないですか。林岫先生はこちらにお座り下さい」と自称宴会部長の小畑先生が招じ入れる。「座を分つに従わず主賓に列す」の一句はその辺のことを詠まれたのだろう。小畑先生は宴も酣となると自ら「さんさしぐれ」を歌う。
仲居さんも「さんさしぐれ歌える人は地元にも殆ど居なくなりました」と驚いた。さらに秋山先生の「大漁節」が続く。宴終わってロビーへ戻ったところで仏教に詳しい小畑先生が屈強な高僧二人をバーに誘った。何と瑞巌寺の貫首と前貫首であった。
「こんな詩は二松学舎でもできないよ」と誉められると、すっかり気をよくした小畑先生は、「何時でも代作しますから」などと調子がいい。高僧から「臨済の座禅にもお出でください」と誘われ、「いやー、臨済宗は厳しいから痛いでしょうな」などと恐縮。翌日蘇州への出張があるため朝五時にホテルを抜けて東京へ帰って行った。
小畑旭翠先生談詩対瑞巌寺吉田貫首于松島新小松飯店 今田
述
旭翠先生入酒依，瑞巌寺主対薫微。
披詩説巧滔滔弁，見句佯驚□□囲。 □＝石＋乞
可綴盈篇経典意，有求代作仏門威。
陶然僧偉呈嗟嘆，勿犯俗人香域扉。
大浴場に入りながら海上の日の出を見る。海上の輝きの中を一艘のモーターボートが音もなく滑って行く。七時半に朝食。八時四十分小型バスで松島海岸駅へ送ってもらう。
晨 起 林 岫
千章古木養雲烟，噴薄嵯峨暁日妍。
最愛聲聲鴎喚客，翠波舗錦到窗前。
仙台までの仙石線は通勤時間で座れなかった。仙台駅前の仙台ホテルに荷物を預け、タクシー三台に分乗して片平町の東北大学へ。正門前に予め連絡してあった現代俳句協会宮城支部会員で「陸」同人の稲村茂樹、浅沼真規子両氏が来られた。林岫、鄭民欽両先生を紹介する。大学事務局の女子職員が鍵を持って百年前の階段教室へ向かう。一昨年行ったが中までは見られなかった。
魯迅がここに学んだのは日露戦争が起きた一九〇四年のことである。百年の歴史の重圧がひしひしと迫ってくる。案内の職員の説明によると魯迅は何時も第三列中央に座って受講したという。魯迅の短編『藤野先生の思い出』によると、ここで藤野先生のスライドによる解剖学講義のあとで写された一枚の従軍写真が魯迅をして医学抛擲を決意させたのであった。
そこにはロシアのスパイとして捉えられた同胞が銃剣で刺殺されるのを、他の同胞が笑いながら見ているものであった。魯迅はこのとき身体を癒す医学より以前に、精神改造しなければ祖国の未来はないと気づくのである。
教室入口の蔦紅葉が美しい。帰ってからこんな詩を詠んだ。
随行林岫女史再訪東北大学魯迅学舎 今田 述
蔦蘿彩葉百年紅，魯迅学焉求始終。
奈熄医身随癒国，当今郷客訪心同。
翌日林岫先生に見せたら「良くできています」といわれた。
稲村、浅沼両氏に別れタクシーで瑞宝殿へ。ここは紅葉が見事であった。再度タクシーで市立博物館脇の魯迅胸像と顕彰碑を訪ねる。胸像は「紹興人民公社建之」とある。林岫先生は「これ私の故郷です」と、感慨無量の面もちであった。江沢民夫妻の手植えの櫻樹の前で写真を撮った。
このあと青葉山山上から仙台市を俯瞰し仙台ホテルへ戻り中華料理「梅花園」で遅い昼食。三時四十八分発の新幹線で帰京した。
十三日は名古屋から上京した俳人協会の加藤耕子さんのお招き。大手町の二十三階のレストラン「宴」で皇居前広場を眼下に見ながら昼食会。林岫先生のチョイスで鉄板焼き。ゲストに現代俳句協会副会長の小宅容義氏。それに第一夜一緒だった袁静芳さんも同道してもらう。シェフから肉の焼き方の等級を北京語でどういうか質問があった。
終わってからも談論風発。最後はパレスホテルの高橋衛常務も加わって、ここでも林岫先生の吟を一曲お願いした。このあと鄭民欽先生は林林先生の意向を帯して日中友好協会会長の平山郁夫氏を鎌倉に訪ねて行かれ、林岫先生は袁静芳さんの案内でお買い物。
文房具類の細々したものから、最後は洋服まで買ったらしい。袁静芳さんは上海ッ子だからお買い物相手には絶好だ。袁さんが「これ中国製ですよ」といっても「こんないいものは北京にはない」といって買われた由。日本のご婦人がニューヨーク五番街でメード・イン・ジャパンの服を買ってくるのと同じようなものだろうか。「これは貴女のためにあるようなものよ」と薦められて「私まで買ってしまいました」と、九時頃袁さんからご報告の電話があった。
十四日、中山先生の運転で成田へ両先生を送る。成田でチェックインして四人で饂飩を食べて両先生に別れた。今回のイベントを支えてくださった皆様に心から感謝申し上げたい。天も味方してとうとう最後まで快晴。雨はついに降らなかった。
(2002.11.17)
葛飾吟社の皆様へ 林岫 鄭民欽
拝啓
寒冬のみぎり、ますますご清栄ご活躍のことと存じ、お喜び申し上げます。
この度、私達は葛飾吟社のお招きにより、貴国を訪問する機会に恵まれました。日本滞在中、諸先生方の心暖かいおもてなしと行き届いたご配慮を賜り、大変楽しい毎日を送らせて頂き、心から感謝の意を申し上げます。
今回の訪問は漢詩を通じて友情の橋をかけるという目的を達したと思います。私達は葛飾吟社の皆さんと漢詩の創作や鑑賞について交流を行い、游星の会合で漢俳など新短詩について講演し、意見を交換するなどさまざまな活動によって、旧友と温情を暖め、新しい友人をも作りました。
漢詩に対してこれほど多大な情熱をもつ葛飾吟社の皆さんに敬意を表します。再来年は葛飾吟社成立２０周年にあたり、葛飾吟社のますますの御発展とより多くの優れた作品を、また中国漢詩人と皆さんとの深い友情の一層の強化を心から期待しています。私達は微力ながら、中日両国漢詩人の交流と漢詩の反映のために一所懸命努力してまいりたいと存じ、先生方の引き続きのご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。
乱筆ながら、とりあえず感謝の意を申し上げます。
敬具
林岫 鄭民欽
２００２年１１月２０日
Ⅰ 詩
壬午于松戸検詩書芳臺村探梅二首 北京 林 岫
其 一
探梅初度到芳臺，霊境清幽可意裁。
紅樹晴嵐方畫定，誰家白鳥又飛来。
其 二
百樹梅花臨水開，盈盈照眼浄塵埃。
花如知己何須覓，正有香風随所來。
花中梅乃清友。尋之，探之，咏之，憐之，均文人雅境以寄高懐也。林岫詩書川井敏久先生正之
（注）本編二首の詩は、松戸市川井敏久市長に対し扇面に揮毫し贈呈した作品である。
晨起紀夢 北京 林 岫
遠客舟飛縹渺間、摩襟快意叩松関。
入夜松月頻来夢、正待新裁酔不還。
賦別葛飾吟社詩友 北京 林 岫
一月照同天，友情連海隅。
梅櫻放筆前，詩夢長相續。
平成十四年十一月十二日
與林岫・鄭民欽兩先生一起訪問和松尾芭蕉的古跡松島 千葉県 中山逍雀
遠来兩才賢，野趨鉄路連。読書悩難事，飽客酒誰先。
有友酬新詠，傷心句自憐。今看紅柿葉，緬想翠花鈿。
鳥飛青空下，舟游緑島邊。寒風山寺影，白雪一枝娟。
俳聖疎林裏，碧苔幾樹鮮。蓬莱和禹域，趁約短詩縁。
随林岫・鄭民欽両先生游松島三十韻 千葉県 今田莵庵
松島扶桑第一光，奥之細道已含章。（陽韻）
東南容海中三里，西北畳松接一水。（紙韻）
樹峙指天左右連，枝匍伏地縦横牽。（先韻）
漁夫尊崇塩竈社，鮮魚捧献同心者。
参詣客人賞菊花，遊覧船港展眼下。（馬韻）
小艇回迂百島間，海鳥触飛両友鬟。
人捧小餅甲板上，鳥攫好餐啄喙頑。（刪韻）
船中遠客耽循古，北国往時懐領主。（虞韻）
蒼蒼島嶼翠松迎，点点□棚蛎種生。 □＝竹＋洪
華日詩人同意趣，不愧西湖又洞庭。（庚韻）
汽笛蕭々響洲渚，瑞巌寺道指呼処。（語韻）
半刻周遊到桟橋，街坊背後翠如澆。（蕭韻）
偶會黛円娟俳宰，亜州両国交友彩。
双民相親十億多，俳聖去今三百歳。（賄・斎韻）
遠来林岫鄭民欽，古刹門前看紫氛。（文韻）
（註）奥之細道＝松尾芭蕉著名紀行文。
東南容海中三里＝奥之細道中此語存。
塩竈社＝塩釜港背後山上神社。奥之細道中之名所。
不愧西湖又洞庭＝奥之細道中「不愧洞庭西湖」之謂有。
黛円＝まゆずみまどか・新派女流俳人。
與林岫・鄭民欽兩先生游松島 千葉県 高橋香雪
一彎勝景海辺楼，鳥鳥島島松松稠。
禹域蓬莱相酒斛，先生一誦短詩儔。
小春散策思大村大兄 千葉県 中山逍雀
井戸通街秋已闌，豪家霜菊半凋残。
江楓碎絳岸松碧，庭橘結黄垣柿丹。
九夏臨流思磯釣，小春負暖撫魚竿。
曾遊如夢大漁日，想起管傷含笑看。
霜 朝 千葉県 中山逍雀
傲霜満地冷侵肌，偶過村橋露錦披。
山谷見時林影痩，渚沙望處雁聲悲。
水郷秋去客蹤少，蹊路冬來日照遅。
吟屐逍遙二三里，颯然散髪歩風陂。
初 冬 千葉県 中山逍雀
百草萬林凝夕嵐，倦遊詩叟自難堪。
山容擾亂三秋老，露氣満盈千樹含。
鳴去寒烏消嶺北，飛來征雁向天南。
此逢冷雨募歸思，詩酒遺愁守古庵。
山居偶得 千葉県 中山逍雀
隠逸山房未苟安，積憂日日一心酸。
朔風吹雪吟情絶，落葉舞庭茅屋寒。
偶覓米塩尋市井，只迷街路意盤桓。
他郷両歳人如問，莫奈羇孤百事残。
初冬散策 千葉県 中山逍雀
履霜散策冷侵肌，残月傾西應暦時。
流水蕭疎溪語細，寒林揺落鳥聲悲。
村田穫了牛耕少，原野蕪然日照遲。
双屐孤杖三四里，遥望起伏雪峰奇。
初冬吟行 千葉県 中山逍雀
吟行一路仰朝暾，遊屐短杖過古村。
大地小春秋景去，弄晴愛日菊花存。
経霜山郭老松傲，積雪村田凍雀喧。
蓬戸迎冬農事了，簷端干柿見軒軒。
初冬雑詠 千葉県 中山逍雀
戸庭愛日已斜陽，叢菊籬邊飄暗香。
霜雪降時楓老盡，燈檠挑盡夜偏長。
一身清痩為詩癖，百事疎慵放酒狂。
這裡千般堪自笑，却求雅興揣枯腸。
看 雪 千葉県 中山逍雀
天低地暗峭寒侵，一白空庭蓋地深。
積玉山川非舊態，帯銀松柏見貞心。
逐風凍雀噪叢竹，逢雪昏鴉歸密林。
粉萼霏微猶不止，望迷洞屋獨沈吟。
雪 後 千葉県 中山逍雀
雪餘山屋日初昇，軟暖囘來雲吐繒。
霜草微微生古路，霤簷滴滴釋凝氷。
病知意氣如窮鳥，老悟躯骸似凍蝿。
鶴子梅妻非我事，詩書作伴酒爲朋。
吟行逢雪 千葉県 中山逍雀
鴎鷺提携肝胆披，尋山観水共追随。
競吟我怪詩情減，参酌朋疑酒數衰。
巻地朔風吹雪冷，連天碧海滞雲時。
閑居獨楽平常事，今日與誰同宴嬉。
看飛鳥藤原京展 神奈川県 萩原艸禾
帝去千年歳月更，層層遺物使人驚。
遥思桑葉稲花邑，官署梵宮連緑甍。
柿生郷秋色 神奈川県 萩原艸禾
一村園樹鏤朱丹，耐領郷名思百端。
衆庶不欣禽亦飽，萬条徒柿爾珊珊。
井頭公園偶感 神奈川県 萩原艸禾
香雪年三五，雙顔映碧池。
光陰追往事，霜葉匿漣綺。
賦秋草（佐藤春夫殉情詩集）神奈川県 萩原艸禾
さまよひ来れば秋草の ひとつのこりて咲きにけり
おもかげ見えてなつかしく 手折れば苦し花ちりぬ
衰草孤□晩，閑紅無限情。 □＝竹＋工＋卩
佳人何処問，空把落花茎。
珊瑚海游行所感 東京都 齋 游子
探勝南洋鬢梳風，航行快適意融融。
一望碧水吾戯翼，千態白雲是羣童。
或道珊瑚被魚禍，又聞温海損天工。
可憐燦々清澄境，憂愉交錯羈旅翁。
訪秋陰“上高地”懐亡伊東清一先生 東京都 齋 游子
金風渡渓冷，黄葉動魂鮮。昔聴秀峰美，今看雲底巓。
先師愛山語，凛矣尚堪憐。投宿把筆楽，懐循故国天。
思北朝鮮拉致事件 東京都 田村星舟
風雪多年帰故郷，抱肩号泣父于娘。
憐情滾滾欲操筆，難詠爲何漸数行。
“大和”巡游 東京都 田村星舟
満天柿子総朱□，菊老蛩殘足恨傷。 □＝王＋艮
落葉挙声纏我脚，早晨燦燦霜衣裳。
晩秋有感
東京都 石倉鮟鱇
聽錯耳鳴疑晩蛩，凌寒傾酒洗塵胸。
老来多感傷風籟，眼屎數行秋意濃。
大都秋 東京都 石倉鮟鱇
隱姓埋名迷酒店，佯仙覓句愛烟花。
紅灯銀燭輝光燦，白首朱顔醉吟誇。
坐新幹線北行 東京都 石倉鮟鱇
畦緑田黄夕日紅，車窗又映月如瞳。
初冬北上追雲影，游客化箭飛雪中。
雪中行 東京都 石倉鮟鱇
雪中新幹線，飛矢貫寒江。峰頂穿烟霧，濛濛墨畫窗。
“維納斯誕生” 東京都 石倉鮟鱇
往昔何誰看女神，畫中花貌僞純眞。
貝生玉體輝瑩潤，樗散流涎洗俗塵。
偶 作 東京都 石倉鮟鱇
煩惱何時了，傾杯作酒癲。青娥點紅粉，白首散金錢。
余喘難收處，殘魂欲上天。瞻迎盈月照，淺笑對嬋娟。
偶 作 東京都 石倉鮟鱇
笑對佳人飲似虹，醉揮長剣化飛龍。
斬魔穿霧騎風馬，花貌氷膚舞梦中。
笑對佳人説清貧 東京都 石倉鮟鱇
眼底朱脣嘗玉盞，畫中白鶴啄田螺。
醉生樗散貪肴膳，高説清貧交酒魔。
偶 作 東京都 石倉鮟鱇
終老多愁無歯牙，搖脣覓句喫仙霞。
羊頭狗肉人頻賞，羊質虎皮詩自誇。
“東尋坊” 東京都 池田耕堂
柱形岩石海浜長，高浪打寄飛沫楊。
仰見半天雲四合，断崖“雄島”帯斜陽。
訪永平寺 東京都 池田耕堂
峰囲名刹接蒼穹，巨樹屏天昼尚蒙。
壮大山門正精妙，幽玄仏殿自厳然。
幾多寺院損全容，稀少道場留総閣。
今尚禅僧尋法堂，四時訪客満山郭。
探“能登関野鼻” 東京都 池田耕堂
“能登”蒼海帯晴湮，奇石断崖無限連。
洞内應看“弁天”艶，孤杖下去岸頭邊。
尋白川郷“合掌造家屋” 東京都 池田耕堂
“飛騨”山上白雲流，満地稲波迎早秋。
遮断黄塵今昔感，青蜩退暑野村幽。
浜離宮庭園 東京都 池田耕堂
大名庭苑緑陰稠，汐入鴨場閑鳥浮。
富貴花開転妖麗，高低櫻發自嬌柔。
将軍家茂語情愛，皇女和宮樂勝游。
今日雖無海浜眺，四時変化興偏幽。
Ⅱ 漢俳・漢歌
漢俳・
松島遊 千葉県 徐一平
即景一
臨窓一老松，□枝探海自崢嶸。点帆入天穹。(現代韻)
即景二
銀鴎遂流艇，巧取遊人手中餅，餌尽無踪影。
即景三・塩釜神社菊盆栽有感
浅盆秋菊紅，柔剛相済自従容，笑比五葉松。
漢俳・月下飲酒 東京都 齋 游子
秀峰殘照尽，如鏡明月上東天。傾杯獨恍然。
漢俳・孔林矚目 東京都 齋 游子
婆笑乾草頂，安坐農機過孔林。松柏轉蕭森。
漢俳・寄纏足 東京都 齋 游子
繍鞋犬矮少，纏足后妃涙数行。今女歩軒昂！
漢俳・盧溝橋畔有感 東京都 齋 游子
橋畔仰秋旻。回顧中日交銃火，水逝尚傷神。
漢俳・秋思二首 東京都 齋 游子
主人久無職，氣色悄然常帶憂。不管紅葉秋。
疲勞獨飲酒，深醉杜扉不見人。秋燈涙濕中。
漢歌・在秋田県觀早雪 東京都 石倉鮟鱇
秋田冬来早。日照楓紅映雪原，如海皚皚耀。游人覓句賞奇觀，村老無言恐苦寒。
漢俳・詠 秋 東京都 石倉鮟鱇
深秋適放歌。效顰籬落陶濳菊，楓林杜牧車。
漢俳・藝術何時老？ 東京都 石倉鮟鱇
老當磨技藝。休笑畫家描女体，詩客吟山水。
漢俳・在秋田県觀早雪 東京都 石倉鮟鱇
雪停雲涌好，水墨畫中山色老。嘆賞天工妙。
漢俳・初冬偶作 東京都 石倉鮟鱇
初冬顔色深。紅衣青女牽黒狗，銀杏散黄金。
漢俳・小 春 東京都 石倉鮟鱇
風停山雪新。逍遙葉黄銀杏隣，櫻紅一味春。
Ⅲ 曄歌
曄歌・仙台游草五首
千葉県 高橋香雪
瑞巌寺，幽径老松，映紅時。
薄寒天，白鴎欲餌,“河童煎”。
紅葉散，魯迅教室，廃書汗。
瑞巌寺，花顔俳人，對秋籬。
石磴沙，塩竃神社、白菊花。
曄歌・二 首 東京都 石塚梨雲
楓葉紅。画中古刹，秋欲窮。
鳳求凰。南山瑞気，生吉祥。
曄歌・伎芸天女（秋篠寺） 東京都 田村星舟
深秋寒，伎芸天女，赤脚□！ □＝口+阿
曄歌・土 偶 東京都 田村星舟
空虚的，土偶眼窩，野分過。
曄歌・烏 輪 東京都 田村星舟
汝莫憂，烏輪肥大，呑地球。
Ⅳ 詞
随林岫・鄭民欽両先生遊松島 千葉県 小畑旭翠
魚歌子 其一
晩浦風暄隔俗塵，鷺鴎相喚愛温淳。三景海，萬松浜。仙区留客小陽春。
魚歌子 其二
青眼忘年入酔郷，翠松高節記星霜。鴎夢穏，浩歌長。随波楽在不図航。
凌波曲
耽吟可求，題詩可酬。晩秋松島風柔。悦蒼波満眸。
欲飛又浮，欲行又留。白鴎乗浪消憂。聴海潮共謳。
甘州子 王禅寺禅寺丸柿 神奈川県 萩原艸禾
盈枝禅寺丸，甘果柿，報秋丹。古人移植出岡巒，今日老枚蟠。浮屠業，千載衆民歓。
好亊近・凌寒飲酒 東京都 石倉鮟鱇
詩客蔑錢包，不入歪門邪道。冬夜發揮天分，愛酒濃香好。
擬唐吟句讚芳姿，花容僅微笑。未顧文才長短，喜低吟高踏。
賀新郎・四時吟 東京都 石倉鮟鱇
春賞櫻雲散，歩花間、搖脣試鼓，詠懷安健。冩景舒情調平仄，覓句擬唐流便，喜應酬、黄鶯清囀。夏避驕陽泛艇，喜涼風，輕爽吹湖面。佯釣父、仰天半。
秋宵愁聽蛩声亂，對姑娘、畫中含笑，絳脣妖婉。三十年来人却老，
玉貌猶堪眷戀。巧献媚、氷肌豐滿。詩用美辞稱讚處，被嘲嗤、陳腐還華
誕。冬夜梦、六花巻。
閑中好・沐浴感秋 東京都 石倉鮟鱇
温泉好，沐浴温樗散。但是何斷腸? 鳴蛩訴余喘。
秋田觀雪 東京都 石倉鮟鱇
寄調閑中好
寒中好，冬雪秋田早。山涌烟霧輕，紅黄畫中耀。
寄調天仙子
驚看秋田冬雪早，紅黄留處皚皚耀。閑人吟句倚南窗，求麗藻，貪詩料，不顧文才搖吻好。
寄調歸自謡
冬雪早。悦目秋田輝皎皎，紅黄猶有風光好。
閑人帶酒常微笑。貪詩料，寒中賞景無煩惱。
寄調憶秦娥
冬雪早，秋田滿目皚皚耀。皚皚耀，紅黄照映，景光鮮好。
凌寒曳杖山村道，搖脣暫鼓詩腸老。詩腸老，擬唐吟句，自誇工妙。
十一月号完
Ⅰ 詩
山居逢雪 千葉県 中山逍雀
被寄姚瑛兄晩観小孤山詩次韻以答
濕雲低地暗柴門，滕六滔天意氣尊。
遮眼四山無寸碧，囘頭一野有新痕。
皚皚屋外銀花展，片片簷頭玉屑翻。
無事閑翁擁鑪坐，竹叢寒雀訴飢暄。
（注）滕六；雪神の名（幽怪録）滔天；天にはびこる
鑪；炉 囲炉裏
玉屑；玉の粉末 言葉や詩文の優れた語句を言う
隆冬山舎歸途
村頭古驛帯残暉，獵獵寒風舞布衣。
偶歩竹陰群雀噪，行望天角暮鴉歸。
詩客當今艱疾病，家山何處尚依稀。
芳名記史英雄事，野老三冬百計非。
（注）隆冬; 厳寒 真冬
獵獵；風の鳴る音の形容
臨秦淮河 千葉県 今田菟庵
橋畔妓楼隠緑楊，南京基督幻遑遑。
曾游妖筆龍之介，又追文豪潤一郎。
史書傾描千禍重，騒人欲写萬恨長。
扁舟泛幾秦淮河，士女不知酔臉章。
（注）南京基督；日本近代的小説家芥川龍之介的短編
小説"南京的基督"從秦淮採用了題材。
寄小澤征爾君・古詩四十韻 千葉県 今田菟庵
廿年尽労波士頓，維納禮招似迷悶。
決意洋々征爾行，花甲越又櫻花嫩。（願韻）
若年已抜我同窓，洋楽高師慕思通。
忽転桐朋知音倍，斎藤記念到今従。（江韻）
当時洋響音聊欠，欲見虎嬰入虎穴。（屑韻）
欧州出航発横浜，摩托小車唯携隣。
波濤遠過千萬里，知己不多一両人。
只有一心偏向学，異郷異語耐艱辛。（真韻）
歴訪楽都遇天網，受承競賽指揮賞。（養韻）
東奔西走路茫々，美国旧都最留長。
帰郷楽団時指導，錬磨少年又不忘。（陽韻）
君素生誕漢大陸，燕京小路尋故屋。
幼年旧日顧青雲，全球民族悉馳目。
国交回復三十年，蝶々夫人揮誘哭。（屋韻）
秘知君択接外行，常懼専家走躬耕。
純情動人非細巧，文芸復興又還情。（庚韻）
今日風雲甚混沌，愿因雅音生民本。（阮韻）
武力無為断干戈，文化知音宜築和。
偏見人種難尽全，楽団人材索張羅。
世界理想正如此，祈君人心使養歌。（歌韻）
（注）波士頓；Boston 維納；Wien 桐朋；桐朋音楽大学。
斎藤記念；斎藤記念オーケストラ
摩托小車；モーターバイク
競賽；コンクール 燕京；北京 外行；素人。
游"仙台松島" 千葉県 秋山北魚
晩秋佳景緑松彎，碧水青空群嶼環。
海鳥和吾何得異，騒人共戯白雲間。
讀魯迅先生之詩自題小像 千葉県 秋山北魚
青年淵意熱如炎，異国學窗憂故園。
一世雄図文與武，愛郷心火動民轅。
偶 成 千葉県 秋山北魚
怠恣美酒慰詩腸，老倦抛書厭夜長。
疎戸咯□眠不就，映窗竹影月蒼蒼。 □＝［口荅］
亀戸天神 東京都 大沼春風
次韵曾祖父大沼枕山翁之詩亀戸天神社
神前千古意，宰府豈成遙。燕子緑風逆，藤枝紫雨嬌。
心池看世変，筆塚嘆花銷。尚友相逢處，先登是赤橋。
（原玉）
宰府模成事太遙，紅梅緑橘逗芳嬌。
賽春羅綺群兒女，怯懼攀欄渡鼓橋。
拝聴林岫・鄭民欽兩先生之講演（于葛飾吟社）
東京都 田村星舟
講説滔々如水流，有時幽默似蝸牛。
終于吾臆不成問，餐后啜茶笑白頭。
歳晩"武蔵関襤褸市" 東京都 田村星舟
甘酒浸肝落葉前，蜒蜒露店賈餐専。
半觴自笑衆人賑，世上怱忙復送年。
（注）露店；攤床 甘酒；江米酒
松島游草 東京都 齋 游子
一 鹽竈神社偶成
微風帶暖小春天，紅葉菊花随處鮮。
閑寂芭蕉曳□跡，燈籠似映世情遷。
（注）□＝竹+工+ﾚ；（キョウ：つえ）
燈籠是泉三郎忠衡献。芭蕉亦曽嘆之。
二 松島灣舟航即事
投餌戲鴎如幼童，暖衣鬢髪任微風。
回看愛日水運境，石島萬松西又東。
三 寄林岫先生
明眸才媛少儔倫，含笑和光不厭塵。
行樂戲鴎將倣幼，朗吟臨宴使搖神。
講詩玉律當通理，答問金針正慶人。
再識學而深且博，又思天稟性何純。
四 寄禪林 瑞巖寺貫主
禪門六尺嘉丈夫，炯眼堪憐翠髪無。
孰思把杯語詩法，頻慕李杜醉酒□。（古詩）
□＝［土廬］
五 訪小春松島偶感
小春松島滌塵腸，昔是芭蕉停杖郷。
敬拝禪宮懷見佛，感嘆勝景想瀟湘。
舊盟同宿更深誼，和尚語詩兼把觴。
紅葉經霜宜畫本，白鴎翻海快舟航。
飛騨高山即事 東京都 齋 游子
古風街靜寂，黄菊雨蕭蕭。土産多珍種，戸前呼客猫。
白川郷即事 東京都 齋 游子
古風茅閣里，繞圃水潺湲。食餅秧櫻路，縱望紅葉山。
寄菊花展示会 東京都 齋 游子
百花爭雅致，天賞弄晴光。忽怪人爲極，玉蕊絶無香。
爲參聽神奈川縣吹奏樂大会之横濱 東京都 齋 游子
奏樂少年能作隣，音波快搖老躯神。
開扉海上白鴎舞，回首街頭黄葉新。
小春屬目 東京都 齋 游子
小春駘蕩意融融，落葉翩翩舞軟風。
凝視林間飛鳥影，無聲横斷跡虚空。
吟得一年二千六百首詩詞 東京都 石倉鮟鱇
笑過一年吟志輕，二千七百雑詩成。
凡才夜夜挑漁火，称作鮟鱇溟海横。
松島偶感 東京都 石倉鮟鱇
海昇明月鎮波瀾，島嶼晩粧松影閑。
遙聴鐘声瑞巖寺，相伝今昔響銀湾。
東京名勝詩 東京都 池田耕堂
一 新宿御苑観菊会
瑤林縹緲欲連天，遙見高楼帯淡煙。
繁萼黄花散香気，畳茎白菊競鮮妍。
貴人相集娯風趣，家族逍遥賞自然。
須楽郊行晴朗日，厳冬已早在階前。
二“井の頭”公園秋
雑林搖落動高秋，寛静園池泛小舟。
御殿山中喬樹寂，弁天島内古堂優。
將軍屡次催“鷹狩”，民衆常時作野游。
武蔵風光今尚在，閑清草径鳥声幽。
三“文化の日”（明治神宮）
欝蒼神境隔塵埃，幽遠路辺黄菊開。
広大社前群集汎，荘厳本殿典儀催。
“御宮参祝”転怡然，“流鏑馬祈”真勇壯。
近代国家茲誕生，無辺聖徳猶難忘。
四 都電荒川線
市中軌道已無痕，“荒北”電車街路奔。
“趁趁”鉦声今尚響，昔時追想切愁魂。
晩秋即事 神奈川県 萩原艸禾
蓬門掃了晩秋天，堆葉焚來未昇烟。
忽焉動枝風颯颯，紅黄散乱染亭前。
小春郊行 神奈川県 萩原艸禾
午晴信歩板橋斜，郊原紅尽眼界余。
一炬人烟焚落葉，不知炮藷或烹茶。
初冬登山 神奈川県 萩原艸禾
千里欲窮芙岳望，石蹊遼繞樹蒼蒼。
何圖輕暖促烟靄，遠景無情只渺茫。
游酒田二首 神奈川県 山田鈍耕
一 酒田相馬楼
朱塀鬼瓦幾何年，無辜蛾眉月妬妍。
借問豪商興廃跡，紅花染畳午餐筵。
（註）朱塀鬼瓦是包囲住宅的墻的顔色朱紅色，住所的屋頂
上有鬼的臉的避邪的瓦附着着，大的家的形容。
二 酒田山居倉庫 旅途投宿想舊閉瞼
庄内米穀在双肩，最上川沿土庫連。
簫瑟秋風吹欅木，映瞼帆影碧風漣。
（註）土庫；土蔵是四面塗抹泥灰的房屋
古希所感 神奈川県 山田鈍耕
浮生如水惜居諸，万感古希名利虚。
喜怒哀感清昼夢，丹青案句入華胥。
人生舒復巻 神奈川県 山田鈍耕
人生一幅水山圖，遠景郷関有大望。
世俗中景多表裏，描秋近景好風光。
Ⅱ 新短詩
瀛歌・訪仙台瑞巌寺 千葉県 秋山北魚
霖林静，俳聖詩碑，落照前。緑埋銀花，紅滴吟箋。
瀛歌・憶學魯迅舊教室
魯迅眸。我以我血，献神州。緬想功業，今識郷憂。
曄歌・秋二首 東京都 田村星舟
秋麗競，黄紅飛散，望遠鏡。
電視塔，扎上蒼天，上海秋。
牡蠣船（松島） 東京都 田村星舟
牡蠣舟，一条航跡，誰憐漣。
曄歌一首 東京都 門馬清明
初霜○，譲給老狗，舊衣服。
（注）○＝口＋巴 日語の「や」に相当
（俳句）初霜や老犬に古着ゆずりけり
漢歌・人生人笑 東京都 石倉鮟鱇
露出亀頭小，初看塵寰満光耀，眼前花貌笑。是母親欣然介紹，我的
父親風度好。
Ⅲ 詞
桂殿秋・姑蘇晩秋 千葉県 小畑旭翠
一 呉王陵遠望
黄葉雨，弊荷風。難酬消息滞胸中。問花顔誰解，歳月空留，一帯荒叢。
二 楓 橋
知晩節，菊将残。何期夜雨語旧歓。更楓橋時変，鐘韻孤芳，客館衾寒。
三 霊巌山
行客絶，鳥帰林。霊巌山裏路難尋。奚疑歌言志，来弔梅村，暮色方深。
（注）梅村； 明末清初詩人呉偉業，字俊公号梅村，江蘇省太倉人。卒康煕十年葬霊巌寺。
歌言志； 曹操「秋胡行」歌以言志。亦有呉梅村「秋胡
行」四首。
四 虎 丘
魚米地，有年郷。新区大厦競新粧。虎丘登臨快，塔影依然，萬古豊穣。
満江紅・海豹行
千葉県 今田菟庵
首府東京，西南境，多摩川泄。獣俄現，青髯海豹，識人
細説。北海千尋何眩惑，南流萬里正凄絶。衆愕然，電視報喧喧，連随轍。
資生縮，購力欠。改革晩，希望滅。混迷猜疑世，北洋同劣?
逃客乾身河畔甃，庶民知夢氷霜節。我然時，得独活如何?
心魂裂。
聖誕節偶成二首 東京都 石倉鮟鱇
一 寄調月上海棠
無端露出龜頭小，正初看、塵界有光耀。我是嬰孩，未成名、但瞻花貌。女護士，恰似嫦娥皎皎。
梦飛還暦人歸老，醉寒齋、醺然憶多少。老殘樗散，有文才、裁詩工妙，冩誕生，巧染紅箋淺笑。
二 寄調粉蝶児
順命男生，露出陰茎短小，正初看、俗寰光耀。見花容，抱我輩，婉然微笑。欲充飢，含哺乳頭香好。
貪飲芳醪，長大醉生孤老，擧金觴、放吟無飽。仰嫦娥，懷母親，搖脣巧妙，擬唐詩，韵清暫排煩惱。
茘枝香・寒冬貪春梦 東京都 石倉鮟鱇
嘆賞嫦娥皎皎，誇玉貌。白首將鼓吟腸，游目探詩料，暫探平仄流利，賞景舒情巧。搖吻、雅韵玲瓏解煩惱。
醉冬夜，梦仙境、春光好。悦目櫻雲，吐雪碧天清耀。驚聽人声，仰看飛仙舞佳妙，嘲笑吾詩陳套。